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野球肘

助走をつけられる野手の肩への負荷は確かに小さい

時々、野球肩野球肘はピッチャー以外は心配いらないと勘違いされている親御さんがいらっしゃいます。「肩肘を痛めないようにうちの子にはピッチャーはやらせない」と考えている親御さんも一定数いらっしゃるようですが、これは間違いです。

確かに球数という面を考えればピッチャーが一番肩肘を痛めるリスクが高いわけですが、しかし他のポジションであってもキャッチボールからノック、ボール回しなどの練習をトータルで考えると、かなりの球数になっていきます。

ベースボールの物理学

僕の場合はある日突然肩に痛みが走りました

僕は高校の入学式の前日に肩関節胞を損傷するという酷い野球肩になり、ボールを投げられなくなってしまったわけですが、これは本当に痛かった。右手では歯磨きさえもできないくらい痛かった😭

僕の場合は、痛みに関しては急に出ました。肩関節胞の損傷そのものはすでに中学時代からあったはずなのですが、それが痛みとなって出てきたのは高校の入学式の前日が初めてでした。そして僕の場合に関しては、痛みが出た時はもう手遅れで、手術をしてもまたちゃんとボールを投げられるようになるかは分からない、という診断でした。

野球肩に苦しんだ中学生投手

2年連続で野球肩を経験した中二のシニアリーグ選手

もう5年前の話です。ある中学生投手とお父さんが僕のレッスンを受けるために連絡して来てくださいました。この子はまだ中学2年生でしたが185cmあり、公式戦での最高球速も124kmで、将来を嘱望されたシニアリーグのエースピッチャーでした。

しかし中学に入ってからは2年続けて肩を痛めてしまい、2年続けて3〜5ヵ月の間ノースローで過ごすことを強いられていました。お父さんのお話によると、シニアリーグの監督に投げ方を直されてから痛むようになったとのことでした。

踵の怪我が野球肩につながった可能性

中学生になると、少しずつ野球肩の兆候が出始めました。

実は中学二年生の秋に体育の授業で踵にヒビが入るという怪我をしてしまったのですが、その完治から少しずつ投球フォームが崩れて行きました。すると学年が上がっても思いのほか球速が伸びなくなり、中三での最速は124kmでした。

プロ野球選手を夢見て毎日練習を続けた小学生時代

子どもの頃、僕は同級生の多くと同じようにプロ野球選手を夢見ていました。当時僕は西武ライオンズの渡辺久信投手に憧れていて、球場でサインをしてもらったり、投げ方を教えてもらったこともありました。いつか自分もライオンズに入って、渡辺久信投手とチームメイトになることが小学生の頃の僕の夢でした。

野球肩は野球肘よりも原因が複雑

野球肩の原因は、野球肘よりも複雑だと言えます。例えばどんなに良い投球フォームで投げていたとしても、使っているボールの質や球数という外的要素によって痛めてしまうことも多いんです。

NPBとMLBのボールを比べるだけでも、MLBの公式球はNPBの公式球よりも僅かに大きくて僅かに重く、革のなめしも甘いため滑りやすいんです。NPBの滑りにくい公式球に慣れている選手がMLBのボールを投げるとすごく滑りやすく感じるため、ボールを握る力を僅かに強くしてしまいます。すると肩関節の内外旋が僅かに浅くなってしまい、肩関節のどこか1ヵ所に負荷が集中してしまうことがあるんです。そしてもちろん肘への負荷も高まってしまいます。

野球肩野球肘の治し方

あらためまして、自己紹介

はじめまして。僕のことは気軽にカズコーチと呼んでください。僕は2010年1月から野球専門のプロフェッショナルコーチとして、プロ野球選手の動作改善や自主トレサポート、データ分析をしたり、野球選手を支えるスポーツ外科の先生、理学療法士、トレーナーへの動作改善に関するテクニカルサポート、そして子どもたちが肩肘を痛めないように投げ方の個別レッスンを行っています。

よく「野球が好きで空いた時間でコーチをしている」と思われることもあるんですが、僕の場合はコーチを100%本業にしています。そして他野球塾のコーチたちよりも、はるかに多く野球動作の科学について勉強・研究をしてきました。

球速が速くても勝ち投手になれなければ意味はない!

僕は2010年1月以来、プロコーチとしてプロ野球選手のパーソナルコーチングや、小学生から大人まで数え切れないほどのアマチュア選手のレッスンを行ってきたわけですが、球速に関しては「速いに越したことはない」というスタンスで、物凄く速いボールを投げなくても、怪我なく勝てる投手になれればそれで良いと考えています。

プロ野球を目指している選手であれば、高校・大学クラスなら150km前後のボールを投げられるようにするためのレッスンを行なっていきますが、160kmや165kmという、大谷翔平投手クラスの球速は必ずしも投げられなくても良いと考えていきます。その理由はやはり、怪我のリスクが高まるためです。

仮に文句のつけようのない完璧な投球フォームで投げていたとしても、球速が上がれば上がるほど肩肘への負荷は高まり、怪我をするリスクも比例して高くなってしまいます。

165kmを投げられたからといって、100戦100勝できるわけではありません。ロケットの異名をとったロジャー・クレメンス投手でさえも通算勝率は.658なんです。160km以上のボールを投げられても、10試合投げたら3〜4回は敗戦投手になってしまうんです。

それならば体への負荷を減らし、パワーピッチングをしなくても勝てる投手を目指した方がプロ野球には近づくことができます。もちろん球が速いと「球速は天性。コントロールはこれから何とでもなる」と考えるスカウトマンもいるわけですが、そこからドラフトにかかって本当に活躍した投手というのは、数え切れないほどのそのような投手たちの中で、僕の知る限りでは石井一久投手くらいだと思います。

その他の球速だけで制球力がない投手たちは、プロ入り後に怪我をしたり、変化球とのコンビネーションを使えなかったり、ほとんどの投手が鳴かず飛ばずのままユニフォームを脱いでいます。

野球は陸上のような個人種目ではありませんので、170kmを投げられたとしても、チームを勝利に導くピッチングができなければ意味がありません。

110kmを投げられたとしても、小学生は投げるべきではない!

