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野球選手と腕立て伏せ

今回は「野球選手と腕立て伏せ」というテーマで書き進めてみたいと思います。このテーマでは以前も「野村克也監督は江夏投手の肘痛を腕立て伏せで治した?!」でも書いたことがあるのですが、今回はまた違った視点からのレポートとして書いてみたいと思います。

僕はコーチなので、自分で野球をすることはありません。プロ野球選手や子どもたちのコーチングをする際にキャッチボールや投球練習の相手をしたり、バッティングピッチャーを務めたり、ノックを打ったりという程度です。そのため今はガッツリとした内容でトレーニングをすることはないのですが、それでも基本的なトレーニングは続けています。

例えば腕立て伏せは1日おきに100回ずつ、週に計300〜400回やるのですが、今回は普通に腕立て伏せをやるのと、腕立て伏せバーを使った時の違いについて少しレポートしてみたいと思います。

野球選手が腕立て伏せをするなら腕立て伏せバーは絶対必要

結論から言うと、野球選手なら腕立て伏せバーを使うことを強くお勧めします。その理由はやはり、腕立て伏せバーを使った方が肩甲骨を深く動かすことができるため、野球動作に効果的に使える筋肉を作っていくことができます。腕立て伏せバーを使ったフォームに関してはこちらのページをご参照ください

一方バーを使わない普通の腕立て伏せの場合、バーを使った時よりも肩甲骨の動きは浅くなるため、バーを使わない腕立て伏せは、野球選手はあまり多くはやらない方が良いと言えます。

腕立て伏せ中に肩甲骨が深く動かないと言うことは、肩甲骨をあまり動かさない筋肉を作ってしまうことになります。肩甲骨の可動性が低下してしまえば、ピッチングでもバッティングでもパフォーマンスは低下してしまいます。

バーを使わない腕立て伏せにもメリットはある

ただ、上腕三頭筋(球速をアップさせるために使っていく筋肉の1つ)に関してはバーを使った時よりも、バーを使わない腕立て伏せの方が負荷をかけていくことができます。

僕自身バーありと、バーなしの腕立て伏せを自分でやって検証して行った結果、しっかりと正しいフォームで腕立て伏せをしていても、上腕三頭筋への負荷は、バーがない方がいつでも大きくなりました。翌日の筋肉の張り方も全然違います。

バーを使った場合は肩甲骨付近に最も張りが出て、上腕三頭筋に気になるほどの張りが出ることはありませんでした。もちろん回数によっては張りを出すことはできますが、しかし肩甲骨付近に出る張りよりはやはり小さいものでした。

一方バーを使わない腕立て伏せの場合、肩甲骨付近に張りが出ることはほぼありませんでした。しかしその代わり上腕三頭筋の張りが強くなります。これらは1回だけ検証したわけではなく、同じ体のコンディションをそれぞれ作って複数回僕自身の体を使って検証した結果です。

それに加え、手首の負荷はバーを使った時の方が圧倒的に小さくなりました。これはもちろん、バーを使えば手首の屈曲が小さくなり、使わない時は常に手首を90°に曲げて上げ下げしなければならないためです。ですのでバッティングで手首に不安がある選手は、腕立て伏せはバーを使ってやった方が良いと言えます。

野球選手と腕立て伏せに関するまとめ

野球選手にとって肩甲骨の可動性は非常に重要ですので、基本的にはバーを使うべきだと思います。ですが上腕三頭筋が最も鍛えたい箇所である場合は、バーなしで腕立て伏せをすることもありだと言えます。

ただしその場合でも肩甲骨を硬くしてしまうことだけは避けたいので、バーなしで腕立て伏せをやったあとは、このようなストレッチングツールを使っていつも以上に肩甲骨付近のストレッチングを入念に行うようにしましょう。

投手育成コラム
野球でよく行う走り込みのメリットとは?

冬になると野球ではよく走り込みというトレーニングを行いますが、では走り込みのメリットとは一体どこにあるのでしょうか?日本人メジャーリーガーの中には有酸素運動を行っていれば必ずしも走り込む必要はないと語っている選手もいます。ですが僕は、走り込みというトレーニングは必要だと考えています。

走り込みは上半身と下半身の連動性を高める

まず結論から言うと、マラソントレーニングではなく、あくまでも野球的な走り込みのメリットは毛細血管を増やすことと、上半身と下半身の連動性を高めることにあります。走り込みを有酸素運動としてのみ考えるのならば、確かにエアロバイクだけやっていれば良い、という考え方もできます。しかし野球のトレーニングとして考えると、走るという運動は、上半身と下半身の連動が上手くいかないと速く走ることはできません。つまり上手に良いフォームで走れるようになると、野球をする時の上半身と下半身の連動性がアップしやすくなる、ということです。

言うまでもなく野球でももちろん上半身と下半身の連動は非常に重要です。専門的にはキネティックチェーンと呼ぶのですが、野球の場合、体の下から順番に適切な動作を繋げていくことにより、投げるボールを最大限加速させられるようになります。しかし上下が連動していないと腕力に頼ってしかボールを投げられなくなり、初速と終速の差が大きい、すぐに失速してしまうストレートしか投げられなくなります。

ちなみに腕1本というのは、平均的には体全体の8%程度です。つまり上下を連動させず、右投手が右腕だけに頼って投げてしまうと、体の8%しか使わずに投げるということになってしまいますので、球速はもちろんアップしませんし、小手先を使って投げてしまう分、制球力が根本的に向上することもありません。

走り込みの効果が最も強く表れるのは13~16歳

僕は野球塾でのコーチングの前後には、ほとんど毎日10~20キロ土手をジョギングしています。しかし不思議なことに、野球選手っぽいジョガーとすれ違うことはほとんどありません。大人のジョガーは時間曜日問わず男女たくさん走っているのですが、走り込みをした方が良い中高生世代の野球選手が走っているのは、土日に野球チームで走らされているところ以外ではほとんど見たことがありません。どうやらうちの近所には上杉和也のような選手は住んでいないようです。

走り込みを行って、その効果が最も強く表れるのは13~16歳という世代です。この世代のうちに適切な走り込みを行っておくと、高校大学と進んでいっても走り込みというトレーニングを楽にこなせるようになります。しかし13~16歳のうちに適切な走り込みを行っていないと、高校生以上になって走り込みが突然得意になるという可能性はほぼなくなります。ですので本気で野球に取り組んでいる選手であれば、13~16歳のうちに適切な走り込みを行っておく必要があります。

走り込みでは無理はせず、少しずつ数字を上げていく

では適切な走り込みとは?まず考えなければならないのは、今現在、自分自身がどれくらいの距離を、どれくらいの時間で走ることができるのか、というベース値です。例えば15歳の中学3年生という仮定で話を進めてみましょう。中3の野球選手であれば、5キロを20~25分で余裕を持って走れれば十分だと思います。ポイントは、走り終わった後にまだ少し走れるくらいの余裕が残っているかどうかです。走り終わってへたり込んでしまったり、軽い頭痛や吐き気を感じるような量だと、これはやりすぎです。

走れる距離、時間というのは人それぞれです。選手全員が同じ距離を走る必要はありません。例えば走るのが苦手な中3であれば、まずは2キロを13分で走れるように目指してみてください。そしてそれがクリアできたら次は2キロを12分。それもできたら今度は3キロを18分。それもできたら3キロを16分半というように、数字を少しずつアップさせていくのが走り込みのメリットを得るためのコツです。

これこそが野球選手が走り込みを行うメリット!

