スライダーとは

スライダーとは、カーブとは異なり途中まではストレート

スライダーとは?と問われたら、僕は必ず「途中まではストレートで、ある地点から球に曲がり始める変化球」という感じで答えます。スライダーとカーブはまったく別物であり、カーブはリリースした瞬間から変化がはじまっていきますが、スライダーは途中まではストレート軌道であるべき球種です。

スライダーはとにかく、リリース後にどれだけ長くストレート軌道を維持できるか、が鍵になってきます。このストレートである時間が短ければ短いほど、バッターからすると球種を見極めやすくなりますし、バットも合わせやすくなります。

逆にストレートの時間が長くなり、曲がり始めるのがホームプレートのすぐ手前になってくると、バッターはそのスライダーをストレートだと思って振ってきますので、空振りや引っ掛ける可能性が一気に高まります。

投げ方を間違うと肘が下がりやすくなるスライダー

スライダーを多投すると肘を痛めやすいと言ったりもしますが、これは肘の回外によってボールにスライダー回転を与えてしまうためです。この投げ方をしてしまうと肘が下がりやすくなるだけではなく、野球肘になるリスクも高めてしまうことになります。

しかし肘の回内・回外は使わずに、肩関節の内旋過程のみでスライダーを投げることができれば、肘が下がりやすくなるということもありませんし、変化球の多投によって肘を痛めるリスクが高まることもありません。ただしボールを投げている限りは、どんなに良い投げ方をしていてもそのリスクを0にすることはできません。

スライダーとは肩甲骨でキレが増す変化球

肩甲骨の可動域が広いピッチャーは、キレのあるスライダーを投げられるようになります。逆に肩甲骨が硬いピッチャーのスライダーは曲がり始めるポイントが早くなりやすく、スラーブのような変化になっていきます。

スラーブに関してはパワーカーブと解釈することもできるわけですが、スライダーを投げているつもりでスラーブになるのは、打者を抑える上ではベストな過程とは言えません。意識して投げるスラーブと、スライダーのキレがなくスラーブっぽくなってしまうのとでは、まったく意味合いが異なります。

スライダーは変化球の中では最も難易度が低い球種で、キレを度外視すれば誰にでも投げることができる球種です。だからこそ奥が深いということもできるわけですが、横回転をかければ誰でも投げられる分、間違った投げ方をして肩肘を痛めやすいのもスライダーであると言えるわけです。

ストレートの目安は12m以上

18.44mのマウンドで投げる場合、ピッチャーズプレートからだいたい1.5〜2m離れたところでボールはリリースされます。すると残りだいたい17mくらいになるわけですが、リリース後のこの17m中、12m以上をストレート軌道にできるようになると、バッターとしては非常に見極めにくくなります。

ですのでホームプレートの4m手前に目印を付けて、その地点以降で曲げ始められるように練習していきましょう。特に140km以上のストレートを投げられるピッチャーは、この地点以降で曲げられれば多くのバッターがストレートだと思って振ってくれるようになります。

曲がっていく幅は30cmもあれば十分です。ですのでスライダーは曲げ幅よりも、ストレート軌道を長くできるように意識して練習して行くようにしましょう。

ヤーキーズ・ドットソンの法則

ヤーキーズ・ドットソンの法則

試合前に、とにかくリラックスしようと試みる選手はけっこう多いと思います。しかし実は、リラックスし過ぎてしまうとパフォーマンスは逆に落ちてしまうんです。

例えばこんな選手いたりしませんか?緊迫した試合だとナイスピッチングやナイスバッティングを見せてくれるのに、大量リードしていたり、大量リードを許してしまった緊張感が少し途切れた試合になると、突如としてマウンドで崩れてしまったり、別人のように凡打を繰り返してしまう選手。

これは野球やスポーツに限らず、勉強でも仕事でも同じことが言えるのですが、人間のパフォーマンスは程よい緊張感がその質を高めてくれるんです。これをヤーキーズ・ドットソンの法則と言います。

監督は優しすぎても怖すぎてもダメ

緊張感は低すぎても高すぎてもパフォーマンスを低下させてしまいます。一方程よい緊張感を得られると、スポーツの場合は体の反応も良くなり、好プレーが出やすくなります。

まったく緊張感のない状態が0だとすると、緊張感が少しずつ高まり、程よい緊張感に近付くほど右肩上がりでパフォーマンスは上がっていき、頂点の100となります。そしてその程よい緊張感を通り過ぎて緊張感が高くなりすぎると、今度は右肩下がりで0に近付いていきます。緊張感とパフォーマンスの関係は、このように山なりのグラフで表すことができます。

チームにメンタルトレーナーがいれば話は早いのですが、メンタルトレーナーが帯同しているチームなどプロ野球くらいだと思います。ですのでこの程よい緊張感に関しては、監督やコーチが普段からその匙加減をしっかりと把握しておくことが大切です。

つまり試合中に優しすぎる監督も、怖すぎる監督も、選手の実力を最大限発揮させてあげることが難しくなります。逆に試合中に程よい緊張感を上手く与えてあげられる監督は、選手の良さを最大限引き出しやすくなります。

程よいペナルティで程よい緊張感を作ろう

ペナルティを与えるというのは、程よい緊張感を与えるためには効果的です。例えば試合に負けたら全員でグラウンド10周というようなペナルティですね。

これがグラウンド100周だと緊張感が高まりすぎて、逆に試合中にガチガチになってしまいますし、グラウンド2〜3周では「2〜3周なら別に負けてもいいや」という考えが浮かんでしまいます。

グラウンド10周であれば決して無理のない距離ですし、同時に「10周も走るのイヤだなぁ」と選手に思わせることもできます。監督として醸し出すオーラや雰囲気と合わせて、このようなペナルティを上手く設定して行くのも、緊張感を程よくさせるためには効果的です。

監督やコーチの役割とは?

