わたしはコーチとして常々抱いている懸念があります。それは野球界の喫煙率が非常に高いということです。プロ野球選手の喫煙率も非常に高いですし、少年野球の指導現場でも大人たちが喫煙している姿を普通に子どもたちに見せてしまっています。これはやはり野球連盟が主導して早急に改善していかなければならないことだと思います。
少年野球の指導現場で大人たちが普通に喫煙をしていれば、子どもたちはそれが普通のことなのだと認識するようになります。そして子どもは大人に憧れます。つまり身近な大人が喫煙をしていれば、子どもたちはそれが格好良いことだと勘違いしてしまい、近い将来タバコに手を伸ばすようになってしまいます。高校野球を見ても、選手の喫煙により大会への出場を辞退するというケースがあとを絶ちません。みんな喫煙することを、格好良いことだと完全に勘違いしてしまっているのです。
現役時代クリーンナップを打っていたあるプロ野球選手は引退後に禁煙したのですが、お話を伺うと、現役時代に禁煙すべきだったと深く後悔していると話してくれました。そして今では若いプロ野球選手がタバコを吸っているのを見かけると、自分の経験を交えながら禁煙を勧めているそうです。
喫煙をすれば心肺機能が大幅に低下します。心肺機能が大幅に停止すれば体内を巡る酸素の量も減ってしまい、回復力の低下を招いてしまいます。そしてしっかりと体が回復していない状態でプレー、練習を続ければ、簡単に怪我をするようになってしまいます。
他競技のアスリートたちの考え方と比較すると、プロ野球選手の喫煙・飲酒に関する意識は比べられないほど低いと言えます。もちろん適切な考え方を持っている選手も多いわけですが、それ以上に意識が低い選手の方が多いと言えます。
そして喫煙している選手に話を聞いてみると、ほぼすべての選手が禁煙できない言い訳を持っていました。つまり野球のパフォーマンスを上げるために禁煙するつもりはない、ということです。
わたしはコーチとして、喫煙しているプロ野球選手からのコーチング依頼はすべてお断りしています。飲酒に関しても、お祝い時はもちろん構いませんが、日常的に飲酒している選手のコーチングも断っています。
喫煙しているプロ野球選手にもう少し深く話を聞いてみると、少年野球時代、身近にタバコを吸っているコーチがいたという選手がほとんどです。やはり少年時代に身近に喫煙者がいると、将来喫煙者になってしまうケースが多いという風に考えることができます。
ちなみにアメリカ球界は喫煙に対して非常に厳しくなっています。普通のタバコはもちろん、電子タバコも、煙が出ない噛みタバコも禁止されているため、メジャーリーガーの中に喫煙者はほとんど存在しません。そのため来日する外国人選手は、日本のプロ野球のベンチ裏に灰皿が設置されていることをとても嫌がります。
やはり日本でも、少年野球からプロ野球まで、球場内やその付近での喫煙の一切を禁止すべきだと思います。ところで、少年野球のグラウンドの端の方を歩いたことはありますか?タバコの吸い殻がたくさん捨ててあることに気づくと思います。