もちろん最低限の球速というのは必要だと思います。プロ入りを目指す高校生・大学生であれば、150km前後は必要ですし、小学生であれば90km以上は投げられた方がいいでしょう。

しかしたまに見かける110kmくらいのボールを投げられる小学生投手たち。僕もそのような小学生投手の情報はある程度は追跡調査をしているのですが、多くの子たちが中学・高校で肩肘を痛めてしまい、中には野球を辞めてしまった子もいました。小学生で110kmを投げられたとしても、結局は怪我で甲子園の夢も、プロ野球の夢も潰えてしまったわけです。

いくら110kmを投げられたとしても、小学生は小学生です。まだ体は出来上がっていないし、その球速を投げた際の衝撃に耐えられる体の強度もありません。ですのでいくら良い投げ方をしていたとしても、その後肩肘を痛めてしまったとしても不思議はないわけです。

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の育成方法は素晴らしいと思います。プロ入り前は超高校級のストレートを投げていたわけですが、プロ入り後は球速は抑えさせ、5年後に165kmの球速を投げても怪我をしない体づくり、フォーム作りを徹底させています。

プロコーチとしての僕の考えは、小学生には、いくら110kmを投げられたとしても投げさせるべきではないということです。110kmを投げさせるのは、体が強くなり始める中学生に入ってからで十分です。

一般的な目安としては、6年生で90〜100km、中三で120〜130km、高三で140〜150kmという感じでステップアップさせていけば、十分プロ野球のスカウトマンの目に留まっていきます。プロ野球選手になりたいのであれば、体を壊すようなピッチングをさせてはいけません。高卒でプロ入りするのか、大卒でプロ入りするのかということを逆算しながら、体の強さに合わせてストレートのアヴェレージを調整していく必要があります。

近年は小中学生でもガンガン筋トレをして目先の球速を追い求めてしまっていますが、怪我をせずに勝てる投手を目指すということを目的にするのであれば、そのやり方は間違いだと断言できます。

やはり一番は、まずは科学的に怪我をしにくい理想的な体の使い方を覚えるべきです。球速はそのフォームと体の強さを手にすれば自然とアップしていきます。逆に球速がアップしないということは、フォームのどこかにおかしな部分があるということです。

小学生の時はボールが速かったのに、中学生になって体が大きくなったら球速が低下してしまったという多数の選手が僕のレッスンを受けにきます。その場合、小学生時代のフォームの動画を見させてもらうと、腕っ節だけで投げているケースが大半です。すると中学生になって手足が長くなると、腕っ節が扱いにくくなってしまい、フォームを崩して球速が低下してしまうケースが多々あります。

そうならないように、やはり投球フォームは科学的に野球動作を学んだ指導者に見てもらうべきです。身近にそのようなコーチがいるのがベストですが、実際にはほとんどいないと思いますので、そのような場合は僕のようなプロコーチから、科学的根拠のあるレッスンを受けていただくのがベストです。

僕の動作改善に関するレッスン内容のすべてには、科学的根拠があります。科学的根拠なしに、経験則だけで生徒さんをレッスンすることは100%ありません。そして科学的根拠があるからこそ、本気でレッスンを受けていただければ誰でも必ず上達することができるわけなのです。

肘を先行させると野球肘になりやすいという考えは間違い

近頃アーム式の投げ方(カタパルト投法)が見直されているという話をよく耳にします。その理由としては、肘を先行させて投げると肘を痛めるリスクが高くなるからだそうです。しかしこの考え方は完全に間違いで、野球動作を科学的に勉強したことがない人たちの思い込みです。

肘を先行させて投げると肘への負荷が高まる、とだけ書くとこれは正しいとは言えませんが、確かに間違いではありません。しかし言い方を変えると、正しい肘の先行のさせ方をすれば肘に負荷はかからない、と言えます。肘を先行させると野球肘になりやすいと話す指導者は、間違った肘の先行のさせ方しか教えることができない人である、と判断して間違いないと思います。

肘を先行させないためにあえてアーム式で投げる、もしくはアーム式を直さない、というのは非常に危険なことです。肩関節や肩甲骨の可動域が広ければ広いほど、アーム式の投げ方では肩にかかる負荷が大きくなります。また、肩関節の内外旋の順番が間違っていれば、同時に肘へのストレスも高まります。

じゃあ可動域が狭ければアーム式でも良いのか、となると、体が硬ければそれはそれで怪我につながりますので、アーム式云々ではなく、野球をされるのであればスポーツを楽しむのに最低限必要な柔軟性は身に付けておくべきです。

アーム式では正しいオーバーハンドスローはできない?!

