人間の目は横に並んで付いています。そのためバッターはどうしても縦の変化に弱くなってしまうのですが、今回のスラッガー養成コラムでは、目は縦でも使える、ということについて少しお話してみようと思います。
上述したように人間の目は横に並んで付いているため、スライダーなどの横の変化には比較的かんたんに対応することができます。しかし逆にフォークボールや、横回転を与えないチェンジアップなど、垂直方向にだけ動くボールを正確に捕らえることは難しくなります。
でも下半身を適切な形で使い、股関節を最大限活用できるようになると、この目を縦で使えるようになるんです。ピッチャーが投げるボールは、ストレートでさえも垂直方向に動きながら飛んできます。つまり勢いが衰えることで、少しずつ落下しながら飛んでくるということですね。ですので目を縦に並べて使えるようになると、縦の変化球だけではなく、実はストレートやカーブも非常に打ちやすくなるんです。
この技術の難易度は少々難しいのですが、下半身の使い方が最適化され、上半身と非軸脚で長いスウィング軸を作ることができ、さらに軸脚側股関節を反対打席方向に前傾させることができると、横に並んでいる目を縦にできるようになります。実際にはだいたい45°前後の傾きになると思いますが、しかしそれでも縦に動いてくるボールを捕らえるには十分な角度です。
実はこの技術、プロ野球選手でもできる選手は少ないのですが、しかしだからと言って小中学生にはできない、ということではありません。下半身の使い方が最適化されていれば、小学生でもできる技術です。あとはこの技術が存在するということを、知っているか知っていないかの問題だけです。
目を縦に並べて使えるようになり、スウィング時にその使い方に慣れることができると、空振りすることがほとんどなくなります。縦の動きが見やすくなる、ということももちろんそうなのですが、この技術ができるようになると、インサイドアウトでしかバットを振れなくなるんです。つまりバットが絶対に遠回りしなくなり、遠回りしないからこそバットを正確にボールにぶつけていけるようになります。
僕のコーチングでは、基礎がしっかりと身についたレベルに達した選手に対し、この技術を伝えるようにしています。これをお伝えできるレベルの選手であれば、ほとんどのケースで打率が.350を下回ることはありません。そして普通に.400を超えていけるようになります。
野球というのは、ただ毎日たくさんバットを振っているだけでは絶対に上手くなれません。ある技術が存在し、その技術を習得するための目的を持っていかないと、素振りがただの筋トレで終わってしまいます。そうならないためにも、このような技術の存在をたくさん知っていく必要があるわけですね。