小中学生の試合を眺めていると、エラーをするとすぐに怒鳴る監督やコーチがけっこうたくさんいます。いったい普段の生活にどれだけフラストレーションを抱えているのでしょうか(苦笑)。エラーやミスをするたびに怒鳴られていたら、選手の緊張感は高まりすぎて萎縮してしまい、伸び伸びとプレーできなくなり、ベストパフォーマンスを発揮することもできません。さらに言えば、そんな雰囲気の中で野球をやっていてもまったく面白くありませんよね。そしてこれは野球でも勉強でも仕事でも同じことが言えます。

監督やコーチの役割は、ミスをした選手を怒鳴りつけることではありません。次同じミスをしないようにする方法を指導してあげるのが監督・コーチの役割です。

選手個々のベストパフォーマンスを引き出してあげるためにも、少年野球や野球部の監督・コーチは、自ら醸し出す雰囲気やペナルティを上手く使いこなして、選手たちに程よい緊張感を与えてあげられるように工夫してみてください。

例えば練習ではいつもニコニコ優しい監督が、試合になると笑顔を見せずに指揮を執るだけでも、選手に程よい緊張感を与えることができます。ただし、もちろん怒鳴り散らすことは禁物ですよ。

TeamKazオンライン野球塾

世の中には胡散臭いイップス治療もあるので御用心!

僕がレッスンをするオンライン野球塾では、イップスの改善も行っています。2010年以降たくさんの選手のイップスを改善させてきましたが、レッスンによってイップスがまったく改善しなかった方はこれまで1人もいらっしゃいませんでした。

ではなぜ僕のレッスンではイップスを着実に改善させていくことができるのか?その理由は決して難しいものではありません。イップスをメンタルの問題ではなく、技術的問題だと捉えているためです。

さて、話を進めていく前に、僕の生徒さんが実際に受けた驚きのイップス治療をご紹介しておきたいと思います。その選手の親御さんはこの治療に合計10万円近く費やしたそうです。イップスに苦しむ高校生選手だったのですが、受けた治療はメンタルでもテクニカルでもなく、催眠療法だったそうです。

目を閉じて、治療者の催眠をかけるような言葉を何度も通院して聞き続けて、そして最後に指をパチンと鳴らされて「これでも君はもうイップスなんかじゃない!」と言われて治療が終了したそうです。

僕らのようにイップスではない冷静な人間からすると、明らかに胡散臭くてこの治療法に効果なんて望めないことはすぐに分かるわけですが、でも何年もイップスに苦しんでいる方からすると、もう本当に藁にもすがる思いだったのだと思います。しかし残念ながらこの催眠療法の効果はなく、イップスが目に見えて改善することはなかったそうです。しかしこの高校生は僕のレッスンによってイップスを改善させることができました。

技術的問題がないイップスはない!

僕のイップス改善法としては、まず最初に重点的にチェックしていくのが踏み出していく足のステップの形と、ボールを握っている手の親指の使い方です。イップスになっている選手というのはほぼ必ずこのどちらか、もしくは両方に問題があります。

改善の難易度としては、ステップしていく足の形を直すことの方が簡単です。頑張れば1〜2週間程度でしっかりと修正できて、意識しないでも良い形ができるようになる選手が多いです。

一方スローイングアームの親指の動作改善に関しては、これはなかなか難しいんです。ステップする足の動作改善以上に丁寧に段階を踏んで少しずつ改善させていく必要があります。

僕のオンライン野球塾はZOOMを使ってレッスンをしているのですが、画面越しにボールを投げてもらい、その動作を丁寧に細かくチェックしていき、動作改善を進めていきます。

イップスは確かにメンタルの不調と言うこともできるのですが、しかし技術的問題が存在していないイップスというのは、僕の経験上はありません。少なくとも2010年以降僕にイップス改善の相談をしてきてくれた生徒さんたち100人ちょっとの中では、技術的問題がなかった選手は一人もいませんでした。

それにしても2010〜2021年でイップスの改善希望の方だけで100人以上というのは、なかなか多いですよね。それだけイップスに悩んでいる選手が多いということなのだと思います。

メンタルクリニックの治療だけでは絶対に治せない送球イップス

イップスは近年までは原因不明だと言われてきました。しかしこれはイップスを研究する専門家の人数が少なかったためで、実際には原因不明ということは絶対にありません。原因は必ず存在します。

イップスに苦しんでいて、戦力外通告を受けるまでそのイップスを改善させることができなかったプロ野球選手の映像を見させてもらったこともあるのですが、そこには明確な原因が映り込んでいました。この選手の場合もやはり親指の使い方に問題があったのです。もし現役時代に僕に相談をしてくれていれば、きっと改善させることができたでしょう。ご本人も「現役時代にカズコーチに会いたかったです」と仰ってくれました。