そしてアーム式の投げ方でオーバーハンドスローで投げようとすると、多くのケースで肘が高くなり過ぎてしまいます。投球時に肘が下がるのは良くない、ということはみなさんよくご存知だと思いますが、上がり過ぎても同じように良くないんです。

右投げであれば左肩・右肩・右肘を結んだ線分が一直線になっている必要があります。左投げなら右肩・左肩・左肘です。アーム式のオーバーハンドスローでこれを実現させようとすると、上半身をグラブ側にほぼ90度傾けていかなければ、純粋なオーバーハンドスローにはなりません。しかしこのような投げ方は物理的にはほとんど不可能です。

となると、どうしても肘を必要以上に高く上げることにより、上述の線分を上へ折り曲げていかなければ、アーム式の投げ方ではオーバーハンドスローにならなくなります。すると肩への負荷は、肘が下がっている時と同様に大きくなります。

「アーム式は野球肘になりにくい」という間違った思い込み

もちろんオーバーハンドスローではなく、スリークォーター以下の腕の高さであれば、アーム式でも肘を上げ過ぎずに投げることは可能です。しかし基本的には、ボールを投げる動作では肘が伸ばされている時間が短ければ短いほど、肩肘への負荷を抑えられるようになります。

もし子どもたちが「アーム式にすれば野球肘にならない」という話を聞き、アーム式で投げるようになってしまえば、必ず多くの子どもたちが野球肩になってしまうでしょう。そうならないためにも、野球に携わる大人たちは無責任に思い込みで情報発信をすることは避けなければなりません。

情報発信をするなら思い込みや経験則は一旦横に置いて、その情報が理論的に本当に正しいのか、理論的に説明がつくのか、ということを確認してからアウトプットしていくべきです。

「アーム式なら野球肘になりにくい」という考え方は100%間違いです。「内外旋の順番が正しい肘を先行させる投げ方なら野球肘になりにくい」なら、理論的に説明することができます。しかし「アーム式=野球肘になりにくい」という言葉は、理論的には間違いです。

エビデンスがまったくないアーム式に関する情報発信

代表的な選手1〜2名がアーム式で1〜2年怪我せずに活躍できた、というのはエビデンス(論拠)にはなりません。100名以上の選手を数年間観察し、それでもほとんどの選手がパフォーマンスがアップし、肩肘を痛めることもなかった、という状況であればそれはエビデンスになるかもしれません。

しかし近頃情報発信されることが増えた「アーム式=肘を痛めにくい」という考え方にはエビデンスが存在しておらず、無責任な情報発信だと言い切ることができます。アーム式で投げたい選手は投げれば良いと思います。しかし「野球肘にならないようにアーム式にする」という考え方は、絶対にしないように気をつけてください。

2010年1月にプロコーチデビューして以来、1500人以上の選手たちを個人レッスンしてきました。が、プロアマ合わせても、「この選手にコーチングは必要ない!」と思えるほど良い形で投げていた選手は、アメリカで担当した2投手だけです。確率的に0.13%です。日本では、僕がコーチングを担当した選手に限って言えば、完璧な投げ方をしていた選手は0%です。

解剖学は筋肉の名前を覚えるだけではない!

僕らのようなプロコーチは目視だけでもある程度正確に、そしてハイスピードカメラを使うとかなり正確に、その選手が今後どこを怪我しやすいか、もしくは怪我したことがありそうな部位を数分で見抜くことができます。例えばスローイングアームだけを見ても、肘の内側、真ん中、外側、肩の前方、真ん中、後方、上腕二頭筋、上腕三頭筋など、これだけ野球選手が痛めやすい部位があるんです。

それらの部位を、ボールを投げている最中にどう使ってしまうと痛めやすいのか、ということは、解剖学が頭に入っていなければ判断することができません。解剖学とは、ただ筋肉や関節の名前を覚えるだけの話ではなく、どのように動くとその筋肉が働くのか、もしくはその筋肉を使うとどのような動作を行えるのか、など、筋肉それぞれの特性まで理解しておく必要があります。

筒香嘉智選手こそ野球を本気で愛している選手

筒香嘉智選手はかなり柔らかい表現で言ってくれていますが、しかし実際には日本の学童野球の指導内容は酷いレベルです。コーチングしている横では、週末はいくつもの少年野球チームが練習をしているのですが、ちらちら覗いたり盗み聞ぎ(笑)をしていると、あえて肩肘を痛めてしまうような投げ方を教えていることが多々あります。

筒香選手は「大人たちが正しいことを指導できなければならない」というようなことを仰っていますが、本当にその通りだと思います。高校野球の球数制限週500球に関してもナンセンスです。先発して100球程度なら、週5回先発できるという話になってしまいます。重要なのはそれほど意味のない球数による制限ではなく、指導者が、怪我をしにくい適切な投げ方の指導法を学ぶことではないでしょうか。

「下半身を使って投げろ」と言ってはいけない!

肩肘を痛めにく投げ方というのは、僕が指導する野球肩野球肘撲滅クリニックを受講された方ならご存じの通り、理論的に存在しています。僕のコーチングでは、腑に落ちないことは皆無のはずです。つまり「こういう投げ方ができるようになれば怪我はしない」という投げ方があるんです。しかし僕がコーチングをする前からそういう投げ方をしていたのは、上述したように2人だけです。もちろん僕が見たことない選手を含めれば、日本にもたくさんいるのかもしれませんが、僕のコーチング現場に限ってのみで言えば、まだ出会ったことはありません。

試しに僕が指導する内容を一度マスターしてみてください。今まで肩肘が常に痛かった選手であっても、ほとんど痛みなく投げられるようになるはずです。もちろん本格的な治療が必要なレベルではない、という段階においてではありますが。「下半身をしっかり使わないと肩肘を痛める」というのは、野球肩野球肘を防ぐための指導とは呼べません。下半身と上半身を具体的にどう使って投げれば怪我を防げるのかと、そこまで明確に伝えることが「指導(コーチング)」です。選手たちからすれば「もっと下半身を使って投げろ!」と言われても、「え?どうやって?」って戸惑ってしまうだけです。選手から戸惑いを排除させてあげられる人こそ、コーチと呼ぶにふさわしい人だと言えます。しかし日本の学童野球では、選手を戸惑わせる人ばかりのようです。

野球肩や野球肘の予防法を学びたい時はご注意ください。一般書店で市販されている野球教則本では、肩肘を痛めない投げ方を学ぶことはできません。僕自身、数え切れないほどの野球教則本を、新旧問わず拝読させていただきましたが、一般書店で売られているタイプの野球教則本で、解剖学的に肩肘を痛めない投げ方が解説されているものはほとんどありませんでした。

