投球動作は人体メカニズムに則って作り上げよう

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野球におけるピッチング・モーションは、人体のメカニズムに合わせて作るのが最善の方法です。平成に活躍するプレイヤーと、昭和を色付けた名プレイヤーたちのモーションを比べると、明らかな違いが見て取れることが多いんです。それこそが人体メカニズム。全体的に両者を見比べていくと、昭和の名プレイヤーの方がメカニズムに則した動作でボールを投げていた投手が多いように思います。

野球理論が豊富に考案され、本やインターネットで情報も氾濫する現代は、「知識ありき」で投球動作を覚えることがほとんどです。実際に野球を始める前に、実際に投球動作を作る前に、たくさんの情報をすでに持っているケースが多いのです。一方昭和の選手たちは違います。現代のように理論が氾濫することもなく、「本能ありき」で投球動作を覚えた選手がほとんどです。プロ野球チームにすら投手コーチ、打撃コーチがいないのが普通でした。そのために昭和の選手の方が教えられていない分、自然に人体のメカニズムに則した動作で投げている投手が多いのかもしれません。

「腕を上げて大きく振って投げろ」。このようにアドバイスされた投手は多いのではないでしょうか?しかし人体のメカニズムを見ていくと、人間の骨格は腕を肩よりも上に上げるようには作られていないのです。もちろん腕を肩よりも上に上げることはできますが、しかし上げ易い肩関節の形状とはなっていません。これを踏まえると、腕(上腕)を肩よりも上に上げる投球動作は、人体のメカニズムには則していないということになります。

人体のメカニズムに則していない動作をするということは、人体のメカニズムを最大限活かせない、ということになります。これはつまり、本来できるはずのことができなくなる可能性がある、ということなのです。例えば本当だったら投げられていたかもしれない150kmという球速にたどり着けなかったり、本当だったら怪我をしないで済んだはずなのに肩痛に悩まされてしまったり。人体のメカニズムに則した投球動作ができていないと、このような弊害が起こる可能性が高くなるのです。

投球過多はまた別の話となるわけですが、投球過多ではないのに肩・肘に痛みが出てしまう投手は、大きく2つの原因が考えられます。その1つが人体メカニズムに反した動作をしているということで、もう1つが体力不足です。トレーニングが不足している投手が全力投球をすれば、肩は簡単に壊れてしまうものです。しかし適切なトレーニングを行なっている投手が肩痛になるということは、人体のメカニズムに反した動作を取っている可能性が高いということが考えられます。

一段階も二段階もレベルアップしていくためには、練習だけではなく多少の知識も必要になってきます。例えば肩関節と股関節の左右4つは回旋動作が可能な関節です。肩関節と股関節だけが回旋可能であることを理解していれば、自ずと投球動作にもそれぞれの回旋動作を組み込もうという流れになっていきます。投球動作に肩・股関節の回旋を入れるということは、それだけ人体のメカニズムに則した動作になるということなので、パフォーマンスの向上も期待できます。

さらに肘関節についても考えてみましょう。ボールリリースからフォローするにかけて、腕は内旋状態である必要があります。ですがカーブやスライダーを腕を外旋させ、捻るようにして投げてしまう投手が非常に多いんです。では腕を外旋させた状態でフォロースルーをするとどうなるでしょうか?答えは簡単です。腕が外旋されれば、フォロースルーの進行方向に対して肘頭(ちゅうとう)が前を向いてしまいます。肘頭が前を向いてしまうと、肘は一時的に180°の状態でフォロースルーに入るしかなくなり、肘関節に大きなストレスが与えられることになります。そしてこのストレスは肘痛へと発展してしまいます。

逆に腕を内旋させた状態でフォロースルーを迎えれば、フォロースルーの進行方向に対し肘を曲げていけるため、衝撃を和らげることができます。だからこそボールのリリースは球種に問わず、腕を内旋させた状態で迎える必要があるのです。

人体のメカニズムを勉強していくと、野球がさらに楽しくなると思います。パフォーマンスをさらに向上させるためにも、人体のメカニズムに則した投球動作を作るように心がけてください。人体のメカニズムに則した動作でボールを投げられればパフォーマンスが向上するだけではなく、故障のリスクも軽減させることができるはずです。

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筆者:カズコーチ(プロフィール)
TeamKazオンライン野球塾 プロ野球選手のパーソナルコーチング、自主トレサポート、動作分析、試合内容分析、小中学生の個人レッスンなどを業務としているプロフェッショナルコーチです。
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