野球選手のイップスを治療しているクリニックは全国にたくさんあると思います。しかし野球のプロフェッショナルコーチとしてハッキリ言わせてもらいます。イップスというのは、技術的問題がある→悪送球が続く→技術的問題が悪化する→悪送球がさらに増える→メンタルがやられる→イップスの泥沼にハマる、という順番で進行していきます。

つまり、いくらメンタルを整えたとしても技術的問題を解決しなければ、イップスが治ることは絶対にないということです。要するにメンタル治療だけでイップスを治すことはできないということです。

さて、イップスを治療されているメンタルクリニックの先生方で、バイオメカニクス(科学的野球動作法)に精通されている方はいらっしゃるでしょうか?もしいらっしゃれば安心して相談してもらって良いと思います。しかしバイオメカニクスに精通していない方に、野球動作の問題点をピンポイントで見つけ出し、その改善方法を明確に指南することは絶対にできません。

イップスを引き起こした技術的問題をクリアした上でメンタルの不調を整えるために、メンタルクリニックに通うことはとても良いことだと思います。しかしメンタルクリニックの治療だけで送球イップスを治すことはできませんので、今現在イップスに苦しんでいる方は治療法の選択にはご注意ください。

僕が初めてイップスを治したのは大学生投手

僕が初めてイップスに苦しむ選手のコーチングを行ったのは、僕がプロコーチに転身した2010年のことで、大学生投手でした。高校時代からイップスに悩み始め、大学に入ると悪化してしまい、キャッチボールをしても相手の手が届くところにまったく投げられないという最悪の状態になっていました。

その投手のレッスンを始めて3ヵ月くらいでイップスの改善が目に見え始め、6ヵ月経過するとキャッチボールで悪送球することはほとんどなくなりました。ちなみに僕とこの大学生投手の動作改善に関しては、高校の野球部などに置かれている野球のフリーペーパーTimely!でも連載していただきました。

トータル1年ほどコーチングを担当させてもらったのですが、最終的には大学の野球部の1軍で背番号をもらえるレベルの投手になることができました!最初はキャッチボールさえできなかったのに!

僕はメンタル強化トレーニングも行えるコーチなのですが、この大学生投手に対してはメンタルに関する指導はほとんどしませんでした。イップスであれだけ精神的に参っていたのに、メンタル治療を施すことなく、1年後にはとても良い精神状態で伸び伸びとマウンドで躍動できるピッチャーになることができました。

イップスの改善はメンタルよりも、まずは技術面を改善させよう!

大事なので最後にもう一度お伝えしますが、技術的問題がないイップスは絶対にありません。この技術的問題を改善させることができれば、イップスの症状を着実に改善させることができます。

ですのでもし今現在イップスに悩んでいるという方は、まずはメンタルよりも技術面の問題点を僕のような専門家に洗い出してもらい、その改善方法を教わった上でイップスの改善を目指してください。メンタル治療ありきではなく、まずは技術的問題点を改善させることがイップスを改善させるためには何よりも重要です。

5129735_m.jpg

野球選手も十分に注意したいペットボトル症候群

熱中症は毎年7〜8月をピークに増えてくるのですが、熱中症関連のニュースを読んでいると最近よく目にするのがペットボトル症候群という言葉です。この言葉を目に、耳にされたことがある方はけっこう多いと思います。

ペットボトル症候群になってしまうと、症状としてはまず喉が渇くのにトイレの回数が増え、体重が減り、体がだるくなり、さらにはイライラしてくるというものがあります。症状はもちろん人によって異なるわけですが、だいたいこのような症状が現れることが多くなります。

夏場は暑さによってイライラしているのか、それともペットボトル症候群の兆候としてイライラしているのかという見極めがものすごく難しいため注意が必要です。

ちなみにペットボトル症候群の正式名称はソフトドリンクケトーシスというのですが、スポーツドリンクやペットボトル飲料など、糖が多く含まれている飲み物を多飲してしまうことによって引き起こされる症状です。最悪の場合は突然意識を失ってしまったり、死に至るというケースもあるため、決して侮ってはいけません。

飲めば飲むほどもっと欲しくなる清涼飲料水

500mlのペットボトルのジュースには、だいたい30〜50gの砂糖が入っています。スポーツドリンクでも20〜30gは入っています。これがコーラなどの炭酸飲料になると50g以上となり、角砂糖15個分の砂糖ということになります。

コーヒーカップ1杯分はだいたい120〜150mlで、角砂糖は入れても1〜2個だと思います。コーラの甘さというのは、コーヒー1杯に角砂糖を5個くらい入れて飲むようなものなんです。コーヒー1杯に角砂糖を5個も入れては、普通の人なら甘くてもとても飲めないと思います。

しかしペットボトル飲料というのは色々な甘味料が上手く調合されていて、それだけ大量の糖が入っていても、飲めないような甘さが感じられることはありません。というか、美味しく飲めてしまいます。