肩肘を怪我しないためにもパワーポジションはNG

中には、野球選手の治療を専門とするドクターが書かれている本もあるわけですが、その本でさえも「?」がつくようなことが書かれています。ちなみに野球選手の指導を実際にされているトレーナーさんが書かれている本は、解剖学的にも投球動作的にも、エビデンスがある正しい動作が解説されていることがほとんどでした。しかしお医者さんが書かれている一般書店で売られている本には、肩肘を痛めない投げ方を学ぶための本なのに、パワーポジションが推奨されていたりするんです。パワーポジションとはコックアップの終盤付近で肘を90°以上に開くことにより、アクセラレーションの距離を伸ばし、球速をアップさせるためのモーションなのですが、パワーポジションで投げるとあっという間に肩肘を痛めます。

パワーポジションは、アメリカの超有名なパーソナルコーチが提唱しているモーションなのですが、メジャーリーグとマイナーリーグの投手たちを観察していくと、パワーポジションで投げている投手の多くが肩肘の手術を受けています。実は日本にもパワーポジションという言葉が誕生する以前、80年代からすでにパワーポジションで豪速球を投げている投手たちが存在していたのですが、1軍で活躍した投手に関していうと、肩痛で全滅しています。

外科の先生も実はよくわかっていない正しい投球フォーム

僕は野球選手を治療する外科の先生やPTさん(リハビリを担当される方々)に野球動作の指導を機会もあり、外科の先生たちが集まる野球肩野球肘予防に関する勉強会に参加させてもらうこともあるのですが、肩肘を痛めない投げ方を理解されている先生やPTは最初は皆無でした。そんな方々が、治療後に投球動作の指導をしてしまっていたのです。

先生やPTさんたちは、痛みを取り除く作業に関してはプロフェッショナルで、そこに僕が口を挟む余地はありません。しかし肩肘を痛めないフォームを知っているかと言うと、まったくそんなことはないわけです。そのため外科の先生が書かれているような予防系の野球教則本にも、間違ったことが書かれていることがあるわけです。もちろんすべて間違っているわけではなく、一部が間違っているというだけです。

スポーツ関連の医学書は一般書店では買えない

もし投手育成コラムを読んでくださっている方で、本気で野球肩野球肘の予防法を学びたいという方は、医学書が並んでいる書店に行ってください。東京でいえば池袋のジュンク堂書店や、新宿の紀伊国屋書店などです。ちなみにスポーツ医学系の本や雑誌を買うと、全国の医学書を取り扱っている書店一覧が載っていたりしますので、そのあたりも書店を探す参考にするといいかもしれません。

ちなみに、残念ながらAmazonで購入することはできません。一部の医学書はAmazonでも購入できるのですが、少なくとも僕が購読しているスポーツ医学系の雑誌や、野球動作に関する医学書は、Amazonでは売られていませんでした。あ、それとスポーツ医学系の野球動作に関する本はかなり高いです。薄っぺらい月刊誌でも1000円しますし、薄っぺらくない月刊誌でも2500円程度、それが専門書となると4000〜5000円ならまだ安い方。7000円、10000円する本もざらです。なので勉強されたい方は出費に関する覚悟も持たれた方がいいかもしれません。

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今回の投手育成コラムでは、ピッチャーの肩にはある程度の「張り」が必要である、ということについて書き進めていきたいと思います。良いボールを投げるためには、肩関節がルーズな状態になっていてはダメなんです。程よい張りを出すため、プロの先発投手は登板2日前にブルペンに入る選手が大半です。

試合直前のスタティックストレッチングはタブー

試合直前のスタティックストレッチング(静的ストレッチ)はパフォーマンスを低下させると言われていますが、これは確かなことです。試合当日でも、試合の直前じゃなければもちろん大丈夫です。例えばジョグをして体を温めて、スタティックストレッチングによって関節を少しルーズにした後に、ダイナミックストレッチング(動的ストレッチ)によって関節をタイトにしていけば、試合でのパフォーマンスを低下させることはありません。

ですがプレー直前にスタティックストレッチングを行なって関節をルーズにしてしまうと、動作の中から力強さが失われてしまうことになり、パフォーマンスの質が低下してしまいます。ですので試合直前のスタティックストレッチングは厳禁です。やるならジョグ後の、まだ試合直前ではない段階や試合直後が効果的です。

投手の肩は投げない日が続くとルーズになっていく

上述した話と同じように、ピッチャーの肩は投げない日が続くとルーズになっていくんです。まさにスタティックストレッチングをした直後のような状態です。すると腕の振りにかけられる遠心力に肩関節が耐えられなくなり、野球肩になってしまったり、もともとルーズショルダーの場合は脱臼してしまう危険性もあります。そしてもちろんルーズな状態になっている肩関節では、力強いボールを投げることもできなくなります。

そうならないために、プロの先発投手たちは登板日の2日前にブルペンに入り、肩関節をタイトにする作業をしているんです。前日に入ってしまうとブルペンの疲れが登板日までに抜けない恐れもありますので、ほとんどのピッチャーは2日前にブルペンに入り、肩をタイトにし、程よい張りを残した状態で登板日を迎えるようにしています。

程よい張りは球質を高め、怪我も防いでくれる

小学生の場合、週末にしか野球の練習をしないという選手も多いと思います。この場合もやはり肩がルーズになった状態で週末の練習や試合を迎えることになりますので、しっかりとウォームアップをしたとしても肩を痛めてしまうリスクが伴います。ですのでできれば水曜日か木曜日あたりに、週末まで疲れが残らない30〜40球程度のキャッチボールや壁当てなどをして、週末の試合を迎えるという習慣をつけた方がいいと思います。

