ピッチャーズプレートを蹴ってしまうと球質が低下する?!
「投げる時にプレートを強く蹴りなさい」と指導されるコーチがいらっしゃいます。これが正解なのか不正解なのは受け取る側である選手の問題です。しかし僕がオンラインでレッスンをする際は、ピッチャーズプレートは蹴らないように指導しています。
なぜ僕が蹴らないように指導をするかと言うと、プレートを蹴る動作を入れてしまうと軸にブレが生じ、制球力や球質が低下しやすくなり、さらには肩への負荷が大きくなってしまう場合があるためです。今回のコラムでは、このあたりのお話について解説をしていきたいと思います。
プレートを蹴ってエネルギーを作っても実は使い切れない?!
以前のコラムで、腹筋が弱いことで、下半身で生み出したエネルギーが肩に集中し、肩を故障してしまう可能性があるということを書きました。今回の話も、それに似たお話です。
必要以上のエネルギーを投球動作の中で生み出してしまうと、どうしても使い切れないエネルギーが出てきてしまいます。そのエネルギーが肩に集中してしまうことで、肩はエネルギー過多状態となってしまい、そのストレスによってローテーターカフ(肩にある4つのインナーマッスル)の故障を招いてしまいます。ちなみにフォロースルーや投球後に身体がグラブ手側に流れる動きは、多少余ってしまったエネルギーを開放するための動きでもあります。
実際にはプレートを蹴ることができる段差などない?!
そもそもプレートを蹴らなくても、強いボールを投げることは可能です。プロ野球のエース級のピッチャーの中で、プレートを蹴っているピッチャーはほとんどいません。逆にプレートを蹴っているピッチャーを探すと、だいたいが先発として安定した結果が出せずにいる、制球力に乏しい豪腕タイプと呼ばれるピッチャーです。そしてそういうピッチャーの多くは、大きな肩や肘の故障を経験しています。
そしてもう一つ付け加えておくのなら、通常ピッチャーズプレートと土の部分には蹴ることができるような段差はありません。草野球のすぐに掘れてしまうような、しっかりと作られていないマウンドならまだしも、公式戦が行われるような野球場では実際にプレートを蹴ることができる段差はないはずです。
長い目で見るならば、プレートは蹴らずに済む良いフォームを身につけよう
プレートを蹴ってさらなる反力エネルギーを生み出してしまうと、それはボールを投げる作業だけでは使い切れないのです。大人でもそれにより肩を壊したり、制球力を乱してしまうのですから、子どもならなおさらです。さらにプレートを蹴る動作により、軸に大きなブレが生じてしまいます。このブレが生じてしまうと、肩に負荷がかかったり、制球が乱れてしまったり、ボールの回転の質が低下してしまいます。
プレートを蹴ると、その場限りの球速アップは得られるかもしれません。しかし長い目で見るならば、プレートを蹴らなくても、もっと自然な形で投球に対するエネルギーを生み出せる、選手個々の体格・体形に合ったピッチングモーションを作ることができるのです。