バックスピンはオーバーハンドスローのピッチャーしか投げられない!と思っている方は不正解です。スリークォーターでも、サイドハンドスローでも、アンダーハンドスローのピッチャーでもバックスピンストレートを投げられることは可能なのです!しかもジャイロボールのようなスローボールでではなく、速球として投げられます。
ジャイロ回転のボールに関しては練習すれば誰にでも投げられるようになります。しかしそれで速球を投げることはできません。現に速いジャイロボールを武器としている投手はおらず、かつてジャイロボールを提唱した手塚一志コーチ自身、アンダーハンドスローに優位性のあるボールであると解説されています。
トップポジションからボールリリースにかけ肩関節は内旋過程にあります。トップポジションで最大外旋状態になり、そこから少しずつ内旋しながらボールリリースでニュートラル(肩関節が内旋も外旋もしていない中間地点)になり、リリース後は引き続き内旋し、フォロースルーでニュートラル状態に戻します。この肩関節の動かし方で投げられると肩肘への負荷を大幅に軽減させられるだけではなく、何投げで投げてもバックスピンストレートを投げられるようになるんです。
そして上述した投げ方は、股関節を適切に動かした投球動作でなければ実現は不可能です。なぜなら股関節を使わなければ肩の水平内転動作でボールを投げるしかなくなり、内外旋はほとんど使えなくなり肩肘への負荷は大きくなり、オーバーハンドスローで投げていたとしてもサイドスピンがかかるようになってしまうからです。
非軸脚側の股関節を最大外旋状態から最大内旋状態へのフルの幅で使うことにより、初めて肩関節を使わずに投げる良い動作を身につけられるようになります。
ちなみにスピードガン的に最も球速を出しやすいのはサイドハンドスローです。ただし腕が横振りになりやすく、一般的にはサイドスピンになってしまうためストレートの伸びは、オーバーハンドスローほどは出ません。ですが股関節を最適な形で動かせるようになるとサイドハンドスローのそのウィークポイントを一瞬で克服することができるんです。つまりサイドハンドスローは球速もバックスピンも最大限の状態にすることができる、最強のピッチャーになれるというわけです。例えばランディ・ジョンソン投手のような。
当野球塾では投法は何でもいいと常々伝えています。オーバーハンドスローでもサイドハンドスローでも、トルネード投法でもマサカリ投法でもサブマリン投法でもザトペック投法でも。重要なのは見た目のフォームではなく、メカニクスとなるモーションです。モーションさえ適切であれば見た目はどんな投げ方だって良いんです。
ピッチングマスターコースではとにかく股関節を使えるようになるためのコーチングを常時行なっています。それができるようになるからこそ肩肘を使う必要がなくなり肩肘を故障しにくくなり、腕に頼って投げない分腕の振りがコンパクトになり制球力がアップし、同時にスピン数を増やせるようになるのです。
当野球塾の塾生たちの中にも、数人だけ最良の形のサイドハンドスローをマスターできたピッチャーがいました。もちろん試合でも怪我なくエースとして活躍し続けています。今後も怪我なく試合に勝てる投手が多く育っていって欲しいというのが、コーチとしてのわたしの切なる願いです。