「ウォームアップをすれば怪我をしない」という考え方はもちろん正しいわけですが、しかし関節のルーズ/タイトな状態はウォームアップだけでコントロールできるものではありません。試合や練習で投げる日を逆算しながら、その2〜3日に少し投げて、肩関節を程よくタイトにしておくことで、パフォーマンスが向上しやすくなるだけではなく、肩の怪我も防ぎやすくなるんです。

先日、コーチングの合間に30分くらい時間が空いてしまったため、すぐ横で練習をしていた少年野球チームの練習風景を眺めていました。そこでは熱血お父さんコーチが指導されていたのですが、やはりいくら情熱があったとしても、野球動作に関し正しい知識を持っているお父さんコーチは非常に少ないようです。


キャッチボールをしていたのですが、普通のキャッチボールをしたあと、子どもたちに両膝を地面につかせて膝立ちにさせ、肩関節だけを動かして15mほどの距離を投げるキャッチボールをさせていました。果たしてこのキャッチボールの意図はなんなのでしょうか?我々プロコーチの目からすると、これは手投げを身につけるための練習にしか見えません。

手投げとは専門的には「骨盤回旋不良投法」などと言うわけですが、非軸脚側の股関節を正しい動かし方で使わずに、肩関節を曲げることによってボールを投げる動作を手投げと言います。手投げという言葉は曖昧な言葉のようにも思えますが、実は厳密な定義があるんです。

上述したような動作でキャッチボールを続けてしまえば、当然手投げが体に染み込んでしまい、下半身の力を上半身に伝えて投げるという動作ができなくなってしまいます。そしてボールを持っているうちに肩関節を曲げて使ってしまうと、あっという間に野球肩・野球肘になってしまいます。

お父さんコーチはボランティアであるため、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれませんが、しかし手投げを覚えさせてしまうような練習は避けるべきだと思います。

ちなみに当野球塾では初回から徹底的に下半身の使い方を覚えてもらうという流れでコーチングを進めています。上半身の動きは、下半身の土台が安定するからこそ安定するものであり、土台がない状態で上半身の動きを覚えようとしても、これは家と同じでなかなか安定することはありません。

もし所属されているチームの指導内容に不安がある場合、当野球塾でなくても、ぜひお近くの野球塾に手投げを改善するための具体的なコーチングを受けに行ってみてください。ボランティアコーチしかいないチームとは異なり、目からウロコのコーチングを受けられるはずです!

スライダーを多投すると肘が下がりやすいとよく言われますが、これは本当なのでしょうか?!結論から言うと、イコールではありませんが、そうなる可能性は高いと言えます。特に股関節の使い方が浅く、逆に肩関節の水平内転動作が大きな投手はそうなる可能性が非常に高くなります。


投手育成コラムではもう何度も書いてきたことではありますが、ボールを投げるのに肩関節は使うべきではないんです。ボールをリリースする前に肩関節を使ってしまうから肩周辺への負荷が大きくなり、野球肩になってしまいます。使うのは肩ではなく股関節です。

肩関節を水平内転させることによりボールを投げてしまうと、リリースポイントで必ず肘が下がってしまいます。言い方を変えると、水平内転に頼ってしまうと、肘を下げなければボールをリリースポイントまで持って行くことができなくなるんです。人間の体とは、そういう構造になっているんです。

そして肘が下がってしまうと肩肘への負荷が大きくなるため、体は自然とボールを早くリリースしてしまおうとし、リリースポイントがどんどん打者から遠ざかってしまいます。すると手のひらがキャッチャーミットと正対する前にボールを投げなくてはならなくなり、ストレートを投げたはずがスライダー回転になってしまいます。つまりナチュラルスライダーとは、良くないモーションで投げている結果というわけなのです。

肩関節の水平内転には頼らず、非軸脚側の股関節を内旋させることによってボールをリリースポイントまで持って行くことができれば、スライダーを多投したところで肘が下がることはありません。ちなみに投げたあと野手の守備姿勢でフィニッシュを取る投手は、水平内転が大きくなりやすく、肘が下がりやすくなりますので要注意です。

当野球塾では股関節を深く使い、肩肘に頼らずに投げるモーションを徹底指導することによりパフォーマンスを向上させていくというコーチングを行なっています。怪我をしにくい投げ方を身に付けたい方は、ぜひピッチングマスターコースに通ってみてください。良い投げ方は、早い段階で身につけましょう!

少年野球でトップポジションの形を指導する際、手を上に挙げて手のひらを外側に向ける形を指導している方は今だに多いと思います。しかしこの形でトップポジションを作らせてしまうとパフォーマンスが低下するばかりか、肩肘を痛めてしまうリスクを大幅に高めてしまうことにもなります。


なぜ日本の指導現場では今だに怪我をしやすいこのような形を指導しているのでしょうか?考えられる原因として挙げられるのは唯一、指導者の勉強不足です。指導者が人間の体の構造や解剖学、スポーツ物理学をまったく理解していないために、自分が教わってきた過去の経験則でしか指導できなくなってしまうのです。

もちろん大学に通って本格的に勉強する必要はありません。最低限の知識さえ頭に入れておけば、どのような動き方をすると肩肘を痛めやすいかを判断できるようになるはずです。手のひらを外側に向けるトップポジション、専門的に言い換えると肩関節を内旋させたトップポジションから投げてしまうと、リリースポイントに至るまでの加速期に肩関節が水平外転方向へと引っ張られてしまいます。そしてこれによって肩の中央から前面にかけての部分を故障しやすくなります。

また、内旋状態のトップポジションから投げようとすると、肘を下げなければボールをリリースできなくなってしまいます。その結果インナーマッスルに大きく負荷がかかり、野球肩になってしまいます。また、肘が下がった状態では質の良いボールを投げることもほとんど不可能になり、スライダー回転しやすくなります。よく言われるナチュラルスライダーというのは、実は非常に肩を痛めやすい投げ方によって生み出される球種なのです。