夏場は野球の練習中にスポーツドリンクをゴクゴク飲んでしまう選手もけっこう多いと思います。下手したら1日で1.5リットルや2リットルくらい飲んでしまうことだってあるでしょう。しかし1日に1.5リットル以上、もしくは量は少なくとも1ヵ月以上毎日飲み続けると、ペットボトル症候群を発症するリスクが高まると言われています。

夏場に清涼飲料水を飲むと、もっと飲みたくなりますよね?これは糖によって喉が渇くことが原因です。穿った見方をするのならば、メーカーはもっとたくさん飲んで欲しいから喉が渇くように糖をたくさん入れて、だけどそれほど甘ったるく感じないように味を調整している、と言うこともできるわけです。

人間の体に必要な一日分の糖は一般的には25g程度となります。つまりスポーツドリンク1本で1日分、コーラ1本で2日分の糖を一気に摂取してしまうということになるわけです。この糖質過多がペットボトル症候群を引き起こしてしまうんです。

糖質0の清涼飲料水にも糖はちゃんと入っている!?

ペットボトル症候群は、糖尿病じゃなくても発症します。そして若い世代でも発症するのが特徴です。そしてとにかく注意したいのは、熱中症のような症状が出た時、水分補給をしようとスポーツドリンクを飲んでしまうことです。これは絶対に避けたい行動です。

熱中症とペットボトル症候群の症状は比較的似ているのですが、しかし熱中症ではなくてペットボトル症候群だった場合、スポーツドリンクで水分補給をしてしまうと糖によって症状はさらに悪化してしまいます。

そうならないためにも、熱中症のような症状が出た時はスポーツドリンクで水分補給をするのではなく、水やお茶など、糖が含まれていない飲み物で水分補給をするようにしてください。ちなみに経口補水液にも10g程度の糖が含まれていますので、実はやはり、熱中症のような症状が出た時は飲まない方が無難なんです。

CMなどでは熱中症対策として経口補水液が宣伝されていますが、もし熱中症ではなくてペットボトル症候群だった場合、経口補水液でも症状を悪化させてしまうことがあります。

ちなみに糖質0と書かれている清涼飲料水は、実際には500mlのペットボトルで2.5g未満の糖が入っています。ですので糖質0や、糖質控えめと書かれている清涼飲料水も、熱中症とペットボトル症候群を同時に回避するには相応しい飲み物ではありません。

熱中症にしてもペットボトル症候群にしても、酷い場合は死に至ります。スポーツ選手でも、ペットボトル症候群を熱中症と勘違いしてしまい、応急処置を誤ってスポーツドリンクを飲ませてしまい、症状を悪化させてしまうケースも多いとスポーツ医療の現場では耳にします。

僕が個人的にオススメなのは炭酸水です。ジュースではなく、炭酸が入った水です。炭酸水は、水やお茶を飲んだ時よりも体温を下げてくれる効果がありますし、水なので糖も含まれていません。直後に激しい運動をしない状況であれば、休憩中は冷えた炭酸水で水分補給をするのが良いと思います。

夏場は熱中症だけではなく、ペットボトル症候群にも注意しよう!

ペットボトル症候群は、ペットボトル飲料の糖だけによって引き起こされる症状ではありません。普段の食事や間食から摂取する糖に加え、清涼飲料水によってさらに大量の糖を摂取してしまうことによって引き起こされます。

ですので清涼飲料水自体の摂取量はそれほど多くなかったとしても、普段お菓子や菓子パンなどをよく食べる選手は注意が必要です。

夏場は熱中症や日射病、熱射病だけではなく、ペットボトル症候群にも十分に気をつけて野球を頑張っていきましょう!

足をつる選手が続出している2年振りの夏の地方大会

コロナ禍の真っ只中、今年は2年振りに夏の甲子園予選となる地方大会が開催されています。しかしその試合中、熱中症で足をつってしまう選手が続出しているようです。

一般的に考えるとやはり、緊急事態宣言などにより体外試合を行えなかった調整不足が影響していると考えるべきかもしれません。試合慣れしていない状態で試合に挑んでも、ベストパフォーマンスを発揮することはできませんし、練習では生じない緊張感のせいで疲れも倍増します。

対外試合を行えなかったというのは全国的に共通しているため、一時的な特別ルールも必要かもしれませんね。例えばベンチ入りできる選手を5〜6人増やすということも必要だと思います。今後も調整不足により試合中に体調を崩したり、怪我をしてしまう選手は続いていくでしょう。高野連はそれを見越して一時的な安全策を用意しておくべきだと思います。

紅白戦に緊張感を持たせる工夫

調整法としては、対外試合ができないのであれば紅白戦を増やすなどの対策くらいしかできないかもしれません。しかし紅白戦と対外試合での緊張感はまったく異なるため、指導者がどのようにして緊張感を高めながら紅白戦を行えるかという点は重要になってきます。

例えば40人くらいいる野球部であれば、完全にチームを2分してしまうというやり方もあります。そうすることによってそれぞれのチームにライバル心を持たせられるようになり、紅白戦の緊張感を高めることができます。

ですが中には9人しか部員がいないような野球部だってあります。そういう場合は一時的に同じように人数の少ない他校と合同チームを作るなどの工夫が必要です。高野連もそのような柔軟性を、今は示していくべきでしょう。

