ストレートがシュート回転するのは良くない。これは昔から野球界で言われている通説です。これに関しての僕の意見は、やはり皆さん同様イエスです。僕も、ストレートはできるだけきれいなバックススピンをかけるのがベストだと考えています。ジャイロ回転という選択肢もありますが、ジャイロ回転にこだわる必要もないでしょう。もちろん、ジャイロ回転のボールで145kmのストレートを投げられるのであれば話は別ですが。
ピッチングの基本のすべてはストレートにあります。世界中の投手の99%は、変化球よりもストレートの制球の方が良いはずです。この点だけを見ても、ストレートがストレートである必要性が高いということがお分かりいただけると思います。ちなみにアメリカでは、打者を変化球で打ち取っても投手コーチから褒めてもらえることはありません。ピッチャーが最も制球しやすく、最も力強いストレートで、意図した通りに打者を打ち取って初めて褒めてもらうことができるのです。
ナチュラルシュートやナチュラルスライダーは、投手自身はストレートのつもりで投げています。しかし打者から見ればそれは変化球でしかありません。つまりバックスピンストレートを投げてこない投手に対し打者は、変化球だけを待っていれば良いということになります。あとは右に曲がるか左に曲がるかだけで、それもデータからかなり高い確率で予測することができます。ストレートがナチュラルに変化してしまう投手の場合、常に低めに投げることができなければ簡単に連打を浴びてしまうことになるでしょう。
ナチュラルシュートやナチュラルスライダーがかかったボールは、通常のバックスピンストレートに比べるとスピンが多くなり、それだけ当たれば飛ぶボールになってしまいます。つまり外角低め、もしくは内角低めでしか勝負できない球種なのです。一方バックスピンストレートの場合、ストライクゾーンの四隅で勝負することができます。内角低めと高め、外角低目と高めの4つのコースです。これがストレートの最大の魅力です。質の良いストレートを持っている投手の場合、打者にとって最も打ちにくいボールがストレートとなるわけです。
変化球だけを待てば良い投手が相手の場合、打者は外角低めと内角低めの2ヵ所だけをカバーしておけば、ほとんどの場合で対処することができます。しかしここにストレートが加わってくると変化球に加え、四隅のストレートという4ヵ所もカバーする必要があります。単純に考えれば、2ヵ所でしか勝負ができない投手よりは、4ヵ所で勝負できる投手の方が当然良い数字を残すことが可能となります。
近頃は中高生の投手でも変化球にこだわる投手が増えてきました。もちろんこれは決して悪いことではありません。変化球にはどんどん興味を持つべきです。しかしそのためには、質の良いストレートを投げられるということが大前提となります。質の良いストレートとは、制球力があり、初速と終速の差が小さいストレートのことです。変化球は、この質の良いストレートがあってこそ活きるものなのです。
投手にとって最も奥が深いのはストレートという球種です。この奥の深さを追求したがる投手ほど、大成できる可能性が高くなると僕は考えています。投手として大成するためにも、とことんストレートに磨きをかけていってください。