時々他の有料野球塾のコーチの方と交流をすることがあるのですが、過去数十人のコーチの方々とお話をしてきた中で、肩肘を痛めにくい投球動作を解剖学的に理解されているコーチはたった1人しかいらっしゃいませんでした。ちなみに野球選手を専門的に治療しているスポーツドクターでもそういう投げ方を理解されている方はほんの一握りしかいらっしゃいません。実際野球選手の治療を担当されているドクターやスポーツ指導の関係者が集まるセミナーでも、故障しやすい投球動作が推奨動作として指導されていました。

当野球塾のピッチングマスターコースでは、肩肘を痛め難くなおかつパフォーマンスを向上させられるピッチングモーションの指導を2010年1月からずっと続けています。受講生の中で、受講後に肩肘の痛みが出なくなったという選手はポジション問わず数え切れないほどいらっしゃいます。つまりコーチがしっかりと解剖学を理解していれば、肩肘を痛めにくい投げ方を指導することは難しいことではないのです。あとは選手が努力をしてその動作をマスターできるかどうか、という問題のみとなります。

このようなことを考えると、選手よりもコーチたちに当野球塾に通ってもらいたいと強く思うばかりです。コーチが当野球塾でしっかりとした指導スキルを身につけることができれば、そのコーチがいるチームの選手は全員当野球塾同様の指導を無料で受けられるということになります。しかし現段階ではそのようなコーチは少年野球チームではほとんど皆無であるため、高い受講料を払っていただき当野球塾に通っていただくしかないというのが現状です。

子どもたちの肩肘の怪我を大幅に減らすためにも、やはり野球界にもプロアマ問わず、指導者ライセンス制度が早急に必要なのではないかと、常々思ってしまうのであります。

野球指導の現場で時々「体を大きく使って投げなさい」という言葉を耳にすることがあります。しかし体を大きく使う投げ方というのは、実はそれほど大きなメリットがないばかりか、ポジション問わず肩を痛める原因になることが非常に多いんです。野球指導者は決して混同してはならないんです、体を大きく使う投げ方と、体全体を使う投げ方を。


理想の投げ方というのは、体全体を使ってコンパクトに腕を振る投げ方です。プロやメジャーのエース級のピッチャーたちをよく観察してみてください。腕を目一杯大きく使って投げている投手はほとんどいないと思います。日本人投手で言えばダルビッシュ投手や大谷翔平投手ら、身長が高くてもコンパクトでとても良い投げ方をしています。

肩関節は内旋・外旋という回す動作を行うことができるのですが、この内外旋を適切な順序で使わなければ怪我をするリスクが大きくなってしまいます。言い方を変えると、内外旋させるのが肩関節にとって自然な動き方となります。しかし体(特に腕)を大きく使って投げてしまうと肩関節が内外旋しなくなり、肩関節の一箇所だけが消耗してしまい野球肩を引き起こしてしまいます。

逆に腕をコンパクトに振ることができると、肩関節を内外旋させやすくなり、投球時の負荷を肩周辺の複数の筋肉に分散させることができ、怪我のリスクを軽減させられるようになります。とは言え、内外旋の順番を間違ってしまうと意味がないため、投球動作の中で適切な順番で内外旋動作を入れていく必要があります。

野球をする上で何よりも重要なのは、怪我をしないということです。しかし「体を大きく使いなさい」という指導をしてしまうと、遠心力に肩関節を引っ張られてしまう怪我をしやすいフォームで投げるようになってしまいます。上述した通り「体全体を使い、コンパクトに腕を振る」が怪我をしないフォームを身につけるための正しい指導ということになります。

そしてもう一つ付け加えておきますと、腕をコンパクトに振った方がストレートのバックスピンの角度が良くなり、回転数も増え、伸びのあるストレートを投げられるようになります。

体を大きく使うと、バッターを威嚇・威圧できると考えている指導者もいるようですが、そんな小手先のやり方などしなくても、質の良いボールを投げられるフォームを身につけられれば、怪我なく勝てる投手を育てることができるのです。

野球医学の教科書』をはじめとし、本屋さんに行くと野球肩や野球肘関する本がたくさん並んでいる時代になりました。それだけ皆さんが怪我予防に関し敏感になってきたのは良いことだと思います。しかし実際問題として野球肩野球肘は減っているどころか、割合としては増えているようにも感じられます。


実は野球肩野球肘にはそれぞれ起こりやすい年代があり、小学生は野球肩よりも野球肘が非常に多いんです。これはまだ関節が固まっていない段階で負荷をかけすぎてしまうためだと言えます。そして中学生以上になると野球肩の割合が、野球肘の割合に近づいて行く傾向があります。症例そのものは野球肘の方が多いのですが、野球肩の割合が小学生よりも多くなります。

本来、肘というのは一方向にしか曲がらない関節です。しかし誤った投げ方をしてしまうと肘が本来曲がらない方向に負荷がかけられてしまい、特に肘の内側(内側側副靱帯)を痛めやすくなります。埼玉県のスポーツドクターが小学生選手たちのエコー診察を行い統計を取ったところ、痛みが出ていなくても野球肘の兆候が見られる子が非常に多かったそうです。

中学生以上になると体も大きくなり球速が速くなっていきます。にも関わらず肩関節を使ってボールを投げてしまうと肩の水平内外転動作が非常に大きくなり、肩周辺の筋肉が必要以上に伸ばされて痛めやすくなってしまうのです。

野球肩野球肘になる選手の特徴として、股関節を使えていないことがほとんどです。股関節を上手に使えているにも関わらず肩肘を痛めてしまう選手はほとんどいません。中にはいるのですが、股関節を含めた下半身を上手に使ったことで球速がアップし、その球速に筋力がまだ追いついていない場合となります。この場合は通院により痛みを抜き、その後パフォーマンスに合わせて筋トレを含むリハビリを行うと、ほとんど再発しなくなります。

