変化球のすべてが肩肘に負担がかかるわけではない

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小学生の野球連盟では、変化球を投げることが禁止されています。その理由は、変化球を投げることで肩・肘に負担がかかり、小学生のうちから野球肩や野球肘を引き起こしてしまうからです。この考え方は決して間違いではないと思いますが、100%正しいとは思えません。NHKでも放送されていた人気野球漫画がありますが、その一場面で、主人公である少年がチームの監督に変化球を教わったことに対し、プロ野球選手である少年の父親がそれに異を唱えるという場面がありました。この父親の対応は決して間違ってはいないと思います。しかしそれがすべてだと考えるのは、非常に危険だと僕自身は考えています。

変化球=肩肘を痛める、という図式は正しくはありません。正しくは、投げ方の悪い変化球=肩肘を痛める、となります。

とは言え、小学生のころから投手として変化球を投げる必要はありません。小学生のうちはとにかく基本をマスターし、野球の楽しさを知っていくということが何よりも重要です。なぜなら基本もなく、野球の楽しさも知らない子は、中学生に入ってから野球を継続することができなくなるからです。

さて、では投げ方の悪い変化球とはどのようなものを言うのでしょうか?カーブを例に挙げてみましょう。リリースの瞬間、肘から指先にかけてを外旋させれば、ボールには横回転がかかり、簡単にカーブを投げることができます。しかしこの投げ方こそが悪い投げ方なのです。前回の投手育成コラムで、スローイングアームの内旋・外旋についてお話をしました。それと照らし合わせてみると、リリースの瞬間に腕は内旋状態にあるべきなのです。ですが上述したカーブでは、リリースの瞬間は外旋状態にあります。これでは肘に大きな負荷がかかり、野球肘になってもまったく不思議はありません。

近年、プロ野球でもホンモノのカーブを投げる投手は少なくなりました。いわゆるドロップと呼ばれるタイプの、埼玉西武ライオンズの岸孝之投手が投げているようなカーブです。このカーブは、握ったボールを中指と親指の間から抜くことで回転を与え、大きく縦に割れる変化を生み出しています。そしてもちろん内旋過程においてボールはリリースされています。

ドロップと呼ばれるこのカーブは、肘を柔らかく使えていないと投げることができません。スライダー全盛である現代、ドロップの使い手が減ったのは肘を柔らかく使える投手が減ったためです。スライダーも内旋過程の途中でリリースされるべき変化球なのですが、肘を柔らかく使いやすい変化球ではありません。スライダーを長年に渡り多投してしまうと肘が下がってしまい、ストレートに威力がなくなるのはこのためです。肘の使い方が硬くなってしまうことで、肘が少しずつ下がっていってしまうのです。桑田真澄投手が高校時代から頑なにスライダーを投げなかったのはこれを避けるためでした。

肘が硬くなりロックされた状態になってしまうと、ボールが引っかかるようになり制球力も低下してしまいます。豪腕投手によく見られる姿ですね。肘の使い方は常に柔らかいのが理想です。それを訓練するためにも、僕は小学生でもキャッチボールではドロップを投げる遊びを取り入れることには賛成です。もちろん試合や投球練習で本格的に投げる必要はありません。あくまでも肘を柔らかく使うための遊び要素として、です。

プロ野球選手の中には、ブルペンに入ったらまずドロップを投げて肘を柔らかくさせる投手がいます。普通はストレートを投げて、肩が温まってから変化球を投げるべきですが、肘を柔らかくするために、まずドロップを投げるというのは実に理に適った調整方法だと僕は思っています。

野球にしても何にしてもそうだと思いますが、まず禁止して危険を回避しようという考え方には僕は違和感を感じてしまいます。小学生が投げる変化球にしても、本当に大事なのは変化球を投げさせないことではなく、なぜまだ変化球を投げるべきではないのかを伝えることだと思います。それを伝えないまま、ただ変化球を禁止するだけでは、子どもの野球肘を減らすことはできません。なぜなら、変化球同様ストレートも投げ方を間違えば野球肘を引き起こすからです。

特に子どもを指導するコーチや監督には、そのあたりをしっかり見てあげて欲しいと思います。小学生のうちから必要以上の理論や技術を教える必要はありませんが、明らかに修正すべき投げ方などに関しては、早いうちから直してあげるべきだと僕は考えています。

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筆者:カズコーチ(プロフィール)
TeamKazオンライン野球塾 プロ野球選手のパーソナルコーチング、自主トレサポート、動作分析、試合内容分析、小中学生の個人レッスンなどを業務としているプロフェッショナルコーチです。
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