走り込みは、たまにたくさん走るやり方ではメリットはあまり得られません。大切なのは最低でも週に2~3回以上、できれば毎日、ペースや心拍数を図りながら定期的に走ることです。ちなみに心拍数はApple Watchのようなデジタルデバイスを使うのもいいですし、普通の腕時計を見ながら脈に指を当てて測るのでも、どちらでもオーケーです。測るタイミングは平常時、走った直後、走った3分後の3回です。走った3分後の数字が、どれだけ平常時に近づいたかが、今現在の回復力となります。

毛細血管というのは運動をするとどんどん切れていきます。そしてそれは元に戻ることはありません。この毛細血管の量と強さが回復力に直結していきます。激しい運動をした後って体が火照りますよね?それは毛細血管が運動によってブチブチ切れていっているからなんです。毛細血管が多ければ体はあっという間に元に戻りますが、走り込みを行って毛細血管が増えていない状態だと、いつまで経っても体(毛細血管)は回復しきりません。

そして体が回復していない状態で野球の練習を続けてもベストな動きで練習をすることはできず、ベストではない動作を覚えるための練習になり、まさに悪循環に陥ってしまいます。つまり、常に良いコンディションで練習をするためには、適切な走り込みによって毛細血管をしっかりと増やしておく必要があるんです。つまり走り込みや有酸素運動とは、体を回復させるためだけに行うものではなく、回復しやすい体を作ることできるんです。

走り込みによって毛細血管をしっかりと増やしておけば、たくさん練習をしても疲労はあっという間に回復し、常に良いコンディションで練習ができるため、練習の効果も効率もアップしていきます。中長期的に考えると、これこそが野球選手にとっての走り込みで得られる最大のメリットなのです。ちなみに走り込みは冬だけではなく、一年を通して行うようにしてくださいね。冬になって突然走り込みを始めると、シンスプリントや筋膜炎など、余計な怪我をしてしまいますので要注意です。

秋冬になると走り込みの量が自ずと増えていくと思います。「困った時は走り込む」という考え方には賛同できませんが、しかし走り込みは非常に重要なトレーニングだと考えています。走り込みは有酸素運動という以前に、全身の動きを上手く連動させるためのトレーニングでもあるのです。ですので走り方が下手な人が、スポーツが得意というケースはほとんどありません。

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シューズは2足1組で使おう

さて、その走り込みで注意したいのがシューズです。学童・学生選手は特に、シューズのコンディションが悪そうな選手が多いと思います。汚れていたり、傷んでいたり。ちなみに僕はジョギングだけで数えても、月間100〜150km走ります。そしてシューズは常に2足1組として使っていて、1回ジョギングで使ったらすぐに洗います。

シューズはジョギング後、一般的にはクッション性が完全に回復するまで2〜3日かかります。仮に毎日同じシューズで走り込みをしてしまうと、クッション性が低下した状態のシューズで走ることになってしまいますので、足の裏、すね、膝、腰などを痛めやすくなります。そしてクッション性が回復しないまま使い続けると、クッション性が低い形状をソールが記憶してしまい、クッション性が回復しなくなってしまうこともあります。そして汚れたシューズは細菌で臭くなったり、その細菌によってさらに傷みやすくもなります。

踵は真ん中からすり減るのがベスト

新しいシューズを2足買うと大きな出費になってしまいますが、しかしアウトレットショップや型落ちしたシューズであれば半額近い値段になっているケースがほとんどです。そのようなシューズであれば、ほとんど1足分の出費で2足買うことができます。僕の場合はお気に入りのモデルが見つかるとずっとそれを履き続けたいタイプなので、登場直後はほぼ定価なのですが、2回目3回目の購入時には型落ちして、ほとんど半額近くになっています。なので完全に市場から姿を消すまでは、いつも1足分の定価の出費で2足購入しています。

ランニングシューズの寿命は600〜700kmくらいです。トレイル用なら500kmくらい。僕はいつも600kmを越えると磨り減り方やクッショニングを見ながら買い換えて、役目を終えたシューズは屋内トレーニング用として使います。ちなみに踵の磨り減り方をチェックすれば、正しいフォームで走れているかを確認することができます。踵の真ん中からすり減るのがもちろんベストですね。

トレシューでの走り込みはできれば避けよう

時々野球用のトレーニングシューズで走り込みをしている選手を見かけますが、あまりお勧めはできません。普通のランシューズとトレシューを持ってみるとよくわかるのですが、トレシューはとにかく重いんです。重いし蒸れます。ですので少なくも長距離になる走り込みではトレシューの利用は控えた方がいいと思います。軽くて通気性の良い普通のランシューズの方が、走り込みによる怪我や余分な疲労を回避しやすくなります。

それと靴紐は、履く時も脱ぐ時も必ず解いてください。結んだまま履いたり脱いだりしたり、履く時にトントンやってしまうと、シューズはあっという間に傷んでしまいます。シューズは足を守る重要なプロテクターですので、決してぞんざいに扱うことはせず、常に清潔にし、そして良いシューズコンディションを維持できるように気をつけてください。

今回の投手育成コラムでは、野球選手と走り込みの必要性について書き進めてみたいと思います。近年野球界では、走り込み不要論に対する支持が高まっているように感じられます。確かに走り込みを有酸素運動と捉えるのであれば、エアロバイクなどを利用すれば走り込みは必要ない、という理論になるとは思います。しかし僕個人としては、走り込みは必要だと考えています。

有酸素運動以上の効果がある走り込み

走り込みを有酸素運動としか捉えていない方ももしかしたら多いのかもしれませんが、野球選手にとっての走り込みは有酸素運動というだけではありません。上半身と下半身の連動を整えるための大切なトレーニングでもあります。走るという動作は、すべてのスポーツにとっての基本となります。上手に走れない選手が、アスリートとして大成するケースはほとんどありません。

僕は野球選手に走り方のコーチングも行なっているのですが、脚力を中心にして走ろうとする選手ばかりです。しかしそれは間違いで、走るという動作は腕を使って行うものなのです。腕を速く大きく振ることによって、股関節という歯車を介して脚を前へ前へと出していきます。ちなみにスピードダウンさせたい時は、腕の振りを遅くしていくことによってスピードを調整していきます。足でブレーキをかけて止まろうとすると怪我のリスクが高まりますので要注意です。

有酸素運動と盗塁とでは走るフォームが異なる!

僕は走り込みというメニューは必要だと思っていますが、しかし無闇にただ長い距離を走るだけでは意味はありません。走る速度を変えたり、心拍数の回復具合を計測しながら走ったり、上下の連動を意識して走ったりと、いろいろなバリエーションで走っていくことが大切です。走り込みとは有酸素運動兼、運動能力を高めるためのトレーニングだと思ってください。

ちなみに有酸素運動としてのフォームと、盗塁を決めるためのフォームとではまた違ってきます。有酸素運動であれば、両足が同時に地面から離れる時間があっても良いのですが、スタートした瞬間にトップスピードに持っていきたい盗塁時には、できるだけどちらかの足が地面についていて、常に反力を得られるフォームで走る必要があります。

中3以上ならまずはサブ5ペースの5キロ走から始めよう

さて、続いてペースについてですが、中学3年生以上であればサブ5ペース(1キロ/7分6秒未満)で5〜10キロを走れるくらいから始めるのが良いと思います。高校生ならサブ4以上(1キロ/5分41秒未満)のスピードを目指して良いかもしれません。ちなみにサブ3になると1キロ/4分15秒ペースになります。つまり走り込みと言っても、ただ長時間・長距離を走るだけでは無意味なんです。しっかりと心拍数を制御しながら、常にある程度の息切れをする速度で走る必要があります。ただし、ゼェゼェ言ってしまうほどの速度じゃなくても大丈夫です。

すでに上述しましたが、ポイントは腕を振って股関節という歯車を介して脚を前に出していくということです。腕で走る、と考えながら腕を振ってください。ボールは下半身を使って投げます。バットも下半身を使って振ります。しかし走る動作は上半身によって行います。投げる、打つ、走るで、この上下が逆になってしまうとパフォーマンスが向上することはありませんので、走り込みをする際には腕を使って走ることを意識しながら走り込むようにしてください。

ピッチャーはまずどこの筋肉を鍛えるべきなのか?と質問をされたら、それはふくらはぎだと思います。もちろん全身をバランス良く鍛える必要はありますが、あえて言うならばふくらはぎです。伸縮性に富み、瞬発力のあるふくらはぎを作ってそれを使いこなせるようになると、低い重心のまま下半身を良い形で使いやすくなり、キネティックチェインが向上し、球速もアップしやすくなります。


逆にふくらはぎが弱いと振り上げた非軸足の足首が着地後に背屈してしまい、上半身が前へ突っ込んでしまいます。そして上半身が突っ込んでしまえば球速は当然遅くなり、手投げにもなりやすい分コントロールも低下してしまいます。

非軸足の足首は着地後はやや底屈させた状態でロックする必要があります。それができない状態の結果が、上半身が前へ突っ込むと言う形です。そしてその足首をロックする役目を担っているのがふくらはぎなんです。つまりふくらはぎが弱いと上半身は突っ込みやすいということですね。

筋肉には速筋と遅筋の2種類があるのですが、速筋タイプ(スプリンタータイプ)のふくらはぎは角ばった形になります。一方遅筋タイプ(マラソンタイプ)のふくらはぎは丸みを帯びた形になります。速筋・遅筋というのは後から作り直すことは難しいので、自分がどちらのタイプの筋肉の持ち主なのかをあらかじめ知っておくと、トレーニングもしやすくなると思います。

ですがピッチャーの場合は一瞬の運動時間で爆発的なパフォーマンスを発揮しなくてはならないので、どちらかと言えば速筋タイプの方が有利になるような印象があります。一昔前は先発はロングを走り、リリーフはスプリントトレーニングをするというのが主流でしたが、先発タイプもスプリントトレーニングを多めに取り入れるべきだと言えます。あとは身長が固まった高校生以上の世代であれば、プライオメトリクストレーニングを取り入れても良いと思います。

