今回のスラッガー養成コラムでは、バレル打法というものについて解説をしてみたいと思います。いわゆるフライボール革命を実践するための技術であり、このバレル打法を身に付けなければ、本当の意味でのフライボール革命的なバッティングはできない、ということになります。フライボール革命とはもちろん、ただフライを打てば良いというわけではないわけです。
バレル打法とはこのスウィングのことを言います
結論から言います。フライボールに革命に必要な数値は、128kph以上のスウィング速度、初速158kph以上の打球速度、24°~33°の打球角度の3つとなります。これらが揃って初めてバレル打法が成り立つ、というわけです。しかしもちろん小中高の選手がこれだけの数字を出すことはできません。出そうとすれば確実にどこかを怪我することになってしまいますので、小中高の選手に関してはこの数字を目指すというよりも、投球に対するバットの入れ方を意識していくべきだと思います。
では投球に対するバットの入れ方とは?投球の軌道に対し、45°の角度でバットを入れていき、ボールの芯の6mm下をバットの芯で打ち、19°の角度でアッパースウィングしていく打ち方を目指してください。すると最もヒットになりやすい打球角度になっていきます。ただし、手でバットをコントロールしてこの角度を付けようとしてもダメです。下半身を適切な動き方にコーディネイト(動作調整)し、できるだけ自然にこの角度になっていくように練習していかなければ、手だけでバレル打法を目指しても成績が向上することはありません。
アッパースウィングはダメと言われ続けた日本野球
僕の打撃指導を受けたことがある方ならもうご存じだと思いますが、僕はバレル打法やフライボール革命という言葉が登場するずっと前から、2010年の時点でもうバレル打法っぽい打ち方を選手たちには指導し続けています。僕の野球塾は2010年1月1日にスタートしたのですが、その時点でもうバレル打法っぽい打ち方を選手たちには伝えていたんです。「っぽい」と書いたのは、まだこの頃は厳密な角度や速度が定義されていなかったため、数値に関してはお伝えできなかったからです。ただし、僕がコーチングさせていただいた動作を今も続けてくれていれば、間違いなくバレル打法が身につく動作になっているはずです。
日本ではとにかく「アッパースウィングはダメ」と指導されることがほとんどでした。僕自身もチームではそのような指導を受け続けました。しかし野球科学が進歩した今、ダウンスウィングのメリットはヒット&ランの時にゴロを転がせることくらいしかないのではないでしょうか。しかしヒット&ランに関してもただゴロを打つというよりは、できれば外野まで飛ばすような打球を打った方が得点力は上がるはずです。
打球速度5%アップで飛距離10%アップ
僕の打撃コーチングを受けてくれた小中高生たちの多くが、年間大会打率4割以上をマークしています。なぜならバレル打法を実践できる下半身主導の打ち方をマスターしたからです。中高となると投手のレベルも上がるため、打率4割でも十分だと思います。しかし投手のレベルが高くはない小学生や草野球の場合は、5割前後打てるようになった選手もいます。中には一年間の大会打率が8割近くになった小学生受講者もいらっしゃいました。
打球速度が5%アップすると、飛距離は10%アップします。ビヨンドなどの複合バットに頼る必要なんてないんです。何度も書きますが、小学生のうちに金属バットや木製バットを使い慣らしておかないと、小学生のうちにビヨンドに慣れてしまうと、中学生以上になってビヨンドが使えなくなった際、まったくヒットを打てなくなってしまいます。道具の質はとても重要です。しかし道具のスペックに頼ってヒットを打とうとしても、技術がなければ必ず成績は頭打ちします。このコラムをお読みになっている方で、果たしてどれくらいの方がバットの芯とスウィートスポットが交差するポイントで、ボールの芯を打つことができているでしょうか?