「お腹が出てもできるスポーツ」と揶揄されることもある野球。しかし当然ですが、お腹が出ているような選手がベストパフォーマンスを発揮できるほど甘くはないのが野球です。明らかに太っている選手は捕手や一塁手にされるケースも多いわけですが、アマチュア野球の場合は投手をやるケースも少なくないのではないでしょうか。その理由は、体重はパワーに直結する要素だからです。
物理的に考えるならば投球でも打撃でも、体重が重いほどボールに込められる力は大きくなります。つまり投手の場合、スウィングする腕の重量がある分、遠心力でより速く腕を振ることができるのです。しかしこの投げ方は安全ではありません。なぜなら太っている選手の場合、慣性モーメントが大きくなってしまうためです。
太っている投手とスリムな投手とでは腕を振る際、当然太っている投手の方が、胴体が太い分ボールが体から遠いところを通るようになります。すると慣性モーメント(遠心力)が大きくなり、必要以上に肩周りのインナーマッスルが引っ張られてしまい、肩痛を引き起こしてしまうのです。インナーマッスルはアウターマッスルとは違い、簡単に痛めやすい筋肉です。
ここまでは、単純に太っている選手とスリムな選手ということでお話をしましたが、筋骨隆々で体が大きい選手とスリムな選手と置き換えると、また話は変わってきます。今回のコラムはあくまでもお腹が出ているタイプの太っている選手、ということでお話を進めています。
太っている選手の場合、(脂肪が多い分)体重に対して筋肉量が少ないと言うことができます。すると体重を支えることが大きな負荷となり、膝を痛めてしまう危険性も高くなります。捕手の場合は座ったり立ったりという動作が多くなるため、より膝は痛めやすくなります。上述した肩痛と膝痛、太っている選手はこれだけ大きなリスクを抱えてプレーをすることになります。これでは当然ベストパフォーマンスを発揮することはできません。
本気で野球をされている方は、男性の場合はやはり体脂肪率は20%未満が望ましいと思います。女子選手の場合は20%を切ってはいけませんが、男性の場合は体重は減らさずに、体脂肪率を10%台に持っていく必要があります。もっとシンプルに言うならば、体脂肪はそのままであっても、筋肉量を増やせばいいわけです。そうすれば相対的に体脂肪率は低下していきます。
一般的なダイエットにも同じことが言えるわけですが、筋肉量を増やすと代謝力がアップします。代謝が上がればエネルギー消費量も大きくなり、体脂肪も燃焼しやすくなります。逆に食事を減らすことによって体重を減らそうとすると筋肉量が減ってしまい、同時に代謝力も低下してしまいます。すると運動をしても脂肪が燃えにくい体質になってしまうので注意が必要です。
ちなみにお風呂やサウナにはダイエット効果を望むことはできません。その理由は、人間の体には体温調節機能が付いているためです。体温が上がれば体は体温を下げようとし、体温が下がれば体は体温を上げようとします。つまり燃焼しやすい体質にするためには、お風呂にゆっくり浸かることよりも水風呂や水シャワーの方が効果があるわけなのです(ただし冷えた体で運動をすることは避けてください)。
水風呂、水シャワー、もしくはプールは体脂肪を燃焼しやすくするためには、非常に効果のある方法です。体脂肪率が20%を超えている男性選手は怪我を防ぐという意味でも、パフォーマンスをアップさせるという意味でも、ぜひ風邪をひかない程度に試してみてはいかがでしょうか。