肩や肘を痛める手投げ=股関節を使っていない投げ方、と考えていただいて間違いありません。股関節を上手に使えれば肩肘を使う必要がなくなり、同時に怪我をするリスクも低下させることができます。さらにはボールの回転も良くなり、リリースポイントも打者に近づくようになります。

しかし股関節を使えていないと肩や肘を使ってしかボールを投げられなくなり、肩肘への負荷は高まる一方ですぐに怪我をする結果になってしまいます。

小学生の場合、野球肘になる人数は野球肩になる選手の約2倍だと言われています。小学生はそれだけ野球肘になりやすいんです。だからこそ小学生のうちに、股関節を上手に使う肩肘に負荷のかかりにくい投げ方を身につけておく必要があります。そしてそのような投げ方を指導できるコーチは、少年野球チームには皆無です。わたしが知る限り、当野球塾で勉強されたお父さんコーチ以外ではまだ出会っていません。

だからこそ国語や数学を塾に教わりに行くのと同じように野球塾に通い、怪我をしにくい投げ方を熟知しているコーチの指導を受ける必要があるのです。もちろん当野球塾じゃなくても良いんです。お近くにそういうコーチが在籍している野球塾があれば、ぜひそちらに通っていただければと思います。

コーチを選ぶポイントは、股関節の機能を熟知しているかどうかです。それを知らないコーチは野球塾のコーチと言えど、肩肘に負荷をかけない投げ方を指導できない可能性が高いと思います。

しかしもしかしたら投球動作における股関節の機能を熟知しているコーチは非常に少ないのかもしれません。なぜなら当野球塾には日本全国からお子さんを連れてこられる親御さんがたくさんいらっしゃるからです。

野球選手にとって一番重要なことは、何よりも怪我をしないことです。例え球速がアップしたところで怪我をしてしまっては意味がありません。重要なのは怪我をしにくい投げ方により球速をアップさせることです。そのようなコーチングができるのはボランティアのお父さんコーチではなく、わたしたちのようなプロフェッショナルコーチの存在なのです。

「肩を水平内転させて、肘を先行させてボールを投げる」という指導は未だに行われています。つい先日もこのような指導を行っている中学野球の監督さんを見かけました。そのチームに所属している選手がたまたまわたしのコーチングを受けている選手なので聞いたのですが、そのチームは3〜4人いる3年生投手の全員、肩や肘が痛いと訴えているそうです。考えられないほど酷い状況です。


肩肘が痛ければ通常はボールは投げてはいけません。しかし人数がギリギリで試合をキャンセルするわけにはいかないということで、肩肘が痛い選手にも投げさせているようです。あってはならないことです!試合をキャンセルして後日試合を組みにくくなってしまうことと、選手が怪我で野球を断念することになるかもしれないこと、どちらを回避するべきなのかそのチームの大人たちは誰もわからないのでしょうか?!

さて、話は逸れましたが良い投げ方をすると、確かに肘が先行して動いているように見えます。しかしここで重要なのは肩関節はどっち方向にも曲げてはいけない、ということです。つまり冒頭で書いたように、肩関節を前方へ曲げることによって肘が先行する形を作ってはいけない、ということです。

その形で投げてしまうと人間の体の構造上、ボールリリースのタイミングで確実に肘が下がります。投球時に肘が下がれば肩肘への負担は大きくなりますし、腕が遠回りしやすくなるため制球力も低下します。さらにはスライダー回転になりやすいため球速は伸びず、ストレートが打者の手元で失速しやすくなります。

肘を先行させる投球時の形を作るのは、右投手なら左股関節、左投手なら右股関節の役目です。この股関節を内旋させていくことにより、肩を使わずに肘を先行させて投げられるようになります。この形で投げられると、腕がしなっているように見える瞬間、つまり適切な形のトップポジションを作って投げられるようになるのです。

適切な形のトップポジションを作って投げられるからこそ球速や制球力が向上し、肩を曲げて使わない分肩肘への負担を最小限に抑えることができるわけです。

当野球塾では、とにかく徹底して股関節を上手く使うための投球・送球動作を指導しています。言い換えれば土台をしっかりと作り、そして安定させた状態で投げるということです。それができるからこそ上半身の力に頼って投げる必要がまったくなくなり、肩肘を痛めるリスクを軽減させることができるのです。

数ヵ月前、情報交換のため元プロ野球選手が指導をしているある野球塾を訪れました。すると肩関節を使って肘を先行させる形を指導していたのです!僕は急いでそのコーチに、その指導が間違いであることをこっそり教えました。それ以来そのコーチは僕のところに通い野球動作を勉強されています。元プロ野球選手であってそのような間違いをしていますので、ボランティアのお父さんコーチたちではなおさらではないでしょうか。

肩肘を痛めにくく、さらに球速も制球力もアップさせられる投げ方をマスターされたい場合、ぜひ当野球塾にご相談くださいませ。投げ方はできれば小学生のうちに、遅くとも中学生のうちに改善しておくことがベストです。それ以上の年代になると体が大きくなる分、動作を改善するのに時間を要してしまうことが多くなるためです。

「もっと腕を大きく振って投げなさい」とは、昔から行われている日本の投手指導だと思います。しかしこの指導法に対し、わたしは以前より真っ向から反対意見をアウトプットし続けています。その理由を改めて説明してみたいと思います。


確かに腕の長さを目一杯使って投げると慣性モーメントが大きくなり、小さな出力でも大きなトルクを生み出すことができます。この辺りのお話に関しては、車など工業関係の仕事に就かれている方であれば得意分野だと思います。物理的には確かにこの通りで、腕の長さを目一杯使うと初速をアップさせることができます。ただし、あくまでも初速です。