そして遅筋タイプをある程度速筋タイプにシフトするためには、スプリント&ブレーキングに効果があります。全力疾走をして急ブレーキをかけて止まるトレーニングですね。ただしこのトレーニングは負荷が大きく怪我のリスクもありますので、その点に十分注意して行ってください。小学生世代であれば鬼ごっとがスプリント&ブレーキングトレの代用になります。

近年は上半身のトレーニングばかりする野球選手がプロアマ問わず増えていますが、ピッチャーならばまずはふくらはぎで土台を安定させ、その上で上半身の筋肉を増やしていくという順番が望ましいのではないでしょうか。そしてもちろん柔軟性のない筋肉はアスリートの味方にはなってくれませんので、どれだけ鍛えたとしても柔軟性があるということが絶対条件となります。

野球のトレーニングで「重心」という言葉はよく登場しますので、聞いたことがないという人はほとんどいないと思います。でもこの重心、どこにあるか明確に説明することはできますか?中には体重移動の「体重」と混同してしまっている選手も多いようですので、注意が必要です。


重心とは、臍下丹田(せいかたんでん)と呼ばれることもあり、様々な呼び方をされる場合があります。重心とは簡単に言うと立位時の人間の体のど真ん中ということになります。場所はだいたい臍の3〜5センチくらい下のやや前寄りにあります。3寸であったり、指3本分とあったり説明には多少の誤差がありますが、臍の下ということに違いはありません。

レオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』をご覧になったことがある方は多いと思いますが、あの図の円のど真ん中に重心があります。つまり極端な話をすると、気を付けの姿勢からお辞儀をして上半身を屈めるだけでは、重心が下がっていることにはならないということです。

スポーツ動作に於いて踏ん張るにしても、体幹を使いこなすにしても、強いボールを投げるにしても、強いバットスウィングをするにしても、重心の高さを下げて安定させることが重要になります。重心が高ければ高いほど踏ん張りは弱くなります。かと言って下げ過ぎもダメです。股関節が膝より低くなるほど重心を下げてしまうと、これもまた踏ん張りが利かない状態になってしまいます。

わたしがプロフェッショナルコーチになったのは8年前からなのですが、この8年間ずっと観察をしていると、小中学生の踏ん張る力が非常に弱いことがすごく多いんです。その原因のひとつとして重心の高さが大きく影響しています。股関節の使い方が体に染み付いておらず、踏ん張るということそのものがわからない小中学生選手も少なくありません。

今年39歳になったわたしが子どもの頃は、小学校の休み時間にはほとんど毎日のように同級生と相撲や押し相撲して遊んでいました。そのためかクラスの男子はみんな踏ん張る力が強かったように記憶しています。そして毎日のように押し相撲をして遊んでいるうちに、自然と重心を下げることによって踏ん張るという動作が身についていました。

どんなスポーツであっても踏ん張れない選手はなかなか上達しません。しかし踏ん張ることができなかった選手が踏ん張れるようになるだけでも、野球の場合は制球力や球速、打球の飛距離が目に見えてアップします。そして踏ん張れるからこそ上半身の動作も安定感を増していきます。

ですのでわたしのコーチングでは、とにかくまずは踏ん張るということを大切にしています。重心を下げて踏ん張りを強くし土台を安定させられなければ、上半身の動き方をいくら指導したところでそれが身につくことはほとんどありません。例え指導したその場ではできたとしても、数日後にはすぐに元に戻ってしまいます。

そして重心を下げて踏ん張るという感覚がわからない選手は、どうしても肩肘を使ってボールを投げてしまいますので、野球肩や野球肘のリスクも非常に高くなってしまいます。怪我を防いでパフォーマンスをアップさせるためにも、重心を下げて踏ん張りを強くするという作業は絶対に欠かせないものなのです。

選手個々の投球動作というのは、言い換えれば1つ1つの小さな癖の集合体ということになります。投球動作の癖というのはスポーツ用語で「運動習熟」「マッスルメモリー」と言ったりするのですが、これは一般的な現役選手で2000回同じ動作を繰り返すと、その動作を頭ではなく、体(厳密には筋肉)で覚えられるようになります。つまり考えなくても自然とその動きができるようになる、ということですね。

この運動習熟というのは、野球やゴルフのように間(次のプレーについて考える時間)のあるスポーツでは特に重要になります。だからこそ野球というのは他のスポーツ以上に反復練習が結果に結びつくことが多くなるんです。

動作改善を行なっていると、レベルの高い選手ほど動作改善が進まないケースが多くなります。その理由は筋肉量(記憶容量)が多くなることにより、マッスルメモリーそのものが強くなってしまうためです。少ない筋肉量よりも、筋肉量が多い方が強く記憶できる、ということですね。

中にはそのマッスルメモリーが動作改善を妨げてしまうケースがあります。小中学生よりも高校生、高校生よりも大学生、大学生よりもプロ選手の方が、動作改善に時間がかかることが多くなります。それでも怪我を防ぐため、パフォーマンスをアップさせるため、どうしても動作改善が必要な場合があります。その場合はどうすればいいのでしょうか?

これは通常、よほど覚悟のある選手にだけ伝える方法なのですが、筋肉を一度落としてしまうというやり方があります。パソコンで言えばハードディスクドライヴを交換する、という感覚です。マッスルメモリーで容量がいっぱいになってしまった筋肉を一度減らしてしまい、もう一度筋肉を作り直し、新しく作り直した筋肉に新たなマッスルメモリーを書き込んでいくというやり方です。

主力選手ではなかなかできないやり方ではありますが、高校・大学生・プロレベルでなかなか1軍に昇格できないクラスの選手、もしくは怪我により中長期間野球ができない選手の場合は、このやり方を試してみる価値はあると思います。

一度筋肉量を落とすことによって、作り直した新しい筋肉に良い動作を覚えこませ、さらには怪我をしにくい良いコンディションの筋肉を育てていくのです。体の動きのほとんどは筋肉が司っています。関節の可動域も、体の柔軟性も要は筋肉の質です。その筋肉そのものを作り直してしまうんです。

極端な手法ですので誰にでもお勧めできるやり方ではありませんが、適切な動作、筋肉の落とし方、増やし方をしっかりと学び、栄養バランスを崩さないように行うことができれば挑戦する価値は高いと思います。

当野球塾チーフコーチであるわたし自身、数年前にこの手法を自ら試したことがあります。そして新たなに筋肉を作り直し、投球動作をインプットし直したのですが、新しい投球動作を覚えさせようとすると思った以上にそれを早く体が覚えてくれました。さらに驚いたことに、子供のころからずっと変わらなかった投球動作で投げようとすると、動きや動くタイミングに違和感を感じるほどでした。

筋肉というのはそれほど繊細であり、正確なものなんです。一度しっかりと覚えてしまった悪い動きは、なかなか改善することができなくなります。逆に一度覚えた良い動きも簡単に忘れることはなくなります。だからこそ投球動作、打撃動作というのは体が出来上がっていない小学生のうちに適切なものを覚えておく必要があるんです。そうすれば体が大きくなってから動作に悩むこともなくなり、上達に対して遠回りする可能性も低くなります。

筋肉は鍛えるもの、と一般的には考えられていますが、実際にはそれだけではありません。鍛えることももちろん大切ですが、それ以上にしっかりと教育し、良い筋肉を育てるということが野球においては特に大切なのです。筋肉によって速いボールを投げたり、打球を遠くへ飛ばそうと思ってもなかなか上手くいかないどころか、怪我のリスクを大幅に高めてしまいます。

上達するのに何よりも大切なのは、怪我をしないことです。つまり、怪我をしにくい動作=上達しやすい動作、と言うことができるわけです。そしてその動作を司っているのが筋肉となるわけですね。

冬季になると、毎年のようにチームで行なわされる走り込みについてのご相談をいただきます。走り込みにはどのような効果があり、どれくらい行うのが適切なのか、などのご質問をコーチングを受けている選手の親御さんからたくさんいただきます。今回のコラムでは走り込みについて解説していきたいと思います。


結論から言いますと、走り込みは必要です。ダルビッシュ投手や為末大さんなどは野球に走り込みは必要ないとコメントしているようですが、当野球塾では走り込みは必要なトレーニングだと考えています。ちなみにダルビッシュ投手や為末大さんの言葉は、親御さんから伺ったお話ですので、ダルビッシュ投手や為末大さんの言葉の真意はわたしにはわかりません。

