金属バットを廃止すれば、高卒1年目投手でもプロで勝てる

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近年、高校生投手がプロ入り後、すぐに1軍で活躍するというケースがほとんど見られなくなりました。高卒1年目から活躍したのは、99年の松坂大輔投手が最後ではないでしょうか。その昔は高校生ルーキーが1年目からプロ野球を席巻することが多々ありました。しかし現代ではそのような姿はほとんど見られません。活躍する時期がどんなに早かったとしても、2~3年目が普通ではないでしょうか?こうなってしまった理由は明確です。それは金属バットの存在です。金属バットの存在が、高校生投手の「投球技術」を低下させてしまっているのです。

金属バットが相手の場合、内角をしっかり突いて詰まらせたとしても、内野手の頭を越えてヒットになってしまうことがあります。いわゆる勝負で勝って、結果で負けたという状況。正直言ってこれでは、投手はやり切れません。こうなってくるとどうしても投手は外角一辺倒のピッチングをするようになってしまいます。つまりバットが届かないところに投げれば良い、という考え方ですね。確かに高校野球レベルではあればこれも通用します。しかし大学、社会人、プロレベルとなると、外角一辺倒ではまず成績を残すことは出来ません。

木製バットであれば、内角を突いていけばバットを折ることができます。プロ野球の投手の中には、打者のバットを折ることに快感を得ている投手も多いほどです。しかし金属バットではそれができません。先述したように詰まらせてもヒットになってしまう。そのために外角中心の配球となってしまい、その上のレベルで必要となる内角攻めを学ぼうとしなくなります。これは投手だけではなく、捕手にも言えることかもしれませんね。

ただ、外角一辺倒だけならまだ良いのです。野村克也監督が仰っている通り、外角低めは投手にとっては原点です。どれだけ正確に外角低めに制球できるかで、その投手の良し悪しは大きく変わってきます。しかしここで、変化球ばかりに頼り出すと大変なことになってしまいます。「変化球に切れがある」と評価されてプロ入りする高校生投手のほとんどは大成しません。

その理由は、変化球を多投してしまうと、肩が鍛えられないためです。ボールを投げるための肩は、ストレートを投げることによって鍛えることができるのです。つまり変化球を多投してしまうということは、肩を鍛えずにボールを投げているということになり、大学やプロ入り直後に肩を壊す大きな原因となります。変化球を投げること=肩痛・肘痛、という図式は成り立ちません。しかし強い肩を作る前に変化球を多投してしまうと、それは確実に肩痛・肘痛に繋がります。

また、制球を気にするあまり、走者がいなくてもセットで投げる投手も同様です。セットポジションからでは全身を使ってボールを投げることができません。その分肩・肘にかかるストレスが大きくなり、肩痛・肘痛を引き起こしてしまいます。

近年は器用な投手も多く、たくさんの球種を投げられる高校生投手が増えて来ています。しかしこの傾向は決して良いものとは言えません。そもそも1つの変化球をしっかりと操れるようになるためには、プロ選手であっても数年かかります。プロ野球で251勝を挙げた東尾修投手であっても、1つの球種を物にするのに2~3年かかったと言います。

変化球とは、ただ曲がれば良いというものではありません。曲がり方、スピード、コースをしっかりと制御することができなければ、それは変化球をマスターしたことにはならないのです。高校生レベルであれば、たくさんの変化球を投げられればそれなりに勝つことは出来ますが、しかし大学、社会人、プロと進んでいくのであれば、高校時代はとにかくストレートを磨くことです。しっかりとストレートを投げ込むことにより強靭な肩を作ることが何よりも重要です。高校で変化球を覚えるのであれば肘を柔らかく、肩が力まないようにしなければ投げられないカーブ(ドロップ)を練習すべきです。近年流行のスライダーやカッターなどは、いつでも投げられるようになります。しかしカーブに関しては、体が出来上がる前にその投げ方を覚えておかないと、成人してからではなかなか習得することができなくなります。

高校時代はとにかくストレートを投げ込み、強靭な肩を作り、変化球は大学、社会人、プロに行ってから強化した肩によって本格的にマスターするように心がけましょう。ちなみにボールを投げるための強靭な肩は、筋トレだけで作り上げることは絶対にできません。たくさんのボールを投げることにより、初めて作り上げることができるのです。そしてたくさんのボールを投げられる基礎体力を向上させるために、投手はとにかくたくさん走らなければならないわけなのです。

球速問わずストレートに力のある投手であれば、必ずプロでも通用します。しかし変化球をたくさん投げられても、ストレートに力がなければ上のレベルでは決して通用しません。高卒でプロ入りし、1年目から1軍で活躍するためにも、高校ではとにかくストレートをしっかりと投げ込みましょう。ストレートとカーブ(ドロップ)だけでも、それぞれの完成度が高ければプロでも十分に通用するはずです。

ちなみに僕の個人的な意見として、高校生が使う木製バットはプロ野球が補助すればいいと考えています。高校野球はコストの問題により金属バットが使われています。これをプロ野球がしっかりと補助していくことができれば、アマチュア選手の底上げにもつながり、野球人気の再燃も期待できると僕は考えています。そのためにもNPBは、もっともっと魅力的な組織に進化していく必要があるのではないでしょうか。

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筆者:カズコーチ(プロフィール)
TeamKazオンライン野球塾 プロ野球選手のパーソナルコーチング、自主トレサポート、動作分析、試合内容分析、小中学生の個人レッスンなどを業務としているプロフェッショナルコーチです。
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