当野球塾は2010年1月にスタートして以来、これまでに軽く1000人を超す人数のコーチングを行ってきました。しかしその中で非常に気になるのが、柔軟性の低い選手が非常に多いということです。柔軟性の高さというのはスポーツで上達するためには絶対不可欠な要素です。にも関わらず他のスポーツをしている選手たちと比較をすると、野球チームにおける柔軟性の低い選手の割合が非常に多いというのが現実です。
柔軟性が低ければ筋疲労の回復も遅れますし、タイトな動きしかできないため怪我もしやすくなります。また、関節可動域が狭まるために加速動作も短くなり、ピッチャーであれば球速を上げることも難しくなります。さらに体が硬い選手は、制球難やイップスになる可能性が、柔軟性の高い選手と比べるとグンと高くなります。
イップスの最も大きな原因はクロスインステップです。イップスに悩んでいる選手で、インステップの気がまったくないという選手は、当野球塾においてはほとんどいませんでした。そして柔軟性が低く、股関節の可動域が狭い選手というのはクロスインになることが非常に多いんです。ステップをしていき、足部を着地させるまでの間につま先を真っ直ぐ向けられるだけの可動性が股関節にないためです。
股関節周辺の柔軟性が非常に高く、なおかつ股関節を深く使ってボールを投げられている選手で制球力が明らかに低いという選手は、年代問わずほとんど見たことはありません。
ですので怪我を防ぐ、回復力を低下させない、球速をアップさせる、制球を安定させるという面において、柔軟性というのは非常に重要な要素なのです。近年は高校であってもトレーニング設備が充実し、ガンガン筋トレをやってしまう選手が多く、その筋力によってパフォーマンスを上げようとしてしまうことも多いと思います。しかしそのやり方はもちろん間違いです。
筋力というのは柔軟性あってこそのものです。ですので筋力を増やす際は、今以上に柔軟性を向上させるられるように工夫しながら行う必要があります。それを行わずに筋トレばかりをやってしまうと、柔軟性の低い体の状態を維持するための筋力を作る結果になってしまい、スポーツではあまり役に立たない筋肉になってしまいます。
ですので特にまだ体が出来上がっていない小中学生チームの場合は、仮に4時間練習するならば、そのうちの最後の1時間は丸々ストレッチングに使うべきだと思います。そうしなければ根本的に上達できる選手の割合を増やすことはできません。また、柔軟性が低く股関節を使えない投げ方というのは、肩肘を使ってでしか投げられなくなりますので、野球肩・野球肘のリスクも大幅に上げてしまう結果になるのです。
さて、今現在このコラムをお読みいただいている少年野球の指導者の方の中で、なぜ野球肩・野球肘になってしまうのか、それを明確に理解されている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?それを理解せずにフォームをあれこれ教えてしまうと、怪我をしやすい投げ方を教えてしまう結果になります。ですので選手はまずは柔軟性、コーチはまずは正確な知識が必要となるわけですね。