11歳前後肘痛は遺伝性である可能性もある?!
子どもの肘痛にはいくつかの原因が考えられます。まず1つ目は、やはり大人同様に投げ方の悪さ。そして2つ目は遺伝性による肘痛です。つまり兄弟で野球をやっていてお兄ちゃんが肘痛になれば、弟も肘痛になる可能性が高いということです。
これは離断性骨軟骨炎と呼ばれる症状なのですが、子ども(11歳前後の男女)の場合だいたい0.3~1%の割合で起こると言われています。そしてこれは野球少年に特化された症状ではないため、これをひとくくりに野球肘と呼ぶことはできません。サッカー少年にもバスケ少年にも、陸上少女にもバレーボール少女にも起こる可能性があります。
この場合、放っておけば治る可能性もあります。しかし重要なのは、痛みがあるうちは休むということです。そしてこれは投げ方の問題ではないため、良い投げ方をしていても起こる可能性があるので注意が必要です。
離断性骨軟骨炎は放っておけば治ることも多い
子どもに起こる離断性骨軟骨炎は、休むことで治る可能性もある症状です。ですが痛みがある状態で我慢してプレーを続けてしまうと、治るものも治らなくなってしまいます。いえ、この言い方は正確ではないですね。治るはずのものを悪化させてしまうことがある、というのが正しい表現かもしれません。
肘が痛いと言って病院に行くと、炎症だと診断されて消炎剤を処方されることがあります。もちろんこの処方が悪いという話ではないのですが、しかし炎症というのは、炎症そのものが痛みを引き起こしている根源ではありません。炎症は、その部位で何か問題が起こっているからこそ起こるものであり、炎症を抑えるだけでは肘痛に対する根本的な解決にはならないんです。
炎症というのは、その部位で起こっている問題を身体が自ら治癒しようとする際に起こる生体反応です。ですので、この炎症を起こしている根源を見つけられない限り、厳密にはそれは肘痛の治療にはならないわけです。
さて、子どもの肘痛は遺伝性である可能性もあると上述しましたが、その説明をもう少し付け加えておこうと思います。子どもの骨は日に日に成長していきます。そして骨が成長するのに必要な栄養は、血管から骨へと入っていきます。この時の血管の骨への入り方には個人差があり、その個人差が遺伝性によるところが大きいわけです。
つまり、血管から骨へと栄養が送られる際、送られ方によって骨の成長にバラつきが出てしまうことがあります。この成長のばらつきにより、肘痛を引き起こしてしまうのです。そして放っておけば治るとも書きましたが、この成長していく過程でのバランスが、成長するつれて整えられて行けば治るということです。逆に痛みがあるのにプレーを続けてしまうと、このバランスがさらに崩されていき、生涯に渡り肘痛を抱えてしまう危険性もあるため、注意が必要です。
野球だけをするよりは、いろいろなスポーツに挑戦しよう!
ですので野球少年・野球少女を抱える親御さんは、もしお子さんが肘が痛いと言った場合、絶対に無理はさせないでください。肘が痛いという現象には、必ず理由があります。その理由が明確になり、改善されるまでは、ボールを投げさせるべきではありません。例え目の前の大事な試合に出られなくなったとしても、その子の将来を考えれば、心を鬼にしてでも治るまでは休ませるべきなのです。
そして肘痛が癒えるまでは、水泳や剣道、サッカーや陸上という野球以外の競技を楽しませ、再度野球に繋げていってみてはいかがでしょうか?子どもにとって、野球をすることだけが野球の上達につながるとは限りません。例えばメジャーリーグでも活躍された松坂大輔投手は、子どもの頃は野球だけではなく、水泳や剣道もやっていました。水泳により柔軟で強靭な肩や肩甲骨を培い、剣道により速球を投げるために必要な背筋を作り上げたというわけです。
アメリカの野球少年たちを見ても、一年中野球をやっているというわけではありません。春夏秋は野球をして、冬は屋内でできる他のスポーツをして、春になるとまた野球場に戻ってくる、というパターンがほとんどです。日本でも、子どもたちが野球をしながらも、もっといろいろなスポーツを楽しめるようになっていけば良いのになぁ、と個人的には思っています。