野球というのは本当に緻密なスポーツです。いくら一生懸命練習をしていても、大雑把に練習をしてしまっては本当に良い選手になることはできません。では一体どれくらい緻密なパフォーマンスを発揮しなければならないのでしょうか?今回は数字を使って、打球をより遠くに飛ばす方法を解説してみたいと思います。
日本では今だに「上から叩け」という打撃指導が行われています。筒香嘉智選手があれだけ声高に伝えてくれているにも関わらず、「上から叩け」という指導をやめようとしない指導者が大勢います。このような指導者は、自分の指導が間違っていたということを知りつつも、間違いを認めたくないために、その間違った指導を正当化しようとしているのかもしれませんね。
ボールを遠くに飛ばすためには、アッパースウィングでボールを打っていくことを必要です。アッパースウィングといっても、これはボールの軌道に対してではなく、地面に対するアッパースウィングです。スタートから順に説明をしてみましょう。
まずバットは、ボールの軌道に対し上45°から入れていきます。この角度で入れられた時、ボールのスピンが最大限増えやすくなります。そして上45°からどこに入れるかというと、ボールの中心から6mm下がったところに入れていきます。入れるタイミングは、バットスウィングの軌道が一番低くなったポイントです。
ボールの中心から6mm下にバットを入れたら、今度は地面に対して19°の角度でバットを振り上げていきます。45°、6mm、19°、この3つの数字を揃えられた時、打球のバックスピンは最大限増えやすく、そして遠くにボールを飛ばすために最適な角度で打球を上げていくことができます。
ただし、通常の選手にコーチがこのような数字を伝えても、選手はなかなか理解することはできません。ですのでコーチが、上記のパフォーマンスに近づけるように、選手のモーションをコーディネイトしてあげる必要があるわけです。僕のコーチングではまさに、小学生からプロ選手まで、そのような流れで指導を行なっています。ただ、ある程度数字を理解できる年代や、プロ選手が相手の場合は、先にガッツリと数字を伝えてしまうこともあります。そこは選手のレベル次第ということですね。
木製バットのスウィートスポットは2mm程度しかありません。バットの芯と2mmしかないスウィートスポットが交差するポイントのみを使って、45°、6mm、19°という数字に近付けていく必要があります。ね?野球って緻密なスポーツだと思いませんか?
ちなみに打球が20°〜30°の角度で飛び出した時、長打率はもっとも高くなります。これが40°を超えてしまうとほとんどヒットにはなりません。逆に0°未満の角度、つまりゴロになった場合、外野までボールが転がったとしても長打になる確率はほとんどありません。
ここ2〜3年、しきりにフライボール革命という言葉が使われていますが、僕はこの言葉が誕生するずっと前、プロコーチに転職した2010年1月から打率・飛距離をアップさせるためには打球を最適な角度で上げていくことが大切、ということをコーチングし続けています。7〜8年前、まだフライボール革命という言葉が誕生していなかった頃に僕のコーチングを受けた選手たちは、きっと今頃「Coach Kazが言っていたことは正しかった!」と改めて確信してくれていると思います。久しぶりに会ってみたいな、その頃に指導した選手たちに。