何よりも機動性が求められる高野連

今は平時ではありません。コロナ禍という未曾有の事態の真っ只中ですので、過去や未来との公平性を最重視している場合ではないと思います。高野連ももっとスピーディーに臨機応変な対応をしていかなければ、高校野球のコロナ対策は今後も後手後手に回ってしまいます。

スポーツにおいてのコロナ対策は感染を防ぐという意味だけではなく、コロナ禍における調整不足をどのように解消していくかということも含まれます。上述したベンチ入りメンバーの人数もその対策になりうる一つの案です。

「調整不足では無理をさせない」という考え方は無意味です。試合になって無理をせずプレーする選手などいません。グラウンドに立てば全選手が全力でプレーをしに行きます。そんな球児たちに対し「無理せずに」と言っても意味は成しません。

だからこそ大人である高野連側が、先回りした対策を示していく必要があるわけですが、高野連の機動性はほぼないに等しいのが現状です。何か1つルールを変えるためだけに何ヵ月も、何年もかけてしまいます。

平時ならそれでも良いわけですが、しかし今はコロナ禍。球児の体を守るためにも、もっと先回りした具体策をどんどん投入して欲しいところです。今は会議を重ねている場合ではなく、トライ&エラーでどんどん対策を投入し、良ければ続ける、ダメならやめる、ということを繰り返していくべきではないでしょうか。

球児の体を守るために必要な特別ルール

暑さがまだまだまったく本番ではない7月初旬でも、もう熱中症になる選手が続出しているんです。これが1ヵ月後、2ヵ月の最も暑くなる梅雨明け後ではどうなってしまうのでしょう。

高野連は1年後2年後のことを考えることも大切ですが、今はそれ以上に目先の1ヵ月後2ヵ月後に対する具体的な対策も重視すべきです。そう考えるとやはり、コロナ禍に対する特別ルールはもっと目に見えた具体的な形で必要になってくるのではないでしょうか。

例えばベンチ入りできる人数をプロ野球と同等にしたり、部員が余っている学校から選手をレンタルできるような一時的な特別ルールが必要だと思います。そうしなければ調整不足を解消できない現状では、球児たちの体を守ることは難しいのではないでしょうか?

不正投球が0%にならないメジャーリーグ

最近野球ニュースで、メジャーリーグの不正投球疑惑がスポットを浴びていますね。ほぼすべての投手は不正はしていないと言えますが、でもそれが100%ではないことは確かではないでしょうか。アメリカでは、昔から日本以上に不正投球が行われるケースがあります。

不正を行えないようにする、紛らわしい行為ができないようにするという意味合いでも、ピッチャーが使えるグラブの色には厳しい規定があります。例えばボールの色と被るホワイトやグレーのグラブを使うことはルール上禁止されています。グラブとボールの色が同じだと、紛らわしい行為をしてないかどうかが審判から見にくくなってしまうためです。

ちなみにアマチュア野球の場合は縁取り、レース、縫い糸を除いた革の部分は一色でなければならない、と規定されています。一方女子プロ野球では女子野球人気を高めるという意味合いもあり、柄物であったり、カラフルなグラブを利用することも認められています。

不正投球の種類

ピッチャーの不正投球を防ぐためにいくつかのルールが作られてきたわけですが、しかしそれだけでは100%防ぐことができなかったというのが現状なのでしょう。

ルールブックでは主に以下のようなことが禁止されています。

  • シャインボール:ボールを摩擦してすべすべにしたもの
  • スピットボール:ボールに唾液をつけたもの
  • マッドボール:ボールに土をつけたもの
  • エメリーボール:サンドペーパーでざらざらにしたボール
  • スカッフボール:爪などでわざと傷付けられたボール

とにかく投手は余計なものを所持することが許されていません。例えば怪我をしていても、指に絆創膏を貼って投球することは禁止されています。そしてポケットに入れて良いものはロジンバッグのみです(雨の日)。

ルールを知らない投手は汚れたり濡れたりしたボールをユニフォームでゴシゴシ拭いてしまうことがありますが、これもルール違反です。ピッチャーは手のひら以外でボールを擦ることは禁止されています。

指先をペロっと舐める外国人投手が多い理由

このように明確なルールが設けられているにもかかわらず、例えば日本にやってきた助っ人ピッチャーによく見られるのが、指先をペロッと舐める行為です。ただ、ボールに直接的に唾を付けているわけではないため、日本のプロ野球でもこの行為はスルーされています。しかし間接的に唾がボールに付くということを考えれば、厳密には不正投球にあたります

しかしこの行為は、メジャーリーグで利用されている公式球にも原因があります。メジャーリーグの公式球は日本プロ野球の公式球よりも僅かに大きくて、なめしも甘いため滑りやすいんです。滑ってデッドボールを当てて大乱闘になるよりはマシ、ということもあり、メジャーリーグでは指先を舐める行為は許されているという背景があります。

日本の公式球はなめしがしっかりとしているため、メジャーの公式球のように滑りやすいということはありません。しかしメジャーでプレーしてきた際の習慣なのでしょう、指先をペロッと舐める外国人投手は未だに多いように感じられます。

