筋力で球速をアップさせようとすると肩肘を痛めやすい!
投手育成コラムではもう何度も書いていることではありますが、筋トレで球速をアップさせるやり方は間違いです。一流のプロ野球選手たちを観察してみてください。技術のあるピッチャーは、体重が70kg前後であっても150km/hを超えるスピードボールを投げることができます。
しかし技術のないピッチャーは筋力を増やして、体重が90kg以上になってもコンスタントに150kg/hを超えるボールを投げることはできません。さらにそういうピッチャーの多くが肩肘を怪我しています。だからこそ球速アップは筋力ではなく、技術で目指すべきなんです。ということで今回は、球速をアップさせるコツをご紹介したいと思います。
加速距離を延ばすことによって球速をアップさせるのがコツ!
結論から言うと、ボールを加速させる距離を長くすることによって球速をアップさせていきます。もちろんそのためには適切な下半身の使い方とキネティックチェーンが成り立っていることが前提になるわけですが、下半身の動作が適切にコーディネイト(動作調整)されていたとしても、加速する距離が短ければ球速はアップしないわけです。
じゃあどのように加速距離を延ばせばいいのか?!肩関節の内外旋の順番を間違わない、ということも必須なわけですが、今回は動作それぞれのタイミングに関して解説してみたいと思います。平地でキャッチボールをする際、非軸足がランディング(着地)する瞬間、ボールはどこにありますか?多くの選手が頭と同じくらいの高さに来ていると思います。しかしこれでは球速はアップしません。
テイクバックはランディング時に作るべし!
150km/hのストレートを投げている投手の腕を振っているスピードを計測しても、せいぜい100~110km/h程度なんです。つまりいくら一生懸命腕を強く振ろうとしても球速はほとんどアップしないんです。しかしゆったりと動いているように見えても、加速距離が長い投手のボールは簡単に150km/hを超えていきます。ちなみにこの加速距離のことを野球用語でアクセラレーション・フェイズと言います。
スローイングアームというのは、足をしっかり踏ん張った状態でしか本当の意味で鋭く振ることはできません。踏ん張らずに鋭く振ろうとしても球速は大してアップしませんし、土台が安定していない分、制球力も大幅に低下してしまいます。
非軸足をランディングさせた際、スローイングアームがまだ下向きの正方形になっているのがベストです。つまりテイクバックの形ですね。平地でキャッチボールをしている際、ランディングではまだテイクバックの形、というのが最上級です。ですのでまずは緩やかな動きで、この形を目指して投げていただくといいと思います。
球速がアップしても怪我をしてはまったく意味がない!
ちなみにマウンドでは傾斜がある分、ランディングでは前腕が水平ラインまで上がっているくらいで大丈夫です。もちろんマウンドで投げている時でもランディングとテイクバックのタイミングを揃えることはできるのですが、これは簡単ではなく、人並外れた肩甲骨の柔軟性も必要になってきます。ですので無理はせず、マウンドではランディングの瞬間に、コッキングの中間地点(前腕が水平まで上がる地点)を揃えられれば十分です。それだけでも球速は目に見えてアップするはずです。
野球をする上で大切なのは、とにかくどこも怪我をしないことです。160km/hのストレートを投げられるようになったとしても、怪我をしてしまってはまったく意味がありません。そしてまだ骨も固まっていない小学生の場合、野球肩や野球肘によって骨が変形してしまい、日常生活でも痛みを感じるようになるケースもあります。
コーチに指導スキルがあれば野球肩野球肘は防げる!
コーチに適切な動作指導(バイオメカニクス)の知識があれば、野球肩や野球肘はほとんど確実に防ぐことができます。怪我をしてしまっては野球を楽しむことなんてできませんので、怪我をしにくい投げ方を身に付けることによって球速アップを目指すようにしてください。
ちなみに今回の投手育成コラムでご紹介した技術は、下半身を適切に使えていれば小学生でもマスターできる技術です。そしてもし球速をアップさせるための技術をガッツリ学びたいという方は、ぜひ僕のオンラインレッスンを受講されてみてください。いろいろなことを具体的に、わかりやすく毎日レッスンしています。