ストレートの球質(伸び)は回転数だけではなく、回転軸の角度が非常に重要ということを、投手育成コラムでは幾度か書いてきました。どんなに回転数が多かったとしても、回転軸が傾いてしまうとストレートの伸びが向上していくことはありません。ストレートの球質を向上させるためには、回転軸を可能な限り左右まっすぐに、水平にする必要があります。
回転軸は車のシャフトをイメージしよう
車のタイヤをつなぐシャフトをイメージしてください。このシャフトが曲がっていると、タイヤはスムーズに回転することはなくなり、車の性能を活かすこともできなくなります。ピッチャーが投げるストレートも、このシャフトのようにきれいに真っ直ぐになっている必要があるんです。
もちろん完璧に横一文字にすることは難しいわけですが、どれだけそこに近づけられるかが重要なのです。具体的にはこの軸の傾きが5°程度だと、マグナス力というホップ要素を最大限高められるようになり、伸びのある空振りを取れるストレートを投げられるようになります。逆に傾きが10°を超えれば超えるほどマグナス力は低下し、ストレートは失速しやすくなります。
肩関節を使えば使うほど回転軸は傾いてしまう?!
ではどうすればこの回転軸を横一文字にしていけるのでしょうか?その答えは股関節が握っています。ボールを持っている間はほとんど肩関節を水平内転させずに、非軸脚側の股関節の内旋動作だけでボールを加速させられるようになると、バックスピンの回転軸の傾きを最小限に抑えられるようになります。
逆にスローイングアームをメインに使って回転数を増やそうとすると、回転軸は必ず大きく傾くようになり、シュート回転やスライダー回転になってしまいます。そしてシュート回転やスライダー回転が加わってしまうと、これはもうストレートとは呼べなくなりますので、伸びを追求することもできなくなってしまいます。
サイドハンドスローが最強の投げ方?!
僕は常々、股関節を最良の形で使いこなせているサイドハンドスローが最強であると選手たちには伝えています。もちろんサイドハンドに転向しましょう、という話ではなく、あくまでもスポーツ物理学的な話としてなわけですが、サイドハンドスローで股関節を最良の形で使えるようになり、きれいなバックスピンストレートを投げられるようになると、ストレートの伸びとスピードガンの数値を同時に向上させられるようになります。
日本ではなぜか「サイドハンドスロー=良くない投げ方」と認識されることが多いのですが、そんなことはありません。メジャーリーグでも多くのスピードボールピッチャーはサイドハンドスロー、もしくはロースリークォーターで投げています。ビッグユニットこと、世界最強投手だったランディ・ジョンソン投手もサイドハンドスローでしたね。サイドハンドスローは体軸と運動軸を重ねて使いやすくなるため、ボディスピンを最も鋭くしやすいんです。だからこそ股関節を使いこなすことさえできれば、サイドハンドスローが最強の投げ方であると言うことができるわけなんです。