野球がスポーツである限りは、やはりルールに乗っ取って正々堂々対戦すべきです。ルールの抜け穴を探す暇があるなら、もっと練習しろ!という話なわけです。

ちなみに最近はあまり見なくなっていたのですが、その昔は帽子のひさしの裏に松脂を塗っておいて、そこを触りながら投げる投手たちがいました。もちろん完全な不正投球なわけですが、こういう選手たちはバレないように細心の注意を払っていたと言います。

ホントに、そんなことに注意を払うくらいならもっと頑張って練習しろ!と言いたくなりますよね(苦笑)

記者会見を拒否するという選択をした大坂なおみ選手

今、テニスの大坂なおみ選手が試合後の記者会見を拒否したことが世界的に大きなニュースになっています。大坂なおみ選手の気持ちはよく分かります。ですが個人的には、記者会見を一方的に拒否すべきではなかったのかな、と思っています。

プロテニス界では、試合後の記者会見はルール化されています。これは大会に出場する一つの条件となっているため、やはり一方的な拒否というのはルール違反になってしまい、それに対しペナルティが課せられることは仕方がないことだと思います。

しかし大会運営側も、冷酷にペナルティを課したわけではないので、そこはスポーツファンとしては誤解すべきではありません。大会運営側も大坂選手のサポートをすると申し出てくれているわけで、決してルール違反をした大坂選手を突き放したわけではありません。

僕個人の意見としては、大坂選手は一方的な記者会見の拒否をする前に、運営側と協議し、記者会見を免除してもらう方向で調整した方がよかったのかなと思っています。そうすればここまで世界的問題としてニュースで扱われることもなく、大坂選手のストレスも軽減させられたのではないでしょうか。

日本の野球界にもうつ病予備軍がたくさんいる

大坂選手はうつ病を患っていたのだそうです。うつ病ということであれば、当然記者会見どころか、大勢の前で話すことだって辛いと思います。コート上であればテニスに集中することにより、メンタリティを維持できるのかもしれませんが、しかしラケットをおいた後は、大坂選手もひとりの人間にすぎません。コートでは見せられない弱さだって当然抱えているのでしょう。

うつ病と診断されているのであれば、大会運営側と協議すれば記者会見を免除してもらうことだってできたはずです。そうすれば罰金という形ではなく、賞金の減額という形に留まったり、次戦以降の出場権が危ぶまれることもなかったはずです。

ちなみにスポーツ選手のうつ病は、野球選手にも見られる症状です。特にストイックで、あまり人と話すのが得意ではない真面目な性格の選手によく見られる症状です。そのため野球選手にとっても、大坂選手の状況は決して他人事ではありません。

これは中高でよく見られるのですが、監督による酷い罵声や叱責によりうつ病になってしまう野球部員も少なくありません。そしてそれにより野球から離れてしまう子もかなり多いんです。また、プロ野球選手であっても同様で、現役時代にうつ病を患ってしまった選手は一人や二人だけではありません。

大坂選手の場合は今回は「拒否」という形になってしまったわけですが、これがベストではなかったとしても、拒否するという声を挙げたことは賞賛に値すると思います。

個人的には拒否する前に協議すべきだったと僕は考えるわけですが、しかし拒否をしたということは、もしかしたら協議しても受け入れられなかったのかもしれませんね。その結果、拒否するしか選択肢が残されなかったのかもしれません。

そして選手や保護者が協議の場を求めても、それを受け入れない少年野球や野球部の監督・コーチが日本には数え切れないほどいます。僕も中学時代に、実際そのような監督の下でプレーをした経験があります。このような状況を鑑みると、日本の野球界にはうつ病予備軍がたくさんいると言うこともできるのではないでしょうか?

球速が速くても勝ち投手になれなければ意味はない!

僕は2010年1月以来、プロコーチとしてプロ野球選手のパーソナルコーチングや、小学生から大人まで数え切れないほどのアマチュア選手のレッスンを行ってきたわけですが、球速に関しては「速いに越したことはない」というスタンスで、物凄く速いボールを投げなくても、怪我なく勝てる投手になれればそれで良いと考えています。

プロ野球を目指している選手であれば、高校・大学クラスなら150km前後のボールを投げられるようにするためのレッスンを行なっていきますが、160kmや165kmという、大谷翔平投手クラスの球速は必ずしも投げられなくても良いと考えていきます。その理由はやはり、怪我のリスクが高まるためです。

仮に文句のつけようのない完璧な投球フォームで投げていたとしても、球速が上がれば上がるほど肩肘への負荷は高まり、怪我をするリスクも比例して高くなってしまいます。

165kmを投げられたからといって、100戦100勝できるわけではありません。ロケットの異名をとったロジャー・クレメンス投手でさえも通算勝率は.658なんです。160km以上のボールを投げられても、10試合投げたら3〜4回は敗戦投手になってしまうんです。

それならば体への負荷を減らし、パワーピッチングをしなくても勝てる投手を目指した方がプロ野球には近づくことができます。もちろん球が速いと「球速は天性。コントロールはこれから何とでもなる」と考えるスカウトマンもいるわけですが、そこからドラフトにかかって本当に活躍した投手というのは、数え切れないほどのそのような投手たちの中で、僕の知る限りでは石井一久投手くらいだと思います。

その他の球速だけで制球力がない投手たちは、プロ入り後に怪我をしたり、変化球とのコンビネーションを使えなかったり、ほとんどの投手が鳴かず飛ばずのままユニフォームを脱いでいます。

野球は陸上のような個人種目ではありませんので、170kmを投げられたとしても、チームを勝利に導くピッチングができなければ意味がありません。

110kmを投げられたとしても、小学生は投げるべきではない!

