外発的動機付けの4番目は、社会的動機です。これに関してはかなり細かく分けていくことができるので、1つ1つ順番に解説を進めて行きたいと思います。
① 親和動機
これは人間関係による動機付けのことです。チームメイトとの友情などを通し、自分1人だけではできない辛い練習も、チームメイトと一緒に頑張れば耐えることができるという時などに働いている動機付けです。
② 獲得動機
これはハングリー精神の一種だと言えます。金品などの褒美、金メダルなど、物質的報酬を強く欲することにより働く動機です。強い接近動機として働きますが、獲得動機がなければベストを出せなくなるというリスクもあるため、指導者や保護者は注意が必要です。
③ 優越動機
チームメイトなどの他選手と自分を比べた時、相手よりも優れていたいという思いから生まれる動機です。競争性動機とも言え、達成動機に対する重要な側面を持ち合わせます。いわゆる良いライバルは良い選手を育てるということになります。
④ 承認動機
活躍することで周囲に褒めてもらいたいために頑張るという動機です。子どもに限らず、人は誰でも褒めてもらいたいものです。ですので良いプレーをした選手は、選手が褒めてもらいたいと思っている時に的確に褒めてあげるようにしましょう。なおこの承認動機は資格や賞などに対しても働きます。
⑤ 顕示動機
目立ちたがり屋や、スタンドプレーをする選手に強く働く動機です。周囲に対し自分を印象付けたいという気持ちから生まれるものですが、承認動機とは異なります。顕示動機の場合、社会的に優れているかどうかは関係なく、とにかく目立ちたいという気持ちから派手なプレーをしたり、派手な格好をしたりします。つまりそれが良いプレーであるかどうかは別として、自分が派手に目立てれば顕示動機は満たされます。
⑥ 達成動機
プレーを、より高いレベルで行いたいという欲求から生まれるものです。例えば誰も打てない変化球を投げたり、誰も到達できない記録を達成したりと、競技での成功、勝利に対して働く動機です。達成動機は、優越動機や承認動機との密接な関係を持ちます。なおこれは社会的達成水準の高さに対し働くもので、社会的価値に対して働くものではありません。つまり、記憶よりも記録に残りたいという感情に対し働くものだと言えます。そしてこれは外発的動機付けであると同時に、内発的動機付けとしても考えることができます。
⑦ その他の社会的動機
その他には「相手を叩きのめしたい」という攻撃動機、「相手を屈服させたい」という支配動機、「あんなチームに負けたくない」という屈辱回避動機などがあります。
野球を上手くなるためには、自発的にモチベーションを上げていくための内発的動機が必要不可欠です。その内発的動機を高めるためには、まず外発的動機を内発的動機につなげていくことが必要になります。つまり内発的動機とは、外発的動機の延長線上にあるのです。外発的動機なしに内発的動機は考えられないので、指導者は始めから自発的行動、内発的動機を求めるのではなく、まずは強制的行動、外発的動機によって上手く選手の内発的動機を引き出してあげることが大切になるわけです。