子どもたちが肩肘を痛めてしまった時の責任は一体誰にあるのか?!それは当然チームの監督・コーチにあると思います。まず怪我をしにくい投げ方を指導するための勉強をしていない、そして子どもの体には負担が大き過ぎるほどの球数を投げさせている、という点は決して見逃してはいけないと思います。やはりいくらボランティアコーチと言えども、実際に子どもたちに動作を教えるという行動を伴っているのであれば、最低限の解剖学やスポーツメカニクスを学ぶべきです。それを学んでいないのであれば、経験則だけで子どもたちを教える行為は避けるべきです。
そもそもトップポジションを、肩関節を内旋させた形で作らせている少年野球コーチが日本ではほとんどです。99%はそうではないでしょうか。肩関節を内旋させた状態でトップポジションを作ってしまうと、肘の内側にばかり負荷がかかってしまい内側側副靱帯を痛めることになります。そして肩関節を水平内転させなければボールを投げられなくなるため、必ず肘が下がり、肩にも負荷がかかってしまうことになります。そして肘が下がってくると今度は肘を上げろと言い出し、肘が肩線分よりも上に行ってしまい、結局また怪我の原因を増やしてしまう、という負のスパイラルに陥ってしまいます。
アメリカの少年野球のボランティアコーチは、子どもたちがよほど間違ったことをしていなければ動作を教えることはありません。その理由はアメリカの少年野球の場合、チームに1人は必ずわたしのようなプロコーチがリトルリーグ連盟から派遣されているからです。ですのでいつでも適切な体の使い方をそのプロコーチから教わることができるのです。ではボランティアコーチの役目とは?チームメイト同士で喧嘩したりせず、仲良くさせるための人間関係を作るという役割を担っています。ボーイスカウトのリーダーのような存在ですね。
アメリカ人や中米の選手は体の造りが違うから日本人では敵わない。と思っていませんか?これはまったくの誤りです。違うのは体の造りではなく、子どもたちを指導するコーチの質です。良い選手になれるか否かに、体格などまったく関係ありません!!
最近、あるリトルリーグのチームに呼ばれて練習風景を見学させてもらいました。わたしを呼んでくださった方以外は、わたしがプロコーチであることは知りません。そのような状況で見学させてもらったのですが、練習内容は酷いものでした。体の構造を無視した動作を教えているし、投げさせている球数は発表されているガイドラインを大幅に超えており、投手はほとんど全員肩か肘に痛みや違和感を訴えていました。このチームの指導内容では、子どもたちが怪我をするのは当たり前だと思わずにはいられませんでした。
仮にアメリカであれば、ボランティアコーチが下手な指導をして子どもたちが怪我をした場合、訴訟に発展する可能性があります。ボランティアコーチが指導した動作さえわかれば、学んでいるコーチであれば怪我をしにくい動作かどうかは一瞬で判断することができるのです。もちろんスポーツ医学的にもそれを証明することが可能です。
しかし日本の少年野球の指導現場ではどうでしょうか。明らかにチームのやり方のせいで怪我をしているにもかかわらず「気合いが足りないから怪我をするんだ!」と言われることもある始末です。やはりプロアマ問わず、野球界もコーチのライセンス制を導入すべきでしょう。最低でも解剖学を理解していないと技術指導をしてはいけないというルールを作るべきです。
引退したプロ野球選手がアマチュア選手を指導するための指導者講習会など、ほとんど意味はありません。大切なのは子どもたちが怪我をしにくい投げ方を論理的に指導できるかどうかです。それを明確に理解していないコーチは、指導する場に立つべきではありません。
先日リトルリーグの練習を見学させていただき、そんな風に思ってしまったのでした。もし怪我をしにくい投げ方をしっかりと身に付けたいという方は、ぜひピッチングマスターコースを受講してください。学習塾の野球版ですので、ワイワイと楽しく野球をやる場ではありませんが、少年野球チームでは絶対に教われないようなことを身に付けられるはずです。