投球時に肘が下がってはいけない、と知っている選手はほとんどだと思います。しかし現実的には肘が下がるしかない投げ方をしている選手がほとんどなのです。それは指導者が「腕をしっかりと振れ」と言ってしまうことも原因になっていると考えられます。
結論を言いますと、肩を水平内転させることによってボールを投げてしまうと、人間の体の構造上肘は必ず下がってしまいます。水平内転というのは、右投げの場合、右腕を真横に水平に上げてみてください。そこから腕を水平に動かし右手で左肩をタッチしてください。この時の右肩の動き方を水平内転と言います。
テイクバック付近で肩・肩・肘のSSEライン(ショルダー・ショルダー・エルボー)が一直線になったら、ボールを持っている間はこの一直線を維持し続けます。この一直線が崩れることを肘が下がっている、もしくは肘が上がっていると評価します。肘は肩線分(両肩を結んだ直線)の延長線上で一直線になっていることが求められます。
肩を水平内転させることによりボールを投げてしまうと、投球後に右手で左肩を触るような動きにならない限り、ボールリリース時に肘を肩線分の延長線上に維持することはできません。ただしSSEラインは一直線ではなく「く」の字になってしまいます。左投手であれば左手で右肩を触るような動きですね。
テイクバック付近でSSEラインを一直線にしたら、ボールを握っている間はこの一直線を維持し続けます。ではどこを動かすかと言うと、非軸足側の股関節です。右投げなら左股関節、左投げなら右股関節です。ランディング時に最大外旋させたこの股関節を内旋させていくことにより、手に握ったボールをキャッチャーミット方向に加速させていきます。
非軸足側の股関節を適切に動かすことができれば、肩関節を動かす必要がなくなり、テイクバック付近で作った一直線のSSEラインが崩れることもありません。そして肩を使わなければ肩への負荷は最小限に抑えることができ、野球肩になるリスクを大幅に軽減させることができます。
例えば工藤公康投手、山本昌投手、岩瀬仁紀投手らは股関節の使い方を当野球塾のコーチのような専門家に学び、そして股関節のコンディショニングを徹底して行なったからこそ肩をほとんど使わない投げ方を身につけることができたのです。だからこそ40代や50歳近くになっても現役を続けることができているのです。
指導者が選手に対し「腕をしっかりと振れ」と言ってしまうと、選手はどうしても肩を動かすことによって一生懸命腕を振るようになってしまいます。すると肩を水平内転させる投げ方が癖づいてしまい、野球肩のリスクを高めることになってしまうのです。
当野球塾では肩は使わず、股関節を使って投げることによって故障のリスクを軽減させ、制球力と球速をアップさせる投球動作の指導を行なっています。とにかく大事なのは、ボールは股関節で投げるということです。決して肩や腕力を使っては投げないでください。