トレーニングが不足すると良い投げ方でも肩を痛めやすい
ピッチャーにとって肘痛が投げ方の悪さに原因があるとすれば、肩痛は投げ方の悪さに加え、トレーニング不足というさらなる原因も考えられます。ある程度速いボールを投げることは、筋力のない女性選手でも十分に可能です。しかしある程度以上に速いボールを投げ続けるためには、それ相応の筋力が必要になってきます。その筋力が足りないと、例え投げ方が良くても肩痛を引き起こしてしまいます。
肩痛も、例えば関節胞の損傷となると、それは病院で治療するしか方法はありません。しかし病院に行ってもこれといって明確な問題点が見つからない場合、筋力不足ということも視野に入れるべきでしょう。
と言っても、肩周りの筋力の話ではありません。ピッチャーにとっての肩痛は、常に問題が肩にあるとは限らないのです。例えば毎日腹筋をすることで治る肩痛もあるのです。
野球肩を防ぐためには下半身の力を効率よく上半身に伝えよう
ピッチングという動作は、常に下半身主導で行うべき動作です。足でしっかりと地面を噛み、地面から得た反力エネルギーを効率よくボールを握った指先に伝え、そのエネルギーでボールをリリースさせます。ここでもし筋力が不足しているとどうなるでしょうか?
まず足腰の筋力が足りない場合。ステップ幅が狭くなることで、身体が沈まなくなります。身体が沈んでいかないということは、相対的に肘の位置が低くなります。肘が下がった状態でボールを投げ続ければ、当然肩・肘に大きな負担がかかり、痛めてしまう結果となります。さらに言えばステップが狭くなるとボールの加速距離が短くなることにより、球威球速が低下します。下半身で作り出すべきエネルギーが作れないと、どうしても上体だけでエネルギーを作ろうとし、その余分が力みが肩に大きな負担を与えてしまいます。
腹筋が弱いことで発症する野球肩もあるって本当?!
そして腹筋が足りない場合はどうなのか。ピッチングは地面から得た反力エネルギーなどをボールに伝える作業であることはすでに書きましたが、そのエネルギーは、すべてがボールに届くわけではありません。脚、腰、腹筋、背筋を介していくことで、エネルギーは肩に届くまでの間に少しずつ消費されていくんです。
しかしもし腹筋、特に腹斜筋の強さが足りない場合、そこで消費されるべきエネルギーが消費されることなく、肩にダイレクトに届いてしまいます。すると肩には必要以上のエネルギーが集まってしまい、エネルギーの容量オーバーを起こしてしまいます。ということはこの場合の肩痛は、腹筋を鍛えることで改善させられる可能性があるということになります。
野球選手の肩肘は決して消耗品ではない!
肩が痛いからと言って、肩周りを鍛えるだけでは肩痛は治りません。身体全体をバランスよく鍛える必要があります。そしてバランス良く鍛えた身体で、バランス良く投げることにより、初めて消耗しない肩を得ることができるのです。肩は決して消耗品ではありません。バランスの良い身体でバランスの良い投げ方をすれば、常識範囲内の連投で簡単に肩を壊すことは決してありません。
「肩は消耗品だ」と言うコーチを時々見受けます。しかしそれは僕に言わせれば、選手を消耗品扱いしているも同然です。選手に野球を教える立場なのであれば、それはプロであろうと少年野球であろうと、選手たちのベストコンディションを引き出してあげるのが指導者の役割です。バランスの良い身体でバランス良く投げることができれば、肩はそう簡単には消耗しません。そして選手を良いバランスへと導いてあげることは、何よりも重要なコーチの役割の1つです。