強い打球を打って飛距離を伸ばすためには、バットスウィングを速くしていく必要があります。パワーとはスピード×重量ですので、同じ重さのバットであれば、スウィングスピードが速いほどパワーが増してジャストミートした際の飛距離がアップするということになります。
スウィングスピードをアップさせるために必要なことやコツは多数あるわけですが、今回はその中でaもバットを振る際の軌道に注目してみたいと思います。
- バットをインパクトゾーンまで直線的にダイレクトで振り下ろしていく
- スキーのジャンプ台のような曲線を描いてバットを振っていく
- グリップを一度下に下ろしてからL字でバットを振っていく
上記の1〜3で、どの振り方がバットスウィングを一番速くできると思いますか?一般的には1の形でトップからインパクトゾーンに向けて、直線的に最短ラインでバットを振っていく指導がなされていると思います。上から下に向けて叩きつけて打つ形などは、まさにその最たる典型です。
上半身を鍛え上げた南米選手は、3番の形で打っている選手も多いように見えます。特に前回のWBCでチャンピオンになったドミニカ共和国の選手はこの形が多いのではないでしょうか。その次に南米選手で多いのは、フライングエルボーからの2番の形でのスウィングだと思います。
結論を言うと、バットスウィングが速くなりやすいのは2、3、1の順番です。つまり1番のバットを上から直線的に最短ラインで振っていく形は、スウィングスピードが最も速くならない振り方なのです。しかし日本ではこの形での指導しかほとんど行われていません。特に少年野球では構えた時点から脇を締めて上から下に叩く、という指導がほとんどではないでしょうか。
軸足側の股関節を使ってスキーのジャンプ台の曲線を描くようにバットを振るようにと指導している少年野球指導者も、もしかしたらどこかにいらっしゃるのかもしれませんが、わたしはまだ出会ったことがありません。
ではなぜ最短ラインで直線的に振り下ろすとスウィングスピードは落ちてしまうのでしょうか?答えは非常に簡単です。最短ラインで振ってしまう分、バットを加速させられる距離が短くなってしまうためです。加速距離が短いので、加速する前にバットを振り終えてしまうのです。
しかしスキーのジャンプ台のような緩やかな曲線を描いてバットを振ることができると、加速距離を十分に得られるようになります。そして曲線が緩やかなため、その曲線によってエネルギーの進行が阻害されることもありません。そのためバットを十分加速させた状態でインパクトを迎えられるようになるわけです。
ちなみに3番の形の場合も加速距離は稼ぐことができるのですが、曲線ではなく角を描くような軌道になってしまう分エネルギーがスムーズにインパクトまで向かいにくくなり、2番に比べるとスウィングスピードは劣ります。ですので体幹に絶対的な安定感があり、その体幹を使った鋭いボディスピンによってバットスウィングを速められるレベルにある選手でなければ、3番の打ち方では安定した成績を残すことは難しいと思います。
エネルギーをスムーズに進め、スピードアップさせていくという物理学はピッチングにも同じことが言えます。ピッチングもバッティング同様、股関節を上手に動かして滑らかな曲線を描くように動作していくと、スピードアップしやすくなります。ピッチングもバッティングも、スピードアップを目指すためにはやはり股関節が重要なわけなのです。