例えば2回戦であまり良い勝ち方ができなかった投手は、3回戦の前にたくさん投球練習をして、今度は良い内容で勝ちたいと考えます。すると時に、その練習時の球数が疲労として蓄積されてしまうのです。投手の疲労は球速が低下すれば分かる、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれは誤りです。投手とは本能的に、いつもより球が走っていない時はいつも以上に上半身に力を入れて投げてしまうのです。投手によっては肩が軽い日よりも、調子が悪い日の方が力を入れて投げている分球速が出ることもあるのです。
球数制限は投手の肩を守るための一定の効果はあると思います。ですが根本的にそれを解決するためには、やはり監督や投手コーチの投手を見る眼力を養わなければなりません。どんな投手であっても、スタミナ切れが近づくと必ずそれを知らせる変化が表れます。それを的確に見抜けなければ、投手に必要以上の無理を強いることになり、肩や肘を痛める大きな原因となってしまうのです。
小学生野球などでは特に、チームに一人しかストライクを取れる選手がいない場合、その選手ばかりが投手を務めるケースが少なくありません。しかも球数制限のないリーグのチームに限って、そのような状況であることが多いようです。小学生の体はまだまだ未熟です。その未熟な体に無理をさせてしまえば、当然肩肘を痛める結果になります。
スタミナ切れが近付いてきた時の症状は、投手によって様々です。急に制球が乱れるタイプ、下半身が浮き出すタイプ、腕の高さが変わり始めるタイプなど、それは指導者が投手一人一人をしっかりと観察し、見極めていく必要があります。今回のコラムは球数制限がテーマであるわけですが、例えば前回の試合で29球しか投げていなくても、次の試合までに練習で300球投げていたらそれは当然疲労として残るわけです。しかし試合では29球しか投げていないため、例えばWBCでの球数制限に引っかかることはありません(制限ルールはリーグや大会によって異なります)。
そのような理由から、Littlerockheartでは球数制限には一定の効果はあっても、投手の肩肘を守る根本的な解決にはなっていないと考えているのです。疲労によって投手を壊さないためには球数制限以上に、指導者の投手を見る眼力が何より必要なのです。特に小学生という繊細な年代の選手を指導されている方は、誰よりもその眼力が必要だと言えます。
話を聞いていると、とにかく小学生で肩痛を抱える選手が非常に多いのです。試合で投げる度に病院に行っている選手もいるほどです。そのような悩みを抱えている選手が今よりも大幅に減っていかない限り、球数制限が根本的な解決法であるとは言えないわけなのです。ですが逆の見方をすれば優秀な指導者も多い一方、眼力がない指導者も多いからこそ球数制限を設けざるを得ない、という考え方もできます。
野球指導を行っている方で投手を見る眼力に自信のない方は、ぜひLittlerockheartにご相談ください。一緒に選手を見ることで、その選手がどのようなタイプであるのかをプロの目からアドバイスさせていただきます。