もちろん最低限の球速というのは必要だと思います。プロ入りを目指す高校生・大学生であれば、150km前後は必要ですし、小学生であれば90km以上は投げられた方がいいでしょう。

しかしたまに見かける110kmくらいのボールを投げられる小学生投手たち。僕もそのような小学生投手の情報はある程度は追跡調査をしているのですが、多くの子たちが中学・高校で肩肘を痛めてしまい、中には野球を辞めてしまった子もいました。小学生で110kmを投げられたとしても、結局は怪我で甲子園の夢も、プロ野球の夢も潰えてしまったわけです。

いくら110kmを投げられたとしても、小学生は小学生です。まだ体は出来上がっていないし、その球速を投げた際の衝撃に耐えられる体の強度もありません。ですのでいくら良い投げ方をしていたとしても、その後肩肘を痛めてしまったとしても不思議はないわけです。

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の育成方法は素晴らしいと思います。プロ入り前は超高校級のストレートを投げていたわけですが、プロ入り後は球速は抑えさせ、5年後に165kmの球速を投げても怪我をしない体づくり、フォーム作りを徹底させています。

プロコーチとしての僕の考えは、小学生には、いくら110kmを投げられたとしても投げさせるべきではないということです。110kmを投げさせるのは、体が強くなり始める中学生に入ってからで十分です。

一般的な目安としては、6年生で90〜100km、中三で120〜130km、高三で140〜150kmという感じでステップアップさせていけば、十分プロ野球のスカウトマンの目に留まっていきます。プロ野球選手になりたいのであれば、体を壊すようなピッチングをさせてはいけません。高卒でプロ入りするのか、大卒でプロ入りするのかということを逆算しながら、体の強さに合わせてストレートのアヴェレージを調整していく必要があります。

近年は小中学生でもガンガン筋トレをして目先の球速を追い求めてしまっていますが、怪我をせずに勝てる投手を目指すということを目的にするのであれば、そのやり方は間違いだと断言できます。

やはり一番は、まずは科学的に怪我をしにくい理想的な体の使い方を覚えるべきです。球速はそのフォームと体の強さを手にすれば自然とアップしていきます。逆に球速がアップしないということは、フォームのどこかにおかしな部分があるということです。

小学生の時はボールが速かったのに、中学生になって体が大きくなったら球速が低下してしまったという多数の選手が僕のレッスンを受けにきます。その場合、小学生時代のフォームの動画を見させてもらうと、腕っ節だけで投げているケースが大半です。すると中学生になって手足が長くなると、腕っ節が扱いにくくなってしまい、フォームを崩して球速が低下してしまうケースが多々あります。

そうならないように、やはり投球フォームは科学的に野球動作を学んだ指導者に見てもらうべきです。身近にそのようなコーチがいるのがベストですが、実際にはほとんどいないと思いますので、そのような場合は僕のようなプロコーチから、科学的根拠のあるレッスンを受けていただくのがベストです。

僕の動作改善に関するレッスン内容のすべてには、科学的根拠があります。科学的根拠なしに、経験則だけで生徒さんをレッスンすることは100%ありません。そして科学的根拠があるからこそ、本気でレッスンを受けていただければ誰でも必ず上達することができるわけなのです。

これが本当に悪意のあるドーピング

日本球界では比較的少ないドーピングですが、でも決して0というわけではありません。少し前の出来事ですが、目薬に禁止薬物が含まれていて、意図せずドーピングに引っかかってしまったというプロ野球選手もいました。もちろんこのように悪意がない場合は多めに見てもらえるケースもありますが、しかし国際的に見るとドーピングの罰則は年々重くなっているように感じられます。

僕は個人的にはヒト成長ホルモンなど、完全にパフォーマンスに影響を与える類のドーピングが発覚した場合は永久失格処分に課すべきだと考えています。永久失格と言うと少し厳しいようにも感じられますが、しかし公平性を考えれば決して厳しすぎる処罰ではありません。

意図的なドーピングには2種類の考え方が存在しています。1つは目先の結果を求めてのドーピング。これはまさにプレー中にドーピングをすることにより、目先の長打力や球速をアップさせようとする行為です。

そして2つめ、これこそが僕は最大の問題であると考えているのですが、自らの体を覚醒させるために行うドーピングです。ドーピングを行うと、実際の能力以上のパフォーマンスを発揮できるようになるわけですが、これはドーピングをし続ける必要はないんです。

一度覚醒した体は、再度ドーピングをしなくてもそのパフォーマンスの再現性を維持させることができるです。ドーピングによって体を覚醒させ、より高いパフォーマンスを発揮できるようになったら、あとは時間をかけて体内から禁止薬物を抜いてプレーに戻る、という行為です。これはまさに計画的で悪意のあるドーピングだと言えます。

このようなやり方が可能であるからこそ、僕はドーピング検査は抜き打ちでシーズン中に複数回行い、一度でも完全な結果で検査に引っ掛かったら、永久失格処分とすべきだと考えているわけです。