走り込みは必要だと考えていますが、しかし走り込み過多は厳禁です。プロ野球選手のように体がしっかりと出来上がっているレベルの選手であれば、長時間走ってもフォームを崩さず走ることもできます。しかし小中学生の場合は走れば走るほどフォームを崩していき、崩れたフォームで走り続ければ必ずどこか怪我をしてしまいます。ちなみにわたしが以前お邪魔したとあるプロ野球チームの投手陣は、春季キャンプで5キロを楽に走れる投手が1〜2人しかいませんでした。その頃のそのチームはまさに12球団の中でも弱小チームでした。

フォームが崩れた状態で走り続けると、膝や腰を痛めやすくなります。特に小学生や中学1〜2年生という年代はまだ骨端線が固まっておらず、膝や肘などは特に痛めやすいんです。そして痛めた骨端線を放置してしまうと骨格が歪んだまま骨が成長してしまい、手術をしなければ治らないという状況にもなりかねません。

ちなみにスポーツ外科に精通されていないお医者さんの場合、ごく稀にですが、骨端線が原因の痛みを捻挫だと誤診してしまうケースが過去に多々ありました。すると治療方法が大きく変わってしまいますので、骨端線の不調を適切に治療することができず、この場合、生涯痛みを抱えてしまうケースもありますので、心配な場合はちゃんとしたスポーツ外科を受診するようにしてください。

走り込みはとにかく、適切なフォームで走れるだけの量以上は行わないことです。この冬に親御さんに聞いた事例では「3日で合計60キロ走らされた」「4時間走りっぱなしの練習をさせられた」「冬休みの間、毎日20キロずつ走らされた」というお話がありました。これらは小中学生という年代を考えると、明らかに過度な走り込みになります。

筋肉痛以外の痛みはすべて怪我です。現に上記のようなお話を聞かせてくださった親御さんのお子さんは膝痛、シンスプリント、足底筋膜炎、足首の捻挫、骨端線損傷などを患い受診したと仰っていました。つまりこれは必要なトレーニングではなく、ただのOTS(オーバー・トレーニング・シンドローム)であり、不必要な過度なしごきとなります。ちなみに運動心理学的には、しごきによりメンタルを強化することはできません。つまり根性をつけるために走り込みをさせるという考え方は、まったく非論理的で誤った考え方なのです。

過度な走り込みは実に非論理的で非科学的なしごきです。このような過度なトレーニングを選手に課す指導者は、まずは自分自身が選手と同じ量だけ走って見せるべきでしょう。するとまず動けないはずです。日本の少年野球チームの指導者のほとんどすべてはボランティアであり、指導法について勉強されている方は本当にわずかしか存在していません。アメリカの少年野球チームの場合はまったく異なり、よほどの初心者チームでない限りはわたしのようなプロフェッショナルコーチがチームに1人は在籍しています。そのため常に適切なトレーニングメニューで野球スキルを高めていくことができるんです。

なお走り込みを適切なフォームで適切な量をこなした時に得られる効果は、まずジョグのような有酸素運動であれば毛細血管を増やすことができます。激しい運動をした後というのは体が火照ると思いますが、この火照りは運動により毛細血管がたくさん切れて起こっているものなのです。

そして一度切れた毛細血管は再び繋がることはなく、新しく増やしていくしかありません。この毛細血管は筋肉などの回復力に大きな影響力を持っているため、有酸素運動により毛細血管をたくさん増やしておくほど、回復力が高まるという仕組みになっています。ただ、有酸素運動はジョグではなく、エアロバイクや自転車、エアロビクスなどでも行うことができます。ダルビッシュ投手は恐らく、有酸素運動はエアロバイクでも行えるため走り込みは必要ない、というニュアンスで話していたのではないでしょうか。

走り込みにはもう一つ大きな利点があります。それは走る動作というのは、体の連動を高めてくれるという点です。速く走るためには股関節を自転車のペダルのようにスピーディーに動かしていく動作が必要となります。つまり適切なフォームで走ることができれば、股関節のコンディショニングと強化を行うことができるんです。

股関節とは上半身と下半身の繋ぎ目であり、股関節が動かなければ、いくら下半身で踏ん張ったとしてもその力が上半身に伝わることはなく、下半身を鍛えていたとしても結果的に手投げになってしまいます。

わたしはよく選手たちに「腕で走り、脚で投げるように」と指導します。走る動作というのはもちろん脚で行うものですが、その脚を動かす役割を担っているのが腕なのです。腕を適切なフォームで前後に大きく振ることができれば、脚は自然と腕の動きに連動していくようになります。そして連動しているということは、股関節も機能しているということになり、それができるようになると、脚の動きによって腕を動かしボールを投げる理想的な動作も身につけやすくなるんです。

野球のパフォーマンスはキネティックチェイン(運動連鎖)と言って、下半身を発端にしたエネルギーをどれだけ効率良くボール、もしくはバットに伝えていけるかが鍵となります。このキネティックチェインを最下部(つまり足部)から順番に上へ上へと繋げていくことができれば、筋肉をモリモリにしなくても速いボールを投げることができるんです。ただし速いボールを投げた時の衝撃に耐え怪我を防ぐため、ある程度の筋肉は必要となります。

さて、最後に適切なフォームで走るコツをお伝えしておきたいと思います。グラウンドには塁線が引いてあると思いますが、その白線の真上に両足を真っ直ぐ着地させながら走ってみてください。すると股関節をしっかりと使って走ることができます。インステップにもアウトステップにもならないように足を着地させて走ってみてください。

そして内股やガニ股にもなってはいけません。疲れてくるとどんどん内股やガニ股になって行ってしまいますが、その状態で走り続ければ必ず膝を痛めます。これは骨端線がしっかりと固まった大人でもそうですので、小中学生世代であればなおさらです。

両腕に関しては、スプリントの場合は肘を常に90°くらいに保って、脇を締め、肩甲骨を使って前後に大きく振っていきます。ジョグの場合も肘は90°くらいにし、大きく振る必要はありませんが、広がらないように前後に軽く振っていきます。

ちなみに小学生世代というのは一般的にはスタミナが大きく増えることはなく、逆にスプリントを強化することができます。あくまでも一般的な話ですが、短距離走が速くなるのは小学生世代までで、小学生のうちに短距離を速く走れるようにしておかなければ、中学生になっていきなり短距離走が速くなることはありません。ですので小学生世代が走り込みを行うのであれば長距離はせいぜい2キロくらい、走れる子でも5キロくらいにしておき、あとは盗塁練習のような20メートル走を10〜20本やるだけでも十分だと思います。

中学生世代の場合はスプリントトレーニングも速筋を養うという意味では重要ですが、この世代はスタミナを一気に伸ばせる世代となります。ですのでその日の最後のメニューとして3〜10キロ程度走るといいと思います。

走り込みを行う際の注意点は、必ず走る直前と走り終わりに脈拍を計ることです。走る直前と比べ、走り終わりでどれだけ脈拍が上がっているのか、そしてその後2〜3分ごとに脈拍を測り、どれくらいのペースで走る前の脈拍に戻るのかを計測してください。この作業によってスタミナと回復力がどれだけ高まっているのかを数値で確認できるようになります。

また、5キロ以上を走る場合は必ずペットボトルなどを持って走るか、もしくはコーチがいつでも水分補給できる環境を作っておく必要があります。冬季だからと言って水分補給を疎かにしてしまうと脱水症状を引き起こします。足をつるというのは脱水症状の初期症状ですので、つった時点でその日の運動は停止させ、しっかりと水分補給を行わなければなりません。

・・・・かんたんにまとめるつもりが、かなり長いコラムになってしまいましたね。これでもかなりかんたんにまとめたのですが、それでもまとめ切れないほど走り込みというのは奥が深く、有効なトレーニングなのです。ただし繰り返しますが過度な走り込みは逆効果で怪我を招くだけです。ですので指導者がしっかりと勉強をし、適切な走り込みのメニューを組むための知識を持つ必要があるのです。筋肉痛以外の走り込みの痛みはすべて怪我であり、それは100%指導者の責任であることを、走り込みをさせる指導者は頭に入れておく必要があるということを、決して忘れないでください。

投手が筋肉量を増やすことには賛否両論ありますが、当野球塾では増やしすぎることには大きなメリットはないと考えています。筋肉トレーニングは確かに必要です。しかし筋肉量によってパフォーマンスをアップさせようとする考え方は、怪我に繋がる可能性が高くなると考えているため、そのようなコーチングは行なっておりません。


筋肉量を増やすと、確かに筋出力が高まり大きなパワーを発揮できるようになります。しかしいくら腕を鍛えて太くしたところで、150km/h以上のボールを投げる際の手部が移動する速度は速くても110km/h程度なのです。つまり「腕を全力で振る」という動作も、球速アップにはそれほど大きな影響はないというわけです。

