「遠投やキャッチボールは山なりでは投げるな」。そう教わった選手は多いと思います。しかし僕は、目的があれが山なりで投げることにも大きな効果があると考えています。もちろん山なりでしか投げられないのは問題ですが、しかし強いキャッチボールの合間に山なりで投げることは、ある効果を生むんです。その効果とは、距離感です。
マウンドからホームプレートまでの距離は18.44mです。しかし自分の調子や球場によっては、この18.44mが遠く感じたり近く感じたりします。近く感じられればそれは良いことなのですが、逆に遠く感じられてしまうとこれは辛いことになってしまいます。遠く感じられる分強く投げようとしてしまい、腕や肩に余計な力みが生じ、その余計な力みがボールの切れを奪い、果てには故障へと繋がってしまいます。
強いまっすぐなボールを投げるキャッチボールと、山なりのボールを投げるキャッチボールの違いは二次元か三次元かということです。強いまっすぐなボールを投げる時は、投げる距離(奥行き)と左右という二次元での投球になります。しかし山なりのボールの場合、そこに高さという要素が加わることで三次元になるわけです。
外野手がフライを捕る際、最も取りにくいのは正面のフライです。それは左右の動きがなくなることで、高さと奥行きのみの二次元でボールを追わなければならないためです。この場合距離感が掴みにくくなるため、落下点に入るのにも苦労するというわけです。
キャッチボールの場合、二次元ではやはり距離感は掴みにくくなります。もちろん肩を鍛えるという意味では、まっすぐな強いボールを投げることが大切ですが、しかし試合前の感覚を養うという意味では、山なりのボールを投げることにより、三次元でしっかりと距離感覚を掴むという作業も大切になるというわけです。
山なりのボールを投げて、ボールが相手の前後に行ってしまう場合は、距離感にずれがあるということです。そういう場合は、相手が立つ位置にしっかりとボールを落とせるように、山なりのボールを調整していってください。
正確な距離感を持ってマウンドに登れば、マウンドが余分に遠く感じられることもなくなります。マウンドが遠く感じられなければ力むこともなくなりますので、ボールの切れが失われることもありません。
ということで、ぜひ一度試合前の山なりのキャッチボールを試してみてください。