今回の投手育成コラムでは、改めて股関節の重要性についてお伝えしておきたいと思います。スポーツをする上で、とにかく股関節は最重要関節です。野球でも同様で、股関節を上手く使いこなせない選手はすぐに上達が頭打ちしてしまい、腕力に頼ってプレーをするようになってしまいます。腕力に頼ってもプレーの安定感は増しませんし、故障のリスクも高めてしまうことになります。
股関節は上半身と下半身を繋ぐ最重要関節
僕の個人レッスンを受けたことがある方ならもうご存知だと思いますが、僕のコーチングはとにかく股関節を重視した内容で進められていきます。ピッチング、スローイング、バッティング、フィールディング、ランニング、すべてにおいてです。今まで股関節を使えていなかった選手が、僕のコーチングによって股関節を使えるようになると、パフォーマンスは劇的に向上していきます。学童野球でも大学野球でもそれは同様です。
ではなぜ股関節がそれほどまでに重要なのかと言いますと、股関節は上半身と下半身を繋いでいる関節だからです。つまりいくら脚力を鍛えたとしても、股関節を使いこなせていなければ、下半身で作ったエネルギーはすべて股関節で止まってしまい、結果的に腕力を使って投げるしかなくなってしまうんです。でも股関節を上手く使うことができると、下半身で作ったエネルギーがしっかりとボールリリースまで伝わるようになり、力みなく速いボールを投げられるようになります。
股関節は野球肩や野球肘を防いでくれる
投球動作に於ける股関節は、しっかりと重さが乗せられていないと上手く動いてくれません。つまり体重移動をしっかりとできる脚の使い方をマスターし、それぞれの股関節にしっかりと重さを乗せられる動作にしていかなければ、股関節を上手く使うことはできない、というわけです。そしてコーチングに通ってくださっている方々を見ていくと、股関節に重さを乗せ切れていない選手が大半なのです。なので股関節を使いこなせている選手もほとんどいません。
最終的には股関節を使ってリリースポイントを打者に近付けていくわけですが、ここまでできるようになると、ボールを持っている間に肩肘を大きく使う必要がなくなるんです。つまり野球肩や野球肘にもなりにくくなる、ということです。逆に股関節を使えていなければ、肩肘を使ってボールを前へ送り出すしかなくなり、肩肘への負荷も大きくなり、野球肩や野球肘になるリスクも高まってしまいます。
股関節が動かなければ骨盤も動かない
野球でも骨盤メソッドが広く知られています。この骨盤も、股関節のコンディションが良くなければ動かすことはできません。股関節というのは、骨盤下部と大腿骨を繋いでいる関節のことなのですが、股関節が弱かったり硬かったりすると、骨盤を動かすこともできなくなります。骨盤というのは実は関節で、数ミリ程度左右の骨盤を分離させて動かすことができるんです。これができるようになると、投げていても打っていても運動軸を体の外に飛び出させることができ、股関節を使って鋭く力強く腕を振ったとしても、動作そのものは非常にコンパクトで慣性モーメントが小さくなり、ボールの回転も安定するようになり、ストレートの伸びもアップしていくようになります。
骨盤メソッドを売りにした有名野球塾もありますが、股関節が硬い選手が通っても、そちらの野球塾では最大限の効果は得られないと思います。骨盤メソッドを売りにしている野球塾で高い効果を得るためには、まずは股関節の柔軟性と強度をアップさせてからいくべきです。そうすれば骨盤メソッドを売りにした野球塾で教わることのできる内容を、最大限活かしていけるはずです。
僕のコーチングではとにかく股関節の使い方を最重要視しています。股関節を使えるようになるからこそ、下半身で作ったエネルギーが効率よく上半身に伝わるようになり、投げるにしても打つにしても動作が安定し、短期間で成績アップに繋げることができるんです。例えばノーコン病に悩む小中学生投手が、完投してもせいぜい1〜2個しか四球を出さなくなったというケースが、僕の塾生さんたちの中には数え切れないほどいます。
股関節を制する者が野球動作を制する、そう思っていただいても間違いありません。