球速アップは、あくまでも投球動作の技術によって行われます。腕力をつければ確かに見た目の初速はアップしますが、腕力投げではボールの回転数を増やすことはできないため、初速と終速の差が大きくなり、打者からすると初速がどんなに速くても失速する分、打ちやすいボールになってしまいます。

逆に投球動作の技術によって球速をアップさせられれば初速と終速の差はほとんど生じず、打者の手元で伸びる空振りを取れるストレートを投げられるようになります。

近年はプロ野球選手であっても技術以前に、体重を100kg以上にして腕力で球速をアップさせようとする選手が増えています。もちろん投球動作の高い技術を持っていれば話は別です。ですが技術なしにただ筋出力を高めるためだけに筋肉を増やし、必要以上に体重を増やしてしまうと、その重さによって股関節がタイトになってしまいます。

股関節がタイトになり動かしにくくなれば、当然肩肘を使って投げるしかなくなってしまいます。つまり手投げ、上半身投げと呼ばれる投げ方ですね。これでは根本的にパフォーマンスをアップさせることはできません。

股関節というのは上半身と下半身のつなぎ目であり、股関節の動きが悪ければ下半身で作り出したエネルギーを上半身に伝えることができず、結局は手投げになってしまうのです。

ですので筋トレによって体重を増やす際は、とにかく股関節の可動性を低下させないように気をつけてください。そもそも股関節は、トレーニングをしていない一般的な方の体重であってもタイトになってしまうんです。それが体重100kgともなれば、股関節への加重は想像以上に大きくなり、下半身と上半身のキネティックチェインを阻害する結果となってしまいます。

150km/h以上のボールは、体重70kgの投手でも投げることができるんです。楽天イーグルスの岸孝之投手や、西武ライオンズで活躍された西口文也投手は非常に細身の投手ですが、150km/hを超えるボールを投げることができます。若い選手で言えば今季からライオンズに加入した今井達也投手も細身ですが150km/h以上のボールを投げられる技術を持った投手です。

体重という意味では、野球ほど体脂肪率が高い選手が多いスポーツは珍しいのではないでしょうか。特に中学・高校野球の一部では、監督の指示でとにかく炭水化物をたくさん食べさせられるチームがあり、そのようなチームの選手は確かに体は大きくなるかもしれませんが、体脂肪率が高く怪我をしやすい状況が見受けられます。

体脂肪は筋肉よりも柔軟性がないため、スポーツのパフォーマンスに対してはほとんど好影響はありません。それどころか柔軟性が低い分体の可動性が低下し、怪我に繋がってしまうことも多々あります。そして無駄な体脂肪が多いほど股関節が硬くなりやすく、さらには膝への負担が大きくなってしまいます。

ですので、無闇に体重を増やすようなことはアスリートはプロアマ問わず避けるべきなのです。体重を増やすのであれば、まずは関節の可動性を確保し、その上で体脂肪率を増やさずに体重を増やすことが大切です。アマチュア野球がいつまでも体格に頼った野球をしている限り、日本の打者がメジャーリーグで普通に通用するようになる日はやってこないのではないでしょうか。

プロサッカー選手の長友佑都選手などは、ヨガにより体の柔軟性を維持した状態で体脂肪率の低い体づくりを行なっている選手です。野球選手と野球指導者は、もっとサッカー選手などの先進的な理論を実践している多種目を大いに参考にすべきだと当野球塾では考えています。

ピッチャーの練習法は数え切れないほど存在しますが、その中でも当野球塾がオススメしたいのは投球後の3秒立ちです。やり方はとてもかんたんです。投げ終わったら非軸足だけで3秒間安定して立てるようにするだけです。なおその時のポーズは上半身は水平近くまで前傾させ、軸足はベルト以上の高さまで振り上げます。そして非軸脚も膝を曲げて低い重心を維持し続けます。


この練習法でどのようなことが身につくかというと、
  1. 体重移動を最後まで終わらせられる姿勢を作れる
  2. 重心を低い位置に持っていく癖をつけられる
  3. 踏ん張る力が強くなっていく
  4. 体幹のスタビリティ(安定感)が高まる
  5. 非軸脚の膝が割れないためボールがシュート回転しにくくなる
  6. 腕や脚を遠回りさせず、コンパクトに動かせるようになる
  7. インステップやクロスステップが直り、ストレートステップになりやすい
  8. リーディングアームを上手に使えるようになりやすい
  9. 全力投球ができなくなる
などの点が挙げられます。「全力投球ができなくなる」と聞いて「え?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全力投球は基本的には厳禁です。全力投球を繰り返してしまうと、どんなに良いフォームで投げていたとしても必ず肩肘を壊すようになります。

当野球塾でも球速アップに関するコーチングを行なっていますが、これはあくまでも8割で投げた際の球速をアップさせるという作業です。言い換えれば、今は全力で投げなければ出せない球速を、8割の力でも出せるようにするという作業です。当野球塾では一貫して全力投球はすべきではないと選手に指導し続けています。

投げ終わった後に3秒間安定して立つ動作って、言うほどかんたんなことではないんです。やっていただければわかると思いますが、最初はけっこう難しいと思います。ポイントはキャッチャーミットを見続けるということと、非軸脚そのものではなく、非軸脚側の股関節で立つ意識を持つことです。そして重心は極力低い位置を維持しないと、重心が高くなればなるほど立っていられなくなります。

ちなみに傾きながらの3秒はダメですよ。3秒経ってから傾いてください。それどころか、5秒でも10秒でも立っていられるようになってください。この練習法は全世代に有効ですので、ぜひ今日からチャレンジしてみてください。
野球選手に限らず、アスリートには強い体が必要です。「骨太」という言葉が使われたりしますが、やはりアスリートは骨太でなければなかなかパフォーマンスを安定的に向上させることはできません。

筋肉について誤解をされている方も多いかもしれません。筋肉というのは、パフォーマンスをアップさせるために増やすものではありません。例えば球速をアップさせるために筋肉を増やすという考え方は、適切ではありません。筋肉は、技術がアップしてパフォーマンスが向上し、運動強度が高まった時の負荷に耐えるために付けるべきものなのです。

筋肉に合わせて技術がアップするのではなく、アップした技術に合わせて筋肉量を考慮していくのが、わたしが考える理想的なトレーニングの取り組み方です。ちなみに一般的なスポーツ選手の場合、自身が持っている筋肉の30%しか使いこなせていないという専門家の研究報告もあります。

ということは、筋肉は無闇に増やすよりも、持っている筋肉を満遍なく使えるようになることの方が、アスリートとしては重要ということになります。その理由は単純で、使い切れない筋肉を持ち過ぎているという状態は、極端に言うと体に錘(おもり)を付けて運動しているのと似た状況になり、怪我のリスクも高めてしまいます。

野球の場合、特に投手は他のポジションよりも運動量が多いため、過量の筋肉による負荷が非常に大きくなります。だからこそ筋肉は必要な分だけバランスよくデザイニングしていくことが大切なのです。そして得た筋肉を満遍なく使えるように、ただ鍛えるだけではなく、鍛えた筋肉をしっかりと活性化させておくことも大切なのです。

現代野球では筋肉量に頼ってプレーする選手が非常に多いのですが、実はそれは、冒頭でお話しした「骨太」とは違うのです。確かに筋肉や骨が太かったとしても、しかし本当の骨太とは見た目の問題ではなく、持っている筋肉をしっかりと使いこなせる選手のことをそう呼ぶのです。

骨太の選手は体格が大きくても、線が細くても関わらず、地に足を付けてどっしりと構えプレーしているように見えます。端から見ていても安定感を感じさせてくれる動きでプレーをしています。

筋肉トレーニングは必要だし、アスリートにとっては大切なメニューです。しかし考え方を間違ってしまうと、せっかく増やした筋肉量でパフォーマンスに好影響を与えられないばかりか、過量の筋肉に足を引っ張られてパフォーマンスが低下してしまうケースも少なくありません。

そうならないためにも、技術レベルに合った適量の筋肉を維持しながらトレーニングを行うようにしてみてください。
ふた昔前まで、運動能力の高い子はみんな野球チームに入っていました。それがひと昔前からはサッカーチームに入ることが多くなり、現在はダンスチームに運動能力の高い子たちが集まっています。しかしこれだけの理由で野球界の底辺アップができないというのは、野球指導者の怠慢ではないでしょうか。運動能力がまだ高くない選手が多いのならば、その子たちの運動能力を向上させてあげればいいのです。

足腰を使わないスポーツはほとんどないに等しいと言えます。ということは運動は、足腰が大きなウェイトを占めているということになります。それをさらに具体的に言うと、腸腰筋と大腿二頭筋(ハムストリングス)のコンビネーションが、運動能力の良し悪しを大きく左右しているのです。

