M号や硬式球に変わった直後は注意が必要!
野球というスポーツでボールを投げる際、肘が下がってしまうとまさに百害あって一利なしという状態になります。肘が下がることで球威は衰え、変化球にも切れがなくなり、肩や肘を痛めるリスクも高まります。そのため投手も野手もポジション問わず、ボールを投げる際は誰もが肘が下がらないように気をつけています。しかし実際にはどうしても下がってしまいます。では、なぜ肘は下がってしまうんでしょうか?
まず考えられることは、筋力不足です。これは小中学生の野球少年・少女によく見られるケースなのですが、筋力が弱いために、ボールの重さによって肘が下がってしまうんです。軟式野球では小学生はJ号、中学生はM号となり、硬式野球では小学生からすでに、大人が使う硬式球と大差ないボールを投げることになります。
J号ならまだ軽いため、筋力不足による肘下がりは目立たないのですが、中学1年生のM号に変わった直後や、硬式野球を始めた直後などは、やはりボールの重さに負けて肘が下がってしまう選手をよく見かけます。
投球時に肘が下がってしまうメカニズム
大人の選手にとってもM号や硬式球が重く感じられることが多々あると思います。。筋力不足だけではなく、疲労もその1つの原因となります。先発ピッチャーであれば、ボールが100球を越すともはや疲れを隠すことはできません。下半身に粘りが見られなくなり、重心をしっかりと沈ませて投げられるなくなることで、相対的に肘が上がらなくなってしまいます。でもこの場合は、走り込みや筋トレによって改善させることが可能です。要は筋力やスタミナをつければ良いということです。
しかしここで話を終わらせてしまってはプロコーチの話としては物足りないですよね。ということで、更に話を深めていきましょう。と、その前に、以下の2つの動作を行ってみてください。ボールは持たず、ただ動くだけで大丈夫です。
①ボールをキャッチャーフライのように投げ上げる動作
②ボールを地面に叩きつける動作
どうですか?この2つの違いに気付きましたか?まず①の動作について。ボールを投げる際、肘は肩よりも下にあったと思います。逆に②のようにボールを地面に叩きつける動作では、肘は肩線分(両肩を結んだライン)の延長線上にあったと思います。これこそが、肘が下がってしまうメカニズムなのです!
例えばピッチャーの場合。ボールに力がなかったり、疲れて来たりすると、ボールはお辞儀をして低めのボールゾーンにしか行かなくなります。するとピッチャーは無意識的でも意識的でも、ボールを上に向けて投げ上げることにより、お辞儀してしまうボールの帳尻を合わせようとするんです。ボールを上に投げるためには、肘は下から出さなくてはなりません。つまり、肘は必ず下がるということです。
肘が下がってきたら「上げろ」と言うのではなく、休ませる!
野手の場合もそうです。例えば小学生の三塁手や遊撃手は、一塁までの距離が遠いためにどうしてもボールを投げ上げようとしてしまいます。その結果肘が下がってしまい、肩や肘を痛めてしまう結果となってしまいます。J号ならまだしも、硬式球であればなおさらです。
このような場合、重要になってくるのは監督やコーチの選手を見る能力です。良い監督やコーチであれば、子どもが無理をし出したのがすぐにわかります。そういう時はすぐにピッチャー交代をさせたり、野手を入れ替えたりの処置を行うはずです。ですが子どもが無理をし出しているのに気付かずにプレーをさせてしまった場合、長期のリハビリを要する故障を引き起こしてしまうことが多々あります。
ボールを投げ上げてしまうことへの対処法としては、キャッチボールなどで、ワンバウンドの強いボールを投げさせる練習をさせるのは効果的です。意識してワンバウンドを投げさせることで、肘は自然と良い高さまで上がっていきます。もちろん上がり過ぎは、下がっているのと同様に故障のリスクが出てきますが、しかし常に上げ癖を付けさせておくことで、ボールを投げ上げようとする意識は薄められるはずです。あとは指導者がしっかりと選手を観察し、投げ上げ出したらすぐに休ませてあげることが大切です。