野球肩や野球肘の予防法を学びたい時はご注意ください。一般書店で市販されている野球教則本では、肩肘を痛めない投げ方を学ぶことはできません。僕自身、数え切れないほどの野球教則本を、新旧問わず拝読させていただきましたが、一般書店で売られているタイプの野球教則本で、解剖学的に肩肘を痛めない投げ方が解説されているものはほとんどありませんでした。
肩肘を怪我しないためにもパワーポジションはNG
中には、野球選手の治療を専門とするドクターが書かれている本もあるわけですが、その本でさえも「?」がつくようなことが書かれています。ちなみに野球選手の指導を実際にされているトレーナーさんが書かれている本は、解剖学的にも投球動作的にも、エビデンスがある正しい動作が解説されていることがほとんどでした。しかしお医者さんが書かれている一般書店で売られている本には、肩肘を痛めない投げ方を学ぶための本なのに、パワーポジションが推奨されていたりするんです。パワーポジションとはコックアップの終盤付近で肘を90°以上に開くことにより、アクセラレーションの距離を伸ばし、球速をアップさせるためのモーションなのですが、パワーポジションで投げるとあっという間に肩肘を痛めます。
パワーポジションは、アメリカの超有名なパーソナルコーチが提唱しているモーションなのですが、メジャーリーグとマイナーリーグの投手たちを観察していくと、パワーポジションで投げている投手の多くが肩肘の手術を受けています。実は日本にもパワーポジションという言葉が誕生する以前、80年代からすでにパワーポジションで豪速球を投げている投手たちが存在していたのですが、1軍で活躍した投手に関していうと、肩痛で全滅しています。
外科の先生も実はよくわかっていない正しい投球フォーム
僕は野球選手を治療する外科の先生やPTさん(リハビリを担当される方々)に野球動作の指導を機会もあり、外科の先生たちが集まる野球肩野球肘予防に関する勉強会に参加させてもらうこともあるのですが、肩肘を痛めない投げ方を理解されている先生やPTは最初は皆無でした。そんな方々が、治療後に投球動作の指導をしてしまっていたのです。
先生やPTさんたちは、痛みを取り除く作業に関してはプロフェッショナルで、そこに僕が口を挟む余地はありません。しかし肩肘を痛めないフォームを知っているかと言うと、まったくそんなことはないわけです。そのため外科の先生が書かれているような予防系の野球教則本にも、間違ったことが書かれていることがあるわけです。もちろんすべて間違っているわけではなく、一部が間違っているというだけです。
スポーツ関連の医学書は一般書店では買えない
もし投手育成コラムを読んでくださっている方で、本気で野球肩野球肘の予防法を学びたいという方は、医学書が並んでいる書店に行ってください。東京でいえば池袋のジュンク堂書店や、新宿の紀伊国屋書店などです。ちなみにスポーツ医学系の本や雑誌を買うと、全国の医学書を取り扱っている書店一覧が載っていたりしますので、そのあたりも書店を探す参考にするといいかもしれません。
ちなみに、残念ながらAmazonで購入することはできません。一部の医学書はAmazonでも購入できるのですが、少なくとも僕が購読しているスポーツ医学系の雑誌や、野球動作に関する医学書は、Amazonでは売られていませんでした。あ、それとスポーツ医学系の野球動作に関する本はかなり高いです。薄っぺらい月刊誌でも1000円しますし、薄っぺらくない月刊誌でも2500円程度、それが専門書となると4000〜5000円ならまだ安い方。7000円、10000円する本もざらです。なので勉強されたい方は出費に関する覚悟も持たれた方がいいかもしれません。