大腿二頭筋はハムストリングスと呼ばれることも多い、太ももの後ろ側の大きな筋肉です。そして腸腰筋というのは、この名前の筋肉があるわけではなく、大腰筋・小腰筋・腸骨筋をひっくるめて腸腰筋ということになります。アフリカ系のスプリンターは、オリンピックでも本当に強いですよね。例えばウサイン・ボルト選手など。アフリカ系の人の腸腰筋は、日本人の2〜3倍あると言われており、この差がスプリント力の差になっているのです。

走る動作はすべての運動の基本動作となります。つまり走りが良い選手は、どのようなスポーツも上手になれる下地があるということになります。そしてこの走るという運動能力を向上させられるのが、腸腰筋と大腿二頭筋のコンビネーションなのです。

まず腸腰筋は、脚を上げるという動作を司っています。歩いたり走ったり、投げたり蹴ったりする際には必ず脚を上げますよね。一方腸腰筋は骨盤と膝を安定させる役割を担っています。股関節を含めた骨盤と膝が安定しなければ、踏ん張ることができなくなります。つまり投げても打っても、動作が不安定になってしまうのです。

もし運動能力がまだ高く選手がチームにいるようでしたら、ぜひ腸腰筋と大腿二頭筋のコンディショニングを8週間程度のスパンで改善していってください。そうすれば運動能力はみるみる向上していくはずです。もちろん子どもだけではなく、筋肉が衰えてきた大人が再調整することでも良い効果を得ることができます。今より一段階も二段階も運動能力を向上させたい時には、ぜひ挑戦してみてください。
野球選手なら誰もが遠投練習をしたことがあると思います。もちろん投手にとってもこれは重要なトレーニングです。しかしやり方を間違えている選手が非常に多いようです。例えば80m程度の遠投ができたとしても、それが大きな山なりのボールではまったく意味があります。

なぜ意味がないかと言うと、山なりのボールを斜め上方へ向かって投げ出していくと、肘が必ず下がってしまうからです。試しにボールを真上に投げてみてください。肘を下げないと投げられないですよね?山なりのボールで遠投をするということは、肘が下げた状態でボールを投げるための練習をしている、と言うことなのです。

さらに言えば、外野から本塁にダイレクト返球ができたとしても、山なりのボールでは捕殺を得ることはできません。そういう意味でも山なりのボールで遠投をするというのは、パフォーマンスにプラスの影響はほとんどないと言うことができるのです。

そもそも遠投とは何のために行う練習なのでしょうか?より遠くへ投げるため?違います。ボールの重さを感じて投げるための練習なのです。遠投は低い軌道で投げられない場合、80mや90m投げられたとしても、それはただ地肩が強いという話だけで終わってしまうのです。野球に於ける遠投とは、どんなに高く行っても自分の身長の1.5倍を超える高さには投げないことが大切です。

成人選手の場合、できれば軌道の最高点は高さ2m前後で投げることが大切です。もしそれよりも高い軌道にボールを投げてしまえば本塁までの到達時間が長くなってしまうだけではなく、いざという時にカットマンがジャンプしても届かずにカットすることもできなくなってしまいます。

さて、遠投とはボールの重さを感じながら投げる練習だと書きました。18.44mの投球でも同じようにボールの重さを感じられることが理想なのですが、遠投だとボールの重さをより感じられるようになります。つまりボールの重さをしっかりと感じることができれば、遠投は40〜60mで低い軌道で行うだけでも十分なのです。

そもそも試合の中で外野手がフェンス際からダイレクトでバックホームする状況などまずあり得ません。イチロー選手であってもフェンス際からの返球はカットマンに返しています。つまりどんなに遠くても60〜70m程度の距離を投げるシチュエーションしか、試合の中ではないのです。

投手の場合、遠投といっても40m前後の距離でも十分です。小学生ならポジション問わず30mで十分です。ボールの重みを感じながら、40mの距離でもボールがお辞儀をすることなく、地面に対して平行の軌道で相手のグローブに収まるボールを投げること、これが一番大切です。

40mで良いボールを投げられれば、18.44mならばもっと良いボールを投げることができるわけです。バッターが打席に入る前、マスコットバットを振るようなものです。投手にとっての遠投練習とはリリース時に指先でボールの重さを感じることにより、腕をしっかりと振るための練習なのです。

プロ野球の1軍レベルの投手の場合、50〜60mであっても低い軌道で良いボールを投げることができます。しかしこれはあくまでもトップレベルの選手の場合です。例えばシニアリーグや高校野球の場合、まずは30mで良いボールを投げられるようにし、その距離を徐々に伸ばしていくという練習方法が最適だと思います。間違っても高さ3mを越すような軌道で遠投はしないでください。パフォーマンスが低下するだけではなく、肘が下がることが癖付き、故障にも繋がりかねないからです。
打者は毎日一生懸命、多い人では何百回も素振りをしますよね。でも投手の素振りとも言えるシャドーピッチングはどうでしょうか?もちろん素振りほど数多くやる必要はないのですが、しかしそれにしてもシャドーピッチングを大切にしている投手は一般的には少ないように感じられます。実際にCoach Kazのマンツーマン野球塾のクライアント投手に話を聞いても、シャドーピッチングをしたことはあっても、日常的に続けている投手は全体の1割にも満たないのが現実であるようです。それは打者の素振りとは異なり、シャドーピッチングはチーム内練習に組み込まれることがほとんどなく、あくまでも自主トレの範疇であることも起因しているのかもしれません。

シャドーピッチングとは、最も難易度の低いピッチング練習です。その理由は単純に、実際にはボールを投げないという点と、ボールという重みのあるものを持たないためです。そのためにシャドーピッチングを繰り返しても肩肘にかかる負荷は最小限に抑えることもできます。

Coach Kazのマンツーマン野球塾ではこのように考えています。シャドーピッチングでできないことは平地でのキャッチボールでもできないし、平地でのキャッチボールでできないことは傾斜のあるマウンドでもできない、と。このように話すと、「平地と傾斜のあるマウンドは別物」と考える方もいらっしゃると思います。しかし同じです。傾斜があってもなくても、投球動作は同一である必要があります。

平地で投げる際、伸びのある最も良いボールが行くのは相手の顔~胸の高さに行くボールです。このボールが、マウンドの傾斜を使って投げることによってストライクゾーンの真ん中から低めに行くようになるのです。マウンドとは、平地では高めにしか投げられない良いボールを、ストライクゾーンの低めに投げられるようにするためのものなのです。よく考えられた構造ですよね。

さて、シャドーピッチングに話を戻したいと思います。シャドーピッチングは負荷が最小限であるため、とにかく投球動作の形だけに集中して練習することができます。実際の投球のように制球や球速を気にしながら投げる必要はありません。だからこそ、体がよりリラックスした状態で投球動作を取ることができます。そしてリラックスできているからこそ、投球動作の改善ポイントを素早く見直していけるようになるのです。

シャドーピッチングでできるようになったら、次は平地でのキャッチボールで試してください。ここでできなければまたシャドーピッチングに戻り、できたならマウンドに入る、という流れを繰り返しながら投球動作を固めていくのが、Coach Kazのマンツーマン野球塾が考える最善の方法です。

シャドーピッチングは、できれば2人1組で行うがベストです。一方がタオルを振り、一方が動作を観察して「こうだったよ」と伝えてあげます。いくら強く意識をしても、自分で自分の動作を正確に知ることはプロの投手でも難しいことです。だからこそ2人1組、もしくは友だちや家族に手伝ってもらいながらシャドーピッチングをするのが、一番良いやり方だと言えるのです。

シャドーピッチングを実際のピッチングのオマケのように考えてはいけません。シャドーピッチングの延長線上に実際のピッチングがあると考えてください。シャドーピッチングとは、実際の投球動作を繰り返すための練習ではありません。実際の投球動作の良くない部分を改善するための練習です。だからこそ実際の投球動作をシャドーピッチングで繰り返すのではなく、シャドーピッチングでできたことを実際の投球動作でもできるようになる、ということが非常に大切になるわけなのです。

シャドーピッチングの重要性、シャドーピッチングに対する考え方が、今回のコラムで少しでも伝わってくれれば嬉しく思います。毎日5分10分でも構いません。とにかく毎日少しずつであっても、シャドーピッチングは毎日繰り返すことが大切です。ぜひ今日からは寝る・食べるに加えてシャドーピッチングも生活習慣に取り入れて行ってください。
投球フォームを安定させるためには、シャドーピッチングや投げ込みが何よりも効果的です。野球の動作というのは非常に繊細であるため、ちょっとしたことでも乱れてしまいます。例えば天気であったり、マウンドの形状であったり、そのようなことも投球フォームには影響が与えられます。そしてもう一点投球フォームを乱す要因として挙げたいのは、心肺機能です。

