「肩を水平内転させて、肘を先行させてボールを投げる」という指導は未だに行われています。つい先日もこのような指導を行っている中学野球の監督さんを見かけました。そのチームに所属している選手がたまたまわたしのコーチングを受けている選手なので聞いたのですが、そのチームは3〜4人いる3年生投手の全員、肩や肘が痛いと訴えているそうです。考えられないほど酷い状況です。
肩肘が痛ければ通常はボールは投げてはいけません。しかし人数がギリギリで試合をキャンセルするわけにはいかないということで、肩肘が痛い選手にも投げさせているようです。あってはならないことです!試合をキャンセルして後日試合を組みにくくなってしまうことと、選手が怪我で野球を断念することになるかもしれないこと、どちらを回避するべきなのかそのチームの大人たちは誰もわからないのでしょうか?!
さて、話は逸れましたが良い投げ方をすると、確かに肘が先行して動いているように見えます。しかしここで重要なのは肩関節はどっち方向にも曲げてはいけない、ということです。つまり冒頭で書いたように、肩関節を前方へ曲げることによって肘が先行する形を作ってはいけない、ということです。
その形で投げてしまうと人間の体の構造上、ボールリリースのタイミングで確実に肘が下がります。投球時に肘が下がれば肩肘への負担は大きくなりますし、腕が遠回りしやすくなるため制球力も低下します。さらにはスライダー回転になりやすいため球速は伸びず、ストレートが打者の手元で失速しやすくなります。
肘を先行させる投球時の形を作るのは、右投手なら左股関節、左投手なら右股関節の役目です。この股関節を内旋させていくことにより、肩を使わずに肘を先行させて投げられるようになります。この形で投げられると、腕がしなっているように見える瞬間、つまり適切な形のトップポジションを作って投げられるようになるのです。
適切な形のトップポジションを作って投げられるからこそ球速や制球力が向上し、肩を曲げて使わない分肩肘への負担を最小限に抑えることができるわけです。
当野球塾では、とにかく徹底して股関節を上手く使うための投球・送球動作を指導しています。言い換えれば土台をしっかりと作り、そして安定させた状態で投げるということです。それができるからこそ上半身の力に頼って投げる必要がまったくなくなり、肩肘を痛めるリスクを軽減させることができるのです。
数ヵ月前、情報交換のため元プロ野球選手が指導をしているある野球塾を訪れました。すると肩関節を使って肘を先行させる形を指導していたのです!僕は急いでそのコーチに、その指導が間違いであることをこっそり教えました。それ以来そのコーチは僕のところに通い野球動作を勉強されています。元プロ野球選手であってそのような間違いをしていますので、ボランティアのお父さんコーチたちではなおさらではないでしょうか。
肩肘を痛めにくく、さらに球速も制球力もアップさせられる投げ方をマスターされたい場合、ぜひ当野球塾にご相談くださいませ。投げ方はできれば小学生のうちに、遅くとも中学生のうちに改善しておくことがベストです。それ以上の年代になると体が大きくなる分、動作を改善するのに時間を要してしまうことが多くなるためです。