反対派からすると、子どもたちの青春ともなる部活動を行う時間を奪うべきではない、という意見のようです。しかし日本の場合、特に高校野球は毎日野球漬けで、勉強をする暇さえないほどです。さらに話を広げれば、友だちと出かけたり恋愛をする時間だって持てないと思います。子どもたちを野球漬けにすることが、果たして青春を守ることになるのでしょうか。ちなみに科学的には、好きな女子がスタンドで応援してくれていると雄性ホルモンの分泌が増え、パフォーマンスが向上することが証明されています。つまり恋愛は野球に対して大きなプラスになるということです。
そして野球を辞めた後、野球漬けだった子どもたちはどうなってしまうのか?高校や大学受験でも苦労するでしょうし、就職してからも苦労するでしょう。例えばプロ野球選手の中にも一般的な漢字の読み書きができない選手が大勢います。そんな選手たちが戦力外になった後、就職に苦労しないことなどあるでしょうか?漢字も書けない大人を、一般企業が採用するでしょうか?
当野球塾ではこれまで1000人以上の選手をコーチングしてきましたが、上達速度が速い選手はほとんどのケースで勉強もできます。特に国語力は重要です。コーチが話していることを理解できなければ、上達することもできないからです。
また、コーチングをしていて非常に危惧している点があります。コーチが何かを話していても、子どもたちが「はい」しか言わないことです。コーチとしては「はい」と言われれば理解していると判断してしまいます。しかし実際には反射的に「はい」と言っているだけで、理解できていないケースがほとんどです。
これはチームで押し付け型の指導がなされている影響が大きいと思います。なんでもかんでも「はい」と返事をしているだけでは、コーチが伝えようとしていることを本当の意味で理解することはできません。コーチは、選手たちが自分で考えながら普段の練習を行えるように指導していく必要があります。自主性に任せるのではなく、自主性を養えるコーチングですね。
もちろん簡単なことではありませんが、当野球塾ではそのような指針を持って普段からコーチングを行なっています。当野球塾ではとにかく選手たちに考えさせます。小学校低学年ではまだ難しいかもしれませんが、高学年以上の年代であればどんどん考えさせます。
重要なことはコーチング中に上達することよりも、コーチングを修了した後も自分自身で上達していける能力を身に付けることです。そのためにも子どもたちを野球漬けにするのではなく、しっかりと勉強もできる時間を持たせ、勉強によって考えるというスキルを磨かせ、そのスキルを野球に活かし、コーチの言葉をより深く理解することによって上達速度を上げていく。そしてコーチング修了後は自分で自分にコーチングできるようになる。それが大事だと当野球塾では考えています。ですのでコーチングの休憩中には教わったことをノートに書いてもらっているのです。
しかし勉強が苦手であれば、ノートを上手に書くこともできません。まとまりのない文章で書いてしまっても、あとで読み返した時にわからなくなり、結局コーチングされた内容を活かすことができなくなってしまいます。それでは意味がありません!
子どもたちを野球漬けにしてしまうのではなく、勉強にもしっかりと時間を使えるようにし、スマホではなく対話によってコミュニケーション能力を磨く必要があります。コミュニケーション能力が低ければ、コーチングを受けても最大限の効果を得られなくなってしまいます。
土日は朝から日暮れまで野球をするというチームは日本には数え切れないほどあります。しかし本当にこれで良いのでしょうか?1日8時間を超えるような練習時間は本当に必要ですか?もし監督やコーチが上手くメニューを組めていれば、3〜4時間でも多いくらいではないでしょうか?選手が頭を使ってプレーをできるようになるためには、大人のコーチがまずは先に頭を使って効率的かつ効果的なメニューを組めるようになることが重要です。
よほどレアなケースでない限り、一般の選手たちが指導者の能力を超えることはありません。子どもたちのスキルが頭打ちしないように、大人の指導者たちは選手に対してではなく、まずは自分たちに対して厳しくするべきでしょう。そうすれば部活を週に2日休んだとしても、子どもたちの野球スキルが低下することはないはずです。