心肺機能というのは、意外と投球フォームに与える影響が大きいのです。例えばまったく疲れのない状態で投げた時と、ハァハァと肩で息をしながら投げるのとでは、フォームの安定感はまったく変わってきてしまいます。当然前者の方がより安定したフォームで投げられるため、パフォーマンスは向上します。一方後者では肩が多少なりとも上下してしまうことにより、それだけでフォームに乱れが生じてしまいます。

一般的には先発投手はロングラン中心、リリーバーはスプリント中心にトレーニングをするのが良いと言われています。これは遅筋、速筋の違いにも関係してくるわけですが、この考え方に対してはCoach Kazのマンツーマン野球塾も大まかな部分では賛成です。ですがここでさらに、心肺機能を高めるトレーニングを組み込んでいけば、投球フォームをそれまで以上に安定させることができるのです。

ファーストにゴロが転がれば、ピッチャーは一塁に向かってダッシュをします。そこでアウトを取った後は周囲が少し気を遣い、ピッチャーがゆっくり歩いてマウンドに戻れるようにします。これはつまり、息が上がっている投手の呼吸を元に戻すためです。野球をやっていれば、誰もが当たり前に行う対応だと思います。

ですがそうしたとしても、投手の息は少なからず上がっています。プロ野球中継を見ていても、肩や胸を小さく動かしている投手をよく見かけます。このような投手は筋力は強かったとしても、心肺機能が高くないためになかなか安定したフォームで投げることはできません。

例えば弓道というスポーツがあります。小さな的を狙うという意味では、野球の投手によく似ています。弓道というのは、呼吸が乱れてしまってはなかなか正確に的を射ることはできません。他の射撃競技も同様です。正確に的を射るためには安定した呼吸と、それを支える高い心肺機能が必要となります。そのために射撃や的を射る競技では心肺機能を高めるトレーニングを行ったり、元々心肺機能が高い選手を指名強化することがあります。

野球も18.44m離れた的に向かって正確にボールを投げる必要があります。それを可能にするためにも、高い心肺機能は絶対に必要なのです。例えば一週間に一度でも二度でも、完全に呼吸が苦しくなるまでシャトルランなどを行うと、心肺機能は見る見る向上していきます。心肺機能が向上すれば、ちょっとやそっとのことで息が上がることもなくなり、常に安定したフォームで投球を行えるようになります。

投手というのは、ただ漠然と走ればいいというものではありません。このように、常に何らかの目的を持って走らなければ、そのトレーニングで最大の効果を得ることはできないのです。努力を一つも無駄にしないためにも、ラントレーニング一つとってもしっかりと目的を持ち、最大限の効果を得られる手法で取り組んでいってください。
身体能力の鍛えやすさには種々、その年代にフィットした内容のものがあります。一般的には小学生までは俊敏性、中学生は持久力、高校以上は筋力ということになります。多少の個人差はあるわけですが、基本的にはこれを目安にトレーニングを行っていくのが理想です。

まず俊敏性に関してですが、この能力が伸びるのはだいたい12歳くらいまでとなります。俊敏性とは100m走や鋭いフットワークなど、瞬発力を要する能力のことです。12歳までは鍛えれば鍛えるほど俊敏性が高まっていきますので、例えば小学校低学年で短距離走が苦手な子が、高学年ではリレーの選手になることもできるのです。ですが12歳まで短距離走が苦手な選手が、中学生になってから急に短距離走が得意になることはありません。もちろん体の成長に合わせて走力自体はアップしていきますが、それは誰でも同じことです。

持久力に関しては13~15歳という年代で一気に伸びていきます。逆に小学生のうちは一生懸命長距離を走ったとしても、思うようにその能力が伸びないことが多いのです。ですが小学生の頃は長距離走がまったく苦手だった子が、中学生になって突然得意になるというケースも少なくありません。そして中学時代に長距離をしっかり走っておかないと、高校以降で持久力をアップさせることは非常に難しくなります。

筋力に関しては、筋肉の大きさや強さという風に考えてください。冒頭では筋力がアップしやすいのは高校生以上と書きましたが、これは成長に大きく関係してきます。身長が伸びているうちは、ハードな筋力トレーニングを行うべきではありません。もちろん基礎体力作りとしての筋力トレーニングは小中学生のうちからやっても良いとは思いますが、しかし小中学生のうちから重いダンベルやジムでマシンを使いながら本格的にやってしまうと怪我をしやすい体になってしまったり、筋力が骨に対して強くなり過ぎることで骨の成長を留めてしまい、身長が伸びなくなることがあります。

Coach Kazのマンツーマン野球塾としては、マシンや重いダンベルを使ったトレーニングは、身長の伸びがある程度止まった時点から始めるべきだと考えています。身長は22歳まで伸びる可能性があるわけですが、それは本当に個人差が大きくなります。中学生で一気に180cmになる子もいれば、少しずつ伸びて大学生になって180cmに到達する子もいます。

トレーニング内容はいつでもバランスが大切になってくるわけですが、一般的に考えると小学生までは短距離走をしっかりやっておくことが大切です。野球選手であっても友だちと一緒にサッカーや鬼ごっこなどをして、スプリント力やフットワークを鍛えることが大切です。なぜならこの能力は中学以降で大きく伸ばすことが難しいからです。

小学生のうちに俊敏性を高めたら、今度は中学では持久力を伸ばしておきましょう。持久力が大きくの伸びるのは13~15歳くらいまでです。例えば埼玉西武ライオンズで活躍する菊池雄星投手は、中学時代は雨の日も雪の日も晴れの日も、毎日10kmのロードワークをしていたそうです。菊池投手にスタミナがあるのは、中学時代にそれだけ長距離を走っていたからなのでしょう。

小中で俊敏性と持久力を高めたら、高校に入ったらいよいよ筋力アップの時期です。ですが身長が大きく伸びているうちは激しい筋力アップは控えましょう。あくまでも身長の伸びがある程度収まるか、緩やかになってからの方が良いと思います。ただ、筋力アップに関しては体が固まってからであれば、年代問わずいつでも目指すことができます。俊敏性や持久力のように、特定の年代で伸びやすいということはありません。小中学生でももちろん筋力はアップできます。しかし繰り返しますが怪我をしやすくなったり身長が止まってしまうことがありますので、小中学生のうちは過度な筋力トレーニングには注意が必要です。

お子さんがスポーツをされているようでしたら、この記事の内容を踏まえつつアドバイスを送ってあげてください。そうすればお子さん自身も、知らず知らずのうちに論理的に練習に取り組むという環境になっていき、将来的にもしっかりと考えながらトレーニングを行っていける選手になれると思います。
近年スポーツ界では体幹トレーニングが大きな注目を集めており、もちろん野球界でも多くの方が体幹の大切さを説いています。ですが選手と話をしていると、この体幹に関し大きな勘違いをしていることがあるのです。理解の仕方を間違ってしまうと最善の結果を得られなくなってしまいます。パフォーマンスを思い通りに向上させていくためにも、トレーニングをする際は正しい考え方のもとで行うようにしましょう。

体幹とは簡単に言うと、胴体のお腹周りのことを言います。いわゆる腹筋・背筋という部位ですね。更にコアという言葉を使う時はその更に深部にある細かい筋肉を指していることもあります。これらの部位を鍛えることが体幹トレーニングであるわけですが、ただ筋肉を付ければ良いという訳では当然ありません。例えばシックス・パックと呼ばれる、6つに割れた腹筋があります。これだけの筋肉が付いていたとしても、例えば横や斜め、後ろの筋肉が弱ければまったく意味はないのです。

Coach Kazのマンツーマン野球塾のクライアントである選手たちに、普段行っている腹筋トレーニングを見せてもらうと、ほとんどの選手は1~2種類しか行っていません。体育の授業でやるような腹筋・背筋運動がありますが、こればかりを行っていても体幹トレーニングにはならないのです。腹筋や背筋にはいくつもの筋肉が存在しています。それらの筋肉一つ一つに合ったトレーニングを行い、たくさんの筋肉を万遍なく鍛えていくことが大切なのです。上半身でもそうですよね。上腕二頭筋のトレーニング、上腕三頭筋のトレーニングと、筋肉の部位によってトレーニング方法を違ってきます。毎日単調な腹筋運動を行い、腹筋を6つも割るだけでは選手としてはまったく意味がないのです。

そしてさらに言えば、ジムに置いてあるマシンだけで腹筋を鍛えてもいけません。もちろん健康のためにトレーニングをしているだけならばそれでも十分です。ですがこのコラムを読んでいる方のほとんどはプレイヤーであるはずです。プレイヤーであるならばパフォーマンスを向上させるためには、マシンを使ってただ筋肉を大きくするだけではなく、同時にバランス感覚も養いながらの体幹トレーニングが必要となります。例えばバランスボールを使った体幹トレーニングなどです(※マシンを使ってはいけない、ということではありません)。