もしピッチャーがロボットであればこの投げ方でいいと思います。ロボットであれば金属疲労を起こしても、部品を交換すればまた新品同様に動くことができますからね。しかし人間の場合は当然話が異なります。一度肩肘を痛めてしまえば交換などできませんし、手術をするにしても高額な費用やリスクが伴います。

ピッチャーが腕を振り、手に握ったボールを加速させている最中、肩関節はなるべく水平外転しないようにインナーマッスルなどが頑張ってくれています。水平外転とは肩関節が水平方向に動き、腕が背中側にしなるような動きのことです。物理的には、ストップモーションをかける動作が最も負荷が高くなります。

全力疾走しているとしましょう。そこに人が横断してきたら急停止しなければなりません。しかし急停止というのは物理的には非常に大きな負荷がかかりますので、急停止したことにより怪我をしてしまうリスクは非常に高くなります。このリスクが投球ごとに肩にはかけられているのです。

腕を目一杯使って大きく振れば振るほどこの負荷が大きくなり、次第に止めることができなくなり肩の水平内外転はどんどん大きくなり、結果的には野球肩になってしまいます。

わたしのコーチングではとにかく必要のない怪我を抱えないためにも、体に負担の少ない投球動作を指導しています。その上で制球力、球速をアップさせるコーチングを行なっています。現に今まで頻繁に病院などに通っていた投手が、投球動作改善により痛みがほとんどなくなったという投手が当野球塾の受講生には大勢います。そして当然ですがパフォーマンスアップにも成功しています。

「腕を大きく振って威圧感を出せ!」、あまりにも非論理的な指導法です。この論理では体の小さい選手は威圧感を出せないためにピッチャーはできないということになってしまいます。しかしそんなことはありません。男子プロ野球でも170cmに満たないのに1軍で活躍した投手はたくさんいます。改めて言うまでもありませんが、問題は体を大きく見せて相手を威圧することではありません。打者を打ち取れるボールを投げられるかどうかです。

ハッキリ言いますが、投手に威圧されて簡単に打ち取られてしまうような打者からアウトを取ったとしても、まったく自慢できるようなことではありません。そのような自分よりもレベルの低い打者を意識しているようでは、投手として上のレベルに進んでいくことなどできません。

結論を言いますと、スローイングアームはコンパクトに振った方が制球力、バックスピンの回転数、打った瞬間に打者が感じるボールの重さ、終速は確実にアップします。そうです、重要なのは初速をアップさせることではなく、初速と終速の差をなくすことなのです。腕を大きく振れば初速はアップさせられます。しかし終速はアップしないため、打者からすると失速した打ちやすいストレートになってしまうのです。言い方を変えると、終速がアップしなければ、初速をアップさせればされるほど打ちやすいボールになる、ということです。

初速160kph・終速145kphのストレートと、初速130kph・終速128kphのストレート。どちらのボールの方が打者が打ちにくいかと言えば、圧倒的に後者のストレートです。そして後者のストレートを投げられるのが、腕をコンパクトに振って投げる、故障のリスクが少ない投球動作なのです。

投球時の肩肘の痛みがどうしても取れないという選手、もしくはそんな悩みを抱えるお子さんをお持ちの親御さんは、ぜひ一度野球肩野球肘診断コースで痛みを誘発している原因動作をチェックしにいらしてください。

スローイングアームを遠回りさせ遠心力を使って投げてしまうと、初速に関しては僅かにアップするかもしれません。しかしボールが体から遠ざかる分、制球力は低下し、ボールの回転数が増えにくくなるため、お辞儀しやすいストレートになってしまいます。また、肩肘を痛めるリスクも高まります。つまり腕を大きく使って遠回りさせて振るという投球動作には、ほとんどメリットはないということです。


ですがどうしてもスローイングアームの遠回りが直らなかったり、または直すことを諦めてしまった場合は大胸筋周りを鍛えることをお勧めいたします。大胸筋がタイトになれば、投球時に肩関節が水平外転しにくくなり、肩関節の中心〜前方にかけての動き(伸び)をやや小さくし、故障のリスクを少し軽減させられることがあります。

ただし大胸筋を鍛えた場合でも肘や、肩の中心〜後方にかけてはそれほどケアすることはできませんので、怪我のリスクを大幅に軽減させることはできません。

肩の水平内転も抑えたいという場合に、肩甲骨周りの広背筋などの筋肉を増やすという考え方もありますが、バランスや柔軟性を後回しにして鍛えてしまうと肩甲骨の動きが鈍くなり、球速が低下してしまうことがあります。

また、スローイングアームの遠回りを改善できないということは、股関節を上手く使えない手投げになっているということですので、筋肉で関節の動きをタイトにしてしまうと、パフォーマンスが大幅に低下してしまうことにも繋がります。

ただ、どうしてもスローイングアームの遠回りを直すことができないという選手もいると思いますので、その場合に限っては大胸筋を鍛えることによって肩関節の水平外転を抑え、少しだけ怪我をしにくい状態にするという方法もなしではないと思います。ですがもちろん根本的に動作改善を行い、股関節を上手に使えるようになり、肩関節をほとんど使わずに投げるということがベストです。

股関節を上手に使うことができれば、肩肘への負荷を増やすことなく球速をアップさせることができます。そして股関節を使えるとスローイングアームが遠回りしにくくなるため、回転数が増えてストレートの伸びが増し、制球も安定するようになります。

どうしてもできない、もしくは諦めてしまった場合は仕方ありませんが、そうではない限りは大胸筋に頼ることなく、股関節をメインで使って投げる動作のマスターを目指してください。どんなスポーツであっても、パフォーマンスをアップさせるためには何よりも股関節が重要なのです!