例えばドーピングをして体を覚醒させたとしても、1〜2年かけて体内から禁止薬物を抜いてしまえばドーピング検査には引っかかることがほとんどない状態で、ドーピングによって得たパフォーマンスを発揮することができてしまうわけです。これでは完全にスポーツとしての公平性を失ってしまいます。

アマチュア選手も気をつけなければならない罠

日本のプロ野球でももちろん抜き打ちでのドーピング検査は行われているわけですが、もう少し頻度を増やしても良いのかなぁとは思います。そしてサプリメントメーカーが数え切れないほど存在するようになった現代においては、アマチュア野球でもドーピング検査を行うべきではないでしょうか。

サプリメントメーカーは信頼できるメーカーばかりではありません。中には選手が知らないうちに禁止薬物を摂取させてパフォーマンスを向上させ、それを売り上げに繋げていこうとするメーカーだってないとは言い切れません。スポーツ界全体で考えれば、実際にそのようなメーカーは過去に多数存在しています。

アマチュア選手としてとにかく気をつけたいのは、アマチュア選手に対して無料でサプリメントを提供してくる無名・新興企業です。高校生・大学生ではその怪しさを見抜くことができず、知らずにドーピングを行ってしまうケースだって考えられます。

例えばとある野球名門校では、いつでも好きな時に飲めるようにプロテインが常備されているらしいのですが、プロテインは普通に購入し、日常的に摂取し続ければなかなかの高額商品です。毎日2〜3回プロテインを摂取すれば、ひとりで普通に毎月1万円以上はかかるはずです。ちなみにプロ野球選手の場合、毎月のサプリメント購入費が5〜10万円になることも普通です。

アマチュアのスター選手が進学したり、プロ入りしたりすると突然活躍できなくなったり、怪我が頻発するケースもよくあるわけですが、このような場合は過去に摂取していたサプリメントとの因果関係も考慮して行かなければならないケースもあるのかもしれない、と言わざるを得ません。もちろん稀なケースであると思いたいのですが。

うまい話には罠がある。この言葉は絶対に忘れるべきではありません。誰でも彼でも疑ってかかるべきだとは思いませんが、少なくともうまい話に対しては疑ってかかる必要はあります。そうしなければ、選手自身が気づかずにドーピングをしてしまう、ということだって考えられますし、実際そのようなケースは数え切れないほど過去にはありました。

そうならないためにもサプリメント系に関しては、信頼できるメーカーのものを、含有されている栄養素をしっかりと自分自身で調べた上で、ちゃんと自分で購入して摂取するようにしましょう。中にはオリンピックでも使用が認められているサプリメントもありますので、そのようなものを選ぶとより安心ですね。

最近よく見かけるモータスのバンド

最近メジャーリーグを見ていると、スローイングアームに黒いバンドを装着しているピッチャーをよく見かけます。これはメジャー30球団中27球団で導入されている、モータス社製の筋疲労値の測定器です。大谷翔平投手も付けていますね。ちなみにモータスは2020年2月に、かの有名なドライヴインベースボールに買収されました。

しかし僕はこのモータスをあまり信頼していません。コンセプトとしては、故障のリスクが高まる前に筋疲労値を見ながらパフォーマンスを抑え、故障を予防していく、というものなのですが、これにより27球団で故障者が目に見えて減っているようには見えません。

エンジニアによると、大谷投手の故障は筋疲労によるものであり、フォームが怪我に影響したという証拠はない、とのことでした。しかし僕は大谷投手のピッチングフォームに欠点がないとは思いません。

速いボールを投げるフォームと、怪我を防ぐことのできるフォームは同時に実現させられます。しかし大谷投手の場合はそれが同時実現させられていません。特にトップポジションへの入り方付近の肩関節の内外旋を見ていくと、決して理想的なフォームになっているとは言えません。

肘を痛めない正しい投げ方は科学的に存在している!

モータスのエンジニアは、少しずつ蓄積された疲労が大谷投手の靭帯を伸ばしてしまったと話していますが、根本的に靭帯に負荷をかけないピッチングフォームは存在しています。そのフォームになっていない限りは、フォームが原因で怪我をしたのではない、とは言い切れないはずです。

現に僕の生徒さんの中には、内側側副靱帯を痛めていた選手も大勢いましたが、動作改善を行うことにより靭帯への負荷を回避し、ほとんどの選手が痛みなく投げられるようになっています。

モータスによって筋疲労値を測定できるようになったことは素晴らしいと思いますが、しかしせっかくドライブインベースボールの傘下となっているのですから、もう少しバイオメカニクスと絡めて見ていっても良いような気もします。少なくとも現時点での大谷翔平投手のピッチングフォームは、肘にまったく負荷がかからないフォームではありません。

モータスのエンジニアが、何を以って大谷投手のフォームに問題がないと結論づけたのかは分かりませんが、肩肘への負荷を軽減できる最高のフォームでないことは確かです。

165kmという球速は本当に魅力的ですが、しかしそんなに速いボールを投げる前に、まずは怪我をせず投げ続けるためのバイオメカニクスを、専門家によってコーディネートしてもらることも必要なのかなぁ、と思った今日この頃でした。