経験がある方も多いと思いますが、バランスボールを使った体幹トレーニングは想像以上にキツイものです。その理由は、マシンや単調な腹筋運動とは異なり、複数の筋肉が同時に働くためです。つまり静止していたとしても複数の筋肉間で動きのある中で鍛えていくことができるのです。「腹筋がたくさんできること+背筋力の数値の高さ=強い体幹」、という方程式はまったく成り立たないのです。

例えば体幹トレーニングのやり方を間違って、シックス・パックを作るためだけのトレーニングを続けてしまった投手は、脇腹や腰回りを痛めやすくなってしまいます。何事にもバランスが重要なのです。適切な体幹トレーニングを行うためには、まずはどんな筋肉があり、どんな働きをしているのかを理解した上で、それぞれの筋肉に合った複合的なトレーニングを行っていく必要があるのです。腹筋運動を100回200回できるというだけでは、アスリートとしてはまったく意味がないのです。

野球選手として必要なトレーニング方法を学びたいという方は、ぜひCoach Kazのマンツーマン野球塾にご相談ください。担当コーチがマンツーマンで体幹トレーニングをコーチングさせていただきます。

少し前の話ですが、ある日本人メジャーリーガーが走り込みはそれほどのスタミナアップには繋がらない、とツイートしていました。でもこれは半分は正解ですが、半分は不正解です。不正解と言うのも変なのですが、つまり彼が言わんとするところは別にあったのではないかな、と考えられるわけです。

投手育成コラムでも書いてきた通り、走り込みをすることによってピッチングのスタミナが向上することはほとんどありません。これはまさに前述のメジャーリーガーの言葉通りです。ですが基礎体力面でのスタミナは、走り込みによって大幅な向上を期待することができます。これはもちろん走り込みだけではなく、有酸素運動全般に言うことができます。

ではなぜ野球界では走り込みが重要視されるのか?その理由はまず、辛い走り込みトレーニングをすることにより、基礎スタミナ以外で精神的スタミナも鍛えることができるからです。分かりやすく言えば、辛抱強くなれる、ということです。ピッチャーというポジションは、精神的負担が非常に大きいポジションです。その負担に負けない精神力を培うためにも、走り込みは良しとされています。だからこそ辛い走り込みはダラダラと走っても意味がなく、しっかりとした目的意識を持ち、適切なフォームで走ることが重要なのです。

続いて基礎スタミナに関する話ですが、これは毛細血管のことです。毎日継続して有酸素運動を行うと、毛細血管がどんどん増えていくのです。投げた後、肩や体が火照りますよね?これは体中の毛細血管が切れているということなのです。アイシングというのは毛細血管のさらなる切れを防ぐために行うわけなのですが、走り込みをして毛細血管をしっかりと増やしておくと、登板日にそれが多く切れてしまったとしても、残り数が多くなるため、疲労感がそれほど残ることがないのです。つまり、回復力が高まるということです。

一度切れてしまった毛細血管は、二度と繋がることはありません。そのため毛細血管は有酸素運動によって次々と増やしていく必要があるのです。そうしなければ基礎スタミナ、基礎体力と言い換えても良いかもしれませんが、これがどんどん低下していってしまうのです。

基礎スタミナが低い選手は、激しいトレーニングや練習に耐えることはできません。その結果、技術が思うように伸びなくなるわけなのです。逆に基礎スタミナが高い選手はたくさんの練習をこなせるため、どんどん上手くなることができるのです。

前述のメジャーリーガーは走り込みを否定していますが、しかしこれは、走り込みをしなくても良い、という話ではないのです。あくまでも走り込み以外のトレーニングで毛細血管を増やし、基礎スタミナを向上させることができる、という意味合いで話していたのだと思います。ですので走り込み以外で有酸素運動をこなす手段を持たない選手は、これからも迷うことなくどんどん走り込んでいくことをオススメします。

投手育成コラムでは、これまで幾度となく筋肉は増やし過ぎてはいけない、と書き続けてきました。しかしこれは、絶対に増やしてはいけない、という意味ではありません。実は増やしても良いのです。投手であってもどんどん筋肉を増やしても良いのです。しかしそれは、増やした筋肉を制御できるということが大前提です。

例えばテキサスでプレーをするダルビッシュ有投手は、数年前と比較すると体はかなり大きくなっています。ですがこれだけ筋肉を増やしても、増やした筋肉をしっかり制御できているためにパフォーマンスが低下しないどころか、逆に凄味を増しています。逆に松坂大輔投手は本当に素晴らしい投手ですが、筋肉の増やし方を少しだけ間違ってしまったのかな、と思います。西武ライオンズに入団したころの松坂投手は細身でしたが、155kmというボールを投げていました。

ですがメジャーリーガーのように筋肉を増やしていくと、球速は徐々に低下し、大きな故障も抱えてしまいました。もちろん一概に断定することはできないわけですが、増やした筋肉を上手く制御できなかったのが松坂大輔投手だったのではないでしょうか(あくまでも推測です)。

日本球界には筋肉を増やして失敗してしまった投手が多数います。しかしそれは筋肉を増やしてしまったことが間違いだったのではなく、制御できない筋肉の増やし方をしてしまったことが間違いなのです。

例えば「今日は筋トレ中心の日」と決めている選手は意外と多いと思います。しかし筋トレでトレーニングを終えてはいけません。筋トレをしてそのままストレッチングをして一日を終えてしまうと、筋肉は筋トレのための筋肉になってしまい、投手なら投手、野手なら野手として最大限に活かせる筋肉になってくれないのです。つまり制御できない筋肉が増えてしまうのです。

筋トレをするタイミングの理想は、練習前です。筋トレをしてからチーム練習に入れば、筋肉は否応なく野球の動作でその日を締めくくることになります。そうすれば筋肉を少しずつ増やしていっても、制御し切れなくなることはなくなります。

練習後や寝る前に筋トレをしてしまうと、どうしても筋トレの動作で筋肉は一日を終えてしまうことになります。すると野球の動作に順応することが難しくなり、せっかく体を大きくしてもパフォーマンスが低下してしまう、という結果にもなってしまうのです。ですので筋トレをする際はバランスと、筋トレをするタイミングも大切にしながら頑張るようにしてください。

投手育成コラムでは過去何度か、投手は筋肉を増やし過ぎるべきではないと書いてきました。このことをもう少し書き進めてみたいと思います。まず筋肉が大きくなり過ぎてしまうと、投球時の腕を大きく振ることでしかボールが投げられなくなってしまうのです。つまり、より体から遠いところでボールをリリースしなければならず、これではボールに与えられるスピンも減り、初速と終速の差も大きくなってしまいます。初速150kmのボールを投げられたとしても、終速が130km台まで落ちてしまっては意味がありません。

肩・腕・胸・背筋を大きくし過ぎてしまうと、どうしても腕の可動域に制限が出てきてしまいます。制限がかけられることにより、腕は遠回りしてしまうのです。ですので投手の筋力はあくまでも、強いボールを投げた時の衝撃に耐えるという意味で強化するようにしましょう。

スローイングアームの可動域が狭まれば、ボールに与えられるスピンは減ります。これはストレートだけではなく、変化球にも同じことが言えるのです。ではスピンが少ない変化球はどうなるでしょうか?答えは簡単ですね。打者よりも大幅に手間で変化をしてしまい、打者の手元まで行ったころには曲がり終えてしまいます。打者からすれば、曲がり終えた変化球ほど打ちやすい球はありません。実はこれが、変化球を活かすためにはストレートが重要であるという理由の大きなひとつなのです。

スライダーやカッターといった変化球は、打者の手元で曲がってこその変化球です。もし打者が捕手寄りに立っていれば、良い変化球であっても曲がり終えている可能性があります。だからこそボールに、より多くのスピンをかけるため、スローイングアームの可動域を狭めてしまうようなトレーニングは避けなければならないのです。

初速と終速の差が10kmあったとしても、終速が150kmであればそう簡単には打たれないとは思います。しかしそのためには初速160kmのボールを投げることが求められ、それができるのは本当に限られた一部の投手だけです。だからこそボールにより多くのスピンをかけ、初速と終速の差を縮めることが何よりも大切なのです。

他の投手よりも多くボールにスピンをかけられているのは、ダルビッシュ有投手や藤川球児投手です。彼らは他の投手よりも多くのスピンをボールに与えられることができるため、あのような素晴らしいストレートを投げることができるのです。投手が筋力トレーニングをする際は、関節可動域を確認しながら、ダルビッシュ投手や藤川投手のようなバランスの良い体を目指すようにしましょう。