この冬から、アマチュア野球の球数制限への意識が高まりつつあります。まず新潟県の高校野球が導入し、そして学童軟式野球にも導入され。とても良いことだと思います。学生野球というのはあくまでも教育の一環であり、酷使をする場ではないからです。そしてもちろん、選手として完成させる必要もありません。
人間の身長というのは、実は22歳までは伸びるんです。つまり生物学的には22歳までが成長期である、という表現をすることもできます。そして成長期というのはあくまでも成長期であって、完成をさせるための年代ではありません。しかし日本では勝利至上主義がまかり通っており、世代世代で完成させようとしてしまう指導者が非常に多いという現状です。
『タッチ』の上杉和也投手のように、自主的に考えながらできる限りのトレーニングをしてエースになるというケースは稀ではありますが、これは理想だと思います。しかし日本の小中学生チームの現状はどうでしょうか?チーム練習が1日6〜8時間あり、自主練習や勉強ができないほどクタクタにさせられてしまうことも少なくありません。
チーム練習は6時間もやる必要などまったくありません。もし私が少年野球のメニューを組むとすれば4時間です。まず1時間ウォームアップし、2時間野球をして、1時間ボディメンテナンスを行う、という4時間の使い方です。グラウンドは通常2時間単位で借りると思いますので、この4時間の使い方であればグラウンドはまさに2時間だけ借りられれば問題ありません。活動時間も午前中だけで終了です。
さて、完成というのは言い方を変えれば頭打ちさせる、という表現もできます。もちろん素直な言葉の使い方ではありませんが、見る方向を変えればそういう見方もできます。つまり、例えば小中学生の段階で完成させようとしてしまうと、選手としての伸び代が狭くなってしまうということです。
例えば甲子園で大活躍したスーパーエースたちのプロ入り後の結果を観察すると、果たして何人の甲子園の大スターがエースピッチャーとしてプロで活躍できたでしょうか?松坂大輔投手を含め、人数は非常に少ないはずです。近年で言えば大谷翔平投手は怪我に苦しみ、藤浪晋太郎投手も長年不振にあえいでいます。
逆にプロで20年前後一線で活躍した投手を観察すると、アマチュア時代には完成させられず、伸び伸びと野球をやっていた選手が大半です。野球で一番大事なことは、とにかく怪我をしないことです。怪我をしにくい良い投げ方でたくさん練習をするのであれば問題もないのかもしれません。しかしその動作の指導ができていない状態で子どもたちに一日中野球をやらせるというのは、これは正しいやり方だと言うことはできません。
私のマンツーマン野球塾では、とにかく動作の土台作りを徹底して行なっています。下半身の使い方が本当に良い形になってくれば、実は上半身というのは自然と良い動きへと変わり始めるものなのです。しかし土台が不安定な状態でたくさん練習してしまっては、良い効果というのはほとんど得ることはできません。
多くの野球指導者が怪我をしにくい良い動作を指導できないのであれば、やはり球数制限や練習時間の制限によって子どもたちの体を守っていくしか方法はないのかもしれません。