打球速度を上げるようにと指示を出した石井一久監督
2020年12月、来季から楽天イーグルスの監督になった石井一久監督兼GMが、今季優勝したホークスに勝つため打撃陣に打球速度の向上を注文しました。打球速度を上げるという作業は、もちろん打撃成績の向上に直結しますので、この注文は尤もなものだと思います。
目安は150km以上で、軸を使うことによって打球速度を上げるということを、石井監督は指示されたようです。メジャーリーグには時速190km以上の打球を飛ばすバッターもいるわけですが、日本人選手であれば150km以上のアヴェレージを出せれば結果はかなり変わってくるのではないでしょうか。
まず日本のプロ野球の球場はほとんどが人工芝です。そのため天然芝よりもゴロの球足はかなり速くなりますし、失速もしにくくなります。すると内野手の間をあっという間に抜けていき、ヒットになる確率も高くなりますし、打球速度が速ければ速いほど、野手のエラーも誘いやすくなります。
これが天然芝や土のグラウンドの場合はゴロの球足はすぐに失速してしまいます。メジャーリーグはほとんどの球場が天然芝です。そのためゴロを打つよりも、フライを打ち上げた方がヒットになる確率が高くなり、その結果フライボール革命へと繋がっていきました。
軸を使って打球速度を上げる!でも軸ってどこ?
さて、石井監督は軸を上手く使うことによりスウィング速度を速め、打球速度を上げて行くという形で考えているようです。これに関してもまったくその通りで、軸を上手く使うことができなければ、スウィング速度を上げることはできません。
では軸とは?ちなみに軸足は軸としては機能しません。軸足は、軸を回すための最初の歯車の役割を担います。英語では軸足のことを pivot foot (回す足) と言い、axis foot (軸となる足) とは言いません。日本語で考えると間違えやすいので注意が必要です。
じゃあ軸はどこになるかと言うと、上半身と非軸脚を結んだラインです。右打者なら上半身と左脚を一直線に結んだラインで、左打者なら上半身と右脚を結んだラインがバッティングの軸として機能します。
軸というのは長くて真っ直ぐになっているほど良い形で機能させることができます。逆に短かったり、真っ直ぐじゃなかったりすると軸としての機能は大幅に低下し、スウィング速度が速くなることもありません。
体重移動をすると軸は折れ曲がり、短くなる!
日本では、小中学生という野球の基礎を学ぶべき世代の99%以上で体重移動をする打ち方を、勉強不足の大人たちにより教え込まれてしまいます。しかしこれは筒香嘉智選手が警鐘を鳴らしているように、正しい打撃技術ではありません。
体重移動をするウェイトシフトという打ち方は、頭の位置が必ず捕手側から投手側に移動し、目線がブレてしまいます。そして体重移動をすると、上半身と非軸脚を一直線にしてバットを振ることも物理的に不可能になってしまいます。
すると上半身だけしか軸として使うことができなくなり、下半身の力を最大限バットスウィングに活かして行くこともできなくなります。石井監督は非常に理論的な方なので、このあたりのバイオメカニクスもしっかりと理解された上での今回の指令だったのだと思います。それにイーグルスにはウェイトシフトではなく、ステイバックを習得している浅村栄斗選手という素晴らしいお手本もいます。
バッティングの軸はステイバック打法でこそ活かされる!
上半身と非軸脚を一直線にして、軸を長くして軸の動きを安定させスピードアップさせるためには、ステイバックという技術を身につける必要があります。僕は2010年1月に野球塾を開講して以来、小学生から草野球、プロ野球選手たちにパーソナルコーチとしてステイバック打法の指導をし続けています。だからこそ僕の生徒さんやクライアントの皆さんは、頑張ってくれた方はほとんど100%打撃成績の向上に成功しています。
しかし上述したように、日本の小中学生の野球チーム、いえ、それだけではなく高校野球も大学野球もほとんど変わらないのですが、日本では体重移動をする打ち方ばかりを教え込まれてしまいます。そのためプロ野球選手であっても軸を長くして使うことができないバッターばかりです。
軸足は、軸を回すための最初の歯車だと上述しました。ステイバック打法で打てるようになると、まさに軸足を pivot foot として利用できるようになり、軸も長く真っ直ぐになり、人体力学的にも最も力強く、最も速いバットスウィングを実現させられるようになります。
パパママコーチ、野球チームの監督・コーチにこそ通ってもらいたい野球塾
ちなみに浅村栄斗選手、坂本勇人選手、中村剛也選手などなど、ステイバック打法を習得しているプロ野球選手も増えてきていますが、実は彼らもプロ入り直後はステイバックではなく、ウェイトシフトで打っていました。しかし僕のようなパーソナルコーチと契約することにより、ステイバック打法を科学的に学び、身につけ、今日の好成績に至っています。
日本では、プロ野球選手であってもパーソナルコーチと契約をしなければステイバックを適切に学ぶことができないんです。これが小中学生のアマチュア野球なら尚更で、筒香選手がそれに対し警鐘を鳴らしていることにも十分頷くことができます。
一般的に野球塾は、野球をやっている子どもたちや草野球選手が通う場です。しかし僕はお父さんコーチやボランティアコーチ、野球部の監督・コーチにこそ野球塾に通って、野球動作を科学的に学んでもらいたいと願っています。僕自身もずっと、お子さんの練習をサポートされているパパママコーチにオンラインで野球の本当に正しい指導法を毎日レッスンさせてもらっています。
単純な話、例えばチームのコーチ1人が僕のオンラインレッスンで科学的に野球動作を学べば、そのチームの子たちはもう野球塾に通う必要がなくなるわけです。僕に教わっているそのコーチが、チームの選手全員にそれを伝えてあげれば良いわけなので。
ということで今回は、石井一久監督の打球速度を上げる試みについての解説をしてみました。2021年はイーグルス打線から目が離せそうにありませんね!楽しみです!