一昔前は、投手は制球を安定させるためにとにかく走り込むということが、何よりも重要だと言われていました。確かに走り込みをすれば、制球力を安定させられる可能性は非常に高いです。しかしただ走れば良いというものではありません。例えば10kmを走るにしても途中でバテテしまい、あごは上がって腕の振りのリズムも悪く、足の裏も外側を使って走ってしまっては、このトレーニングの意味はほとんどなくなってしまいます。
なぜ走り込むと制球力がアップするかということを深く考えていくと、まず足の裏を上手く使えるようになるという点が考えられます。つまり足の裏でしっかりと地面を噛みしめ、そこが揺らがなければ上半身も安定させやすくなるということです。ですのでただ走るのではなく、足の裏で一歩一歩地面を噛みしめるようなイメージで走ることが重要なのです。
走る際の着地に関してですが、踵の中心線から地面に対し真っ直ぐ接地させ、そのまま足の裏の中心線を通過し、最後は拇指球(親指の付け根付近)から抜いていきます。この足の裏の使い方により、地面をしっかり噛む(掴む)という感覚を走ることによって養うことができるのです。ちなみにこれは、床に広げたタオルを足の指を使って手繰り寄せるトレーニングでも養うことができます。
人間の指は手も足も5本ずつです。手の指を5本すべて使うことは誰もが意識せずにできることですが、足の裏まではなかなか意識が回りません。今足の指をグーチョキパーのパーのように開いたら、5本の指すべてを広く開くことはできますか?中には足の指を広げようとするだけで攣(つ)ってしまう方もいるのではないでしょうか。
パチンコというおもちゃをご存知でしょうか?Y字型をした棒の先にゴムを括り付け、石やボールを飛ばすものです。昔は駄菓子屋さんでも買うことができました。これは、Yの下を握って支える側の手が安定することで、しっかりとした狙いを定めて的を射抜くことができます。パチンコを握る手がグラグラしていれば、当然狙いは安定しませんよね?投球にもこれと同じことを言うことができます。両足で地面をしっかり噛みしめることができなければ上半身を安定させることはできず、制球も乱れてしまうのです。
シャドウピッチングはフォームを安定させることには効果的で、これは制球力の向上にも繋がります。しかしフォームを安定させたとしても、それを支えるための下半身が弱ければ、実際にボールを投げた時に制球を安定させることはできません。
ですので制球力をアップさせるために走り込みを行うのであれば、ロードワークでもスプリントでも問わず、足の裏を使って走るように心がけましょう。脚ではなく、足の裏で走るのです。