今回の投手育成コラムでは、上達速度をアップさせるための練習の取り組み方に関し少しお話をしてみたいと思います。多くの方が考えている通り、闇雲にただ毎日練習をしているだけでは、思うような練習効果を得ることはできなくなります。野球を始めたばかりであればそれでも上達はできますが、経験値が増えるほど、闇雲な練習では毎日何時間も行なったとしても、いつか頭打ちするようになってしまいます。
これは野球の練習に限った話ではありませんが、とにかく考えて練習することが大切です。コーチングを行なっていると、多くの選手が投球練習を肩の筋トレのように行なってしまっていることが多々見受けられます。そして正しい動作ができていない状態で何十球、何百球も投げてしまい、結局良い動作を身につけることができず、それどころかこれまでの悪い動作をさらに濃く体に覚えこませるための練習にしてしまっている選手が数多く見受けられます。
制球力をアップさせたいと考えた場合、まずは制球力を低下させている原因動作をハッキリさせる必要があります。その動作をハッキリさせた上で、具体的な形で改善を目指していく必要があります。例えば踏み出す足の着地点が一致していない場合は、常に同じ場所に着地できるように練習をします。制球力を良くしたいと思っても、ただ的を見て投げ続けるだけでは制球力はアップしないのです。制球力が低いことには必ず人それぞれの原因があります。その原因を突き止めない限りは制球力はアップしません。
時々オーバーハンドスローをサイドハンドスローにして制球力アップを図る選手がいますが、このやり方にはほとんど意味はありません。オーバーハンドスローで制球力が悪い選手がサイドに転向したとしても、やはり制球力を低下させている原因を改善できなければ制球力が向上することはありません。ただし、稀にサイドハンドスローが体に合っているという選手もいるため、そのような場合は何らかの改善が見られるケースもあります。
そして上達速度をアップさせるためには、とにかく考えることが大切です。そしてノートにその考えていることを書き出したり、声に出して喋りながら練習をしたりすると、目指している形が頭の中で明確になっていきます。頭の中で明確になればなるほど、体の反応が良くなり、その動作を体現しやすくなります。
やはり頭に入っていない動作は、どれだけたくさん練習をしたとしてもできるようにはなりません。まず適切な動作を頭の中に入れ、その上で練習をする必要があります。そうすれば闇雲に練習するという状況ではなくなり、着実にステップを登っていけるようになります。
上達速度をアップさせるためにも、練習する前にまずは考え、適切な動作をしっかり理解した上で練習をするようにしてください。投球練習を、ただの筋トレにしないためにも練習前に考えることが重要なのです。