カーブという球種にはいくつもの種類があります。普通のカーブ、タイトカーブ、パワーカーブ、スラーブ、スローカーブ、ドロップなどなど。投げる投手によって変わる十人十色の変化球と言ってもいいのかもしれません。今回はその中でも、ドロップというカーブについて少し書き進めてみたいと思います。
肩肘への負荷が最も小さいドロップ
ドロップとは縦に大きく割れるカーブのことです。岸孝之投手が得意とする球種ですね。ドロップという球種は正しい投げ方で投げることができれば、実はストレート以上に肩肘への負荷を小さく抑えることができるんです。その理由は単純で、トップポジションからボールリリースにかけてのアクセラレーションを半分しか使わないためです。
遅いボール=肩肘への負荷が小さい、とは言い切れないのですが、良い投げ方のドロップに関しては肩肘への負荷は非常に小さくなります。また、ドロップを投げるためには肘を柔らかく使わなければならないため、腕力に頼ったフォームではドロップは投げられないんです。つまりドロップを投げられるということは、肘を柔らかく使った良いフォーム、と判断することもできるわけです。
ドロップの投げ方
ドロップの投げ方は難しくはありません。中指の薬指側の側面を縫い目にかけて、人差し指はやや浮かせ、ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースするだけです。するとボールはすっぽ抜けるようにしてリリースされ、一度やや上に投げ上げられます。しかしドロップにはトップスピンがかかっていますので、投げ上げられてもしばらくするとすぐに下に向かって曲がり始めます。
ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースすると書きましたが、この時重要なのはトップポジションで肩関節がしっかりと外旋されていて、ボールリリースにかけて内旋させながらアクセラレーションを進められているか、という点です。肩関節はトップポジションからリリースにかけては、外旋過程の中で内旋されていき、ボールリリースでニュートラルになります。そしてリリース後に内旋過程の中でさらに内旋されていきます。
この肩関節の使い方でドロップを投げられるようになると、肩肘への負荷はほとんどなくなります。また、上述したように肘を柔らかく使う癖付けを行うこともできるため、ストレートを含めた他の変化球を投げる際も、柔らかい肘の使い方で投げられるようになっていきます。
ドロップから始めるキャッチボール
良い投げ方のドロップは、ストレートよりも肩肘への負荷が小さいため、キャッチボールをドロップから始めることもオススメです。何人かのプロ野球のピッチャーにもこのことを伝えたところ、その中の数名はキャッチボールをドロップから始めるようになりました。そして肘の動きを柔らかくした後でストレートを投げ始めると、ストレートの回転の質も今まで以上にさらに良くなっていきました。
ストレートの鍵はバックスピンの質です。近年はメジャーでエース級の投手たちも、ツーシームよりもバックスピンストレートを重視するようになってきています。そしてドロップを投げられる肘の使い方ができると、そのバックスピンの質を大幅に向上させられるようになるわけです。
ドロップという球種はこのように、メリットがたくさんあります。挑戦しないための理由はありません。仮に試合で使える球種に育っていなかったとしても、日常的にドロップでキャッチボールをすることにより、柔らかい投球フォームを身につけられるようになります。もちろん小学生の野球肘を防ぐ効果もありますので、大人も子供もチャレンジしてもらえたらと思います。