野球肩・野球肘の原因は、これまでも何度も書いてきたように、肩や肘以外の使い方に問題がある場合がほとんどです。今回はその中でも、ボールを握る指について考えて行きたいと思います。
経験の浅い投手のほとんどは、力強いボールを投げるために体に力みを生じさせてしまっています。しかし力みというのは、投手にとってプラスになることは1つもありません。それどころかマイナス要素しかないと考えてください。投手が投げる際に力めば力むほど、ボールの切れは失われていくのです。
そしてその力みは、指先にも大きく影響してきます。つまりボールを強く握ってしまうということ。ボールを強く握っても、強いボールを投げることはできません。逆に軽く握るほど投げるボールには切れが出てきます。ボールは主に人差し指、中指、母指(親指)の3本の指で握るわけですが、この中でも特に親指に力みが生じてしまうと、肩・肘関節がロックされた状態になってしまいます。関節がロックされた状態で投球動作を続けてしまうと、それは当然故障への原因となります。
ボールは、握った手を少し振ったら落ちそうになるほどの軽さで握るようにしましょう。そうすれば親指が原因のロックも解除され、肩・肘の内旋・外旋の自由度も高まり、肩・肘へのストレスが軽減される分、身体機能(骨格のメカニズム)を十分に活かしてボールを投げることができます。そうすれば切れのある、初速と終速の差が小さい投球が可能となります。
さて、話を親指から人差し指と中指に移します。手をリラックスさせた状態で、人差し指と中指をくっつけてみてください。この時、人差し指の頭は中指の爪にかかっていますか?それともかかっていませんか?かかっている場合、人差し指と中指の長さの差は小さいということになり、かかっていない場合、差が大きいということになります。
この差が小さい場合、ボールを握る時に人差し指と中指の間を狭めても(くっつけても)、両指先で均等な力でボールを弾くことができます。ですが差が大きい場合に両指の間を狭めてしまうと、中指でボールを弾く力が強調され、ボールはシュート回転しやすくなってしまいます(意図してシュート回転させるのには問題ありません)。ですので人差し指と中指の長さの差が大きな投手は、両指の間を通常よりも少し広めにしてみましょう。通常は指1本分の幅が目安ですが、指の長さの差が大きい投手は、これを1.5~2本分に広めてみてください。そうすればボールをリリースする際、人差し指と中指が均等の力でボールを弾くことができるようになります。そうすればボールにはきれいなバックスピンがかかりやすくなり、伸びのあるストレートを投げられるようになります。
ちなみに人差し指と中指の長さの差は、左右の手でも異なる場合が多くなります。それは右利きか左利きかで、普段指を使う頻度が左右で異なることが原因として考えられます。
話をまとめると、ボールは人差し指と中指の先だけを使って投げる、という意識付けが大切となります。たまに親指にマメの出来ている投手を見かけますが、これはボールを強く握り過ぎていることが原因です。投手にとってのマメは、人差し指と中指の先にできるのが理想的です。人差し指と中指の間をどれくらいの幅にすればキレイなバックスピンがかかるか、いくつか握り方を変えて投げることで、自分にとってベストな握り方を見つけて行ってください。それが見つかれば力まなくても強いボールを投げられるようになり、力みがなくなることで肩・肘がロックされることもなくなり、故障のリスクを1つ減らすことができます。つまり、良いこと尽くめなわけです。