筋肉痛は怪我ではないけど無理をすべきでもない
今回は「野球選手と筋肉痛」について少し考えていきたいと思います。強度の高いトレーニングなどをすれば、現役選手であっても筋肉痛になることはあります。筋肉痛は決して怪我というわけではありませんが、しかしだからと言って無視をすべきでもありません。
通常筋肉痛は放っておいても2〜3日で治ると思います。しかし気をつけたいのは、筋肉痛は怪我とは言えないものの、痛いという事実に変わりはないという点です。痛いと感じている時点で、いつも通りのフォームで投げることはできません。ですので筋肉痛の中無理して投げるよりは、まずは筋肉痛をできる限り早く治すということを優先していくべきです。
下半身の筋肉痛であれば土台で踏ん張れない分、上半身で投げざるを得なくなってしまいます。逆に上半身が筋肉痛であれば可動域が狭まり、投球時に肘が下がる可能性が非常に高くなります。
筋肉痛ではフォームの再現性を高めることはできない
野球の練習で非常に重要なのは再現性を高めることです。つまり、いつでも「まったく同じ良いフォーム」で投げられるようにするということです。しかし筋肉痛の状態ではそれができなくなってしまいますので、筋肉痛の状態で投げ続けてしまうと、「筋肉痛があるという前提で投げるフォーム」を体を覚えてしまうことになります。つまり、良くないフォームを覚えるための練習になってしまう、ということですね。
動いていればまったく気にならない程度の軽い筋肉痛であれば、運動強度を落としてピッチングを続けても良い場合もあります。しかし投げたり打ったりする中で痛みを実感するレベルの筋肉痛の場合は、投球は一旦お休みして、まずはより早く筋肉痛を治すための有酸素運動などを重点的に行うのがベストです。
筋肉痛が嫌いで筋トレをしないプロ野球選手もいる?!
プロ野球選手の中には、筋肉痛を嫌うあまり筋トレを一切行わないという選手もいます。例えば埼玉西武ライオンズの中村剛也選手などはそのひとりです。野球で使う筋肉は、野球の動作で鍛えていく、という考え方ですね。
僕はプロコーチとしては、強度の高い運動にも耐えられるプロテクターを作るためには筋トレは必要だと考えています。球速をアップさせる目的で筋トレを行うべきではありませんが、動作改善によって球速がアップした時の衝撃に体が耐えられるように筋トレをしておくことは必要です。
しかし筋トレといってもダンベルを持ち上げるだけが筋トレではありません。例えば小学生の場合はピッチャーの球速は速くても100km程度だと思いますが、100kmのボールを打った時の衝撃にも耐えられるように、バッティングセンターでは時々120kmを打つ練習も取り入れる、というのも一つの筋トレの形です。
ピッチャーならば通常はJ号を使うところ、M号を少し力を抜いて投げることによって肩の筋肉を鍛えるというやり方もあります。スポーツショップに行くと通常よりもかなり重いトレーニング用の野球ボールも市販されていますので、そのようなアイテムを使うのも良いと思います。
また、筋肉痛の時はそのような重いボールを軽く投げることによって筋肉をほぐしてあげる、というコンディショニングも効果的です。軽く投げる動作であれば、その動作を筋肉が覚えることもないため、筋肉が間違った動作を覚えることによってフォームを崩してしまう危険性もありません。
ということで野球選手が筋肉痛になった場合は、まずはしっかりと有酸素運動を増やして早く治すというアプローチと、重いボールを使って筋肉をほぐしてあげるという作業が効果的ですので、筋肉痛の時は無理して投げるのではなく、これらのアプローチによってまずはコンディショニングを優先するようにしてください。