夏の甲子園が始まろうとするとここ数年よく話題になるのがカット打法ですね。カット打法は1つの技術だとは思いますが、僕個人としてはカット打法に対しては肯定的ではありません。やはり多くの場で議論されている通り、そしてアンパイアが宣告した通り、ヒットを打ちに行かずに投手の球数を増やすことを目的にカットしていくというのは、スポーツマンシップからは逸脱し、フェアではないと思うからです。
投手だけではなく、打者にも球数制限を
高校野球のローカルルールでは、カット打法だとアンパイアが判断した際、警告をしてもまだカット打法を続けた場合、アンパイアはスリーバントを宣告することができるんです。このルールはけっこう昔から存在しているものだったと思うんですが、良いルールだと思います。恐らく数年前にカット打法で有名になった高校球児は、このルールの存在を知らなかったのではないでしょうか?
投手の球数制限が議論される際、必ず机上に乗るのがカット打法なわけですが、投手に球数制限を設けるのなら、打者にもファール制限を設けてもいいと思います。例えば8球ファールになったらスリーバント失敗と同じ扱いにする、という感じで。仮に8球という制限が打者にもあるのなら、投手の球数を増やすためだけのカット打法を戦術として採用する選手もいなくなると思います。
1イニング15球以内が投手の理想
相手投手を疲れさせることは、戦略としては非常に大きなウェイトを持っています。でも球数を投げさせるためにカットし続けるというのは、やはり違うと思います。投手を疲れさせたいのであれば、走者が常に盗塁の仕草を見せたり、打者がセーフティバントの構えを見せて投球後に投手を軽く走らせたり、そのような攻撃に繋がる可能性のある戦術であればフェアなやり方だと思います。
投手の1イニングあたりの理想の投球数は15球です。仮に3ボールで8球ファールで粘られることがあると、それだけで11球になってしまいます。1人の打者に10球以上投げてしまうと、6回90球、7回100球ちょっとという目安がどんどん崩れていってしまいます。連打を打たれたり、四球で自滅しているのならば球数が増えても文句は言えませんが、しかしストライクゾーンの打てるボールをファールエリアに打ち続ける行為は、やはり戦術としてはちょっと姑息かなと感じてしまいます。
カット打法は攻撃という扱いにはならない
そもそもカット打法ができるということは、ある程度のバッティングスキルはあるということであり、フェアゾーンに打ちたくてもファールにしかならないという状況とは異なります。投手のボールが力強くてなかなかフェアゾーンに飛ばせない状況であれば仕方ありませんが、しかし平均的なストライクゾーンのストレートでファールを打ち続けるというのは、これはもはやヒッティングと呼ぶことはできなくなります。
打者の目的は攻撃です。つまりヒットを打ったり、ヒットにならなかったとしても走者を次の塁に進めるバッティングが打者の目的のはずです。しかし投手に球数を投げさせるためのカット打法は攻撃にはなりません。何十球カットしてファールを打ったとしても、走者は次の塁には絶対に進めませんし、得点する機会を拡大させることもできません。例え走者が盗塁をしたとしても、ファールになった時点で走者は前の塁に戻らなければなりませんので。ですのでやはりカット打法というのは上述したルールの存在からも、採用してもいい戦術とは言えないと思います。