ピッチャーのボールがシュート回転してしまうことにはいくつもの種類の原因があるわけですが、今回の投手育成コラムではシュート回転の修正をするために知っておく必要がある、トップポジションの作り方とシュート回転の関連について書き進めてみたいと思います。
トップポジションの形がシュート回転を加える?!
多くの少年野球チームでそう教えられてしまったり、そして市販されている野球教則本にもそう書かれていたりするんですが、トップポジション付近で肩関節を内旋させて、手のひらが外側を向くような形にしてしまう選手が非常に多いと思います。実際そう教わり続けた、という選手も多いと思いますし、僕自身子どもの頃にそのような指導を受けた経験があります。
しかしこの形のトップポジションは怪我のリスクを高めるだけではなく、ストレートをシュート回転させてしまう大きな原因にもなってしまうんです。トップポジション付近で手のひらを外側に向けてしまうと、親指が捕手方向を向く形になります。この形から腕を振りに行ってしまうと、リリース時にも親指が若干捕手側を向いた状態になりやすいんです。そしてこの状態でリリースしてしまうために、ボールにシュート回転が加えられてしまうんです。
投球動作を根本から見直す必要が生じるシュート回転
ちなみにトップポジションを肩関節の内旋状態で作ってしまうと、肘の内側(内側側副靱帯)を痛めやすくなり、さらには肩関節を腕のテコによって動かすような形にもなりやすいため、肩関節も痛めやすくなります。投球動作内ではテコの原理を使うことは非常に重要になってくるわけですが、しかしこの場所で使ってはいけません。
基本的にはシュート回転している時点で、良い投げ方ができていないと判断することができます。シュート回転やスライダー回転は調子の良し悪しで顔を出すものではなく、シュート回転しやすいフォームになっているからシュート回転になってしまうんです。ですのでもしシュート回転がよく顔を出してくる場合は、投球動作を根本から見直す必要があるかもしれません。
様々な弊害を生み出す内旋タイプのトップポジション
さて、もう一点付け加えておくと、トップポジションで手のひらを外側に向けてしまうと、ボールを握った親指が人差し指側にずれやすくなります。ボールの中心から親指が少し人差し指側に移動すると、それだけでボールにシュート回転が加えられてしまいます。そしてさらに大きく人差し指側にずれていくと、今度は縦スライダーの回転が加わってしまいます。
手が小さい小学生は特に親指が人差し指側に来やすいわけですが、もしボールがどうしても失速してしまう場合は、球威が問題なのではなく、縦スライダーの回転が加えられて下に曲がっている可能性も考えられます。トップポジションとは、投球動作の中では最も重要なポジションです。そのトップポジションの作り方を間違えてしまうと、このような様々な弊害が生じてきてしまいますので、注意が必要です。