ヒッティングモーションの一つに「ハンドヒッチ」という用語があります。バットスウィングで「ヒッチしている」というのは、振り始めた時にグリップをグッと引き上げる動作をしているということになります。逆にグリップを引き下げる動作のことを「ドロッピングハンド」と言います。この2つ、果たしてどちらが良いのでしょうか?
ドロッピングハンドの特徴
結論から言うと、それぞれの特徴さえ理解していればどちらでもオーケーです。また、どちらか一方だけでなくても大丈夫です。まずドロッピングハンドに関しては、外国人選手のような強く安定した体幹を持っている場合にオススメです。バットで言えばアオダモよりも、ハードメイプル(もしくは金属バット)がしっくり来る打者にフィットするモーションになるはずです。
イメージとしては、インパクトの瞬間にボールを破裂させられるような強烈かつコンパクトなスウィングができる体幹を持っていると、ドロッピングハンドのモーションで打つことにより、簡単に打球を上げられるようになります。ただしボールの軌道に対してアッパースウィングにしてバックスピンをかけるのではなく、あくまでもボールの面とバットの面を正面衝突させて、弾丸ライナーを飛ばしていく打ち方です。この打ち方で必要なのは体幹の強さと、その強い体幹を使いこなせるしなやかさです。
ハンドヒッチの特徴
一方ハンドヒッチというのは、上述の通りグリップを引き上げての打撃モーションとなりますが、体幹の安定感に頼るというよりは、下半身主導で上半身にうねりを与えていく打ち方にフィットします。いわゆる良い「割れ」を作れているバッターにはハンドヒッチは効果的で、プロを含めた日本人打者の多くにフィットするモーションです。
特上の技術を誇ったバリー・ボンズ
さて、皆さんはかつてサンフランシスコ・ジャイアンツで活躍したバリー・ボンズ選手のスウィングをご覧になったことはあるでしょうか?ボンズ選手の場合は両方です。まず大きくドロッピングハンド動作を行い、その後でハンドヒッチさせていきます。ボンズ選手の場合、体幹の安定感はメジャートップクラスですし、下半身主導のスウィング技術も非常に高いためにこのようなモーションが可能になるわけです。
ボンズ選手のスローモーション動画
ハンドヒッチにしてもドロッピングハンドにしても、注意点はポーズ(動作の一時停止)を入れないことです。ポーズを入れてしまうとそこでエネルギーの流れが止まってしまうため、ポーズを終えた後にもう一度エネルギーを作り直す必要があります。その分バットスウィングが弱くなってしまいます。ようするにポーズが入っていなければ、ハンドヒッチでもドロッピングハンドでも、もしくはその両方でも、タイミングを取りやすければどちらでもオーケーということです。
バットの素材が変わると打ち方も変わる
ちなみに最近のNPBのホームランバッターは、ファンダメンタルポジション(基本姿勢)の段階からドロップしておいて、そこからそのまま振り始めるバッターが多いように見受けられます。もしかしたらアオダモが希少になっている影響で、メイプルやハードメイプルにフィットしたモーションを模索しての結果かもしれませんね。
アオダモのようによくしなるバットと、金属バットの感触に近いハードメイプルのバットとでは、扱い方がまったく異なって来るんです。ミスショットを道具のせいにするのではなく、どんな道具にも技術をアジャストしていけるのが本物の技術を持っている選手です。つまり高価なバットを使わなくても、バットの性格をしっかりと理解し、それを活かす技術が身についていれば、誰でもたくさんヒットを打てるようになるのです。