小学生のうちから肩肘を痛めてしまっている選手が、日本には多過ぎます。しかも最悪なのは痛みがあっても、人数が足りないという馬鹿げた理由で試合に出されている現状です。普通に考えれば怪我をしている選手にプレーをさせることが、その子の将来にとってどれだけ危険なことなのかすぐにわかるはずです。しかしそれがわからない、もしくは考える能力のない少年野球の監督・コーチが多過ぎるんです。
スポーツの役割の一つには、健康促進というものがあります。健康を促進させるためにやっている野球で、子どもたちの多くが肩肘を怪我してしまっている日本の現状。果たして各野球連盟はこれについてどう考えているのでしょうか。効果的な対策が打たれているようにはまったく思えません。
そもそも小学生に対し、大人が投げ方を指導すべきではないんです。解剖学、スポーツ科学をまったく勉強をされていない方が、経験則だけで教えてしまうから肩肘を痛める投げ方で投げるようになってしまうんです。
では野球の本場、アメリカの少年野球はどうなのか?アメリカの少年野球チームの場合、よほどの初心者チームでない限りはチームに必ず1人はプロコーチが在籍しています。技術指導はそのプロコーチが行うのですが、それでも実際に指導するのは怪我をしやすい投げ方、基本からかけ離れた投げ方をしている選手に対しての修正作業がほとんどです。日本のように「ああしろこうしろ」と教えたがるコーチはほとんどいません。
反面日本のコーチは皆さん教えたがりです。余計なことまで教えてしまい、それにより体の構造に反した投げ方をするようになり、肩肘を痛めてしまいます。ちなみにコーチの役割は教えることではありません。コーチの役割は、選手が怪我なくパフォーマンスアップできるように導くことです。ティーチングとコーチングはまったくの別物です。
日本の場合、例えば学生野球であれば学校の先生(ティーチャー)がコーチや監督を務めていることがほとんどです。つまり教えることが仕事の方々が、野球部でも教える作業をしてしまっているんです。しかもコーチング技術、スポーツ科学、スポーツ物理学、解剖学などをほとんど勉強されていない方が教えてしまっています。
野球にもコーチングライセンスが必要だと思います。そうしなければ野球経験者が、野球を学ぶことなく選手を(コーチングではなく)教えてしまい、肩肘を痛めてしまう選手が今後も増え続けるはずです。
元プロ野球選手のコーチ、スポーツ整形のドクターと話していても、肩肘を痛め難い人体の構造に則った投げ方を勉強されている方はほとんどいらっしゃいません。僕が今までお話をさせていただいた数多くの現役コーチやドクターの中で、僕と同レベルで野球動作を勉強され、実際適切な動作知識をお持ちの方は日本人ではたった1人しかいませんでした!
投手コーチングで重要なのは「怪我をし難い動作>制球力>変化>球速」の順番です。しかし、まず球速から入ってしまうコーチが多過ぎます。そのために子どもたちがあっという間に肩肘を痛めてしまうんです。常々思うことは、選手ではなくコーチたちに当野球塾に通ってもらいたいということです。そうすればそのコーチが在籍するチームの選手たちは全員、肩肘を痛め難い投げ方を身につけることができますので、これが最も効率が良い方